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幸四郎&猿之助の図夢歌舞伎『弥次喜多』がすごいぞ!!【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯23】

「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月ご紹介するのは、現在、歌舞伎座で上演中の『壽 初春大歌舞伎』に出演中の松本幸四郎さんと市川猿之助さん。舞台での活躍はもちろんのこと、二人が出演している図夢歌舞伎第二弾『弥次喜多』がめっちゃおもしろいと歌舞伎ファンのみならず、映画ファンの話題に。コロナ禍の中、新しい企画に果敢にチャレンジする幸四郎さんと猿之助さんの思いを合同取材会で伺いました!!

図夢歌舞伎の市川猿之助と松本幸四郎の記者会見

↑合同取材会での松本幸四郎さん(右)と市川猿之助さん(左)。『弥次喜多』のパネルを持ってのツーショット。舞台でもかっこいいけど、リアルもめっちゃ色気があって素敵♪

■図夢歌舞伎『弥次喜多』はパラレルワールドを描いたSF作品

まんぼう部長 さむさむさむ~。新年早々、冷えるわねぇ。あら、小僧。なんだかガタガタ震えてるけど、大丈夫なの?
ばったり小僧 いや~、お正月にスゴいもんを観ちゃったんですよ。松本幸四郎さんと市川猿之助さんが出演している図夢歌舞伎第二弾『弥次喜多』を観たら、なんだかぞっとするお話で……うう、ぶるるっ。

弥次喜多の市川猿之助と松本幸四郎

↑舞台は江戸時代のコンビニ「よろず屋家族商店」。弥次さん(左)は非情な歌舞伎座経営再建担当部長として、喜多さん(右)をリストラ。二人の関係もどこかよそよそしい。

部長 私も観たけど、なんというか、切ないお話だったわ~。図夢歌舞伎第二弾は猿之助さんが監督した映像作品で、昨年の年末からAmazon Prime Videoで配信されているのよね。幸四郎さんと猿之助さんの『弥次喜多』といえば、歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」で4年連続で上演されている超ドタバタコメディの人気シリーズ。それが今回はなんとSF作品になっていてびっくり。

小僧 ですよねぇ。しかも江戸で謎の新型疫病が大流行していて、その片隅の「よろず屋家族商店」を舞台に物語が展開するという内容。劇作家の前川知大さんの戯曲『狭き門より入れ』をリメイクしたものですけど、もとの戯曲がパンデミックを描いた話で、今のコロナ禍の世界とめちゃくちゃリンクしてるんですよね。

初春大歌舞伎の記者会見での市川猿之助

↑図夢歌舞伎『弥次喜多』では、監督・脚本・演出を担当した猿之助さん。取材会でのしゃべりにも熱が入る。「歌舞伎の歴史を振り返れば、散切物があり、活歴物があり、そして令和に図夢歌舞伎が誕生しました」

部長 そうそう。じつは舞台の『狭き門より入れ』には、以前、猿之助さんが出演しているのよね。

小僧 先月行われた合同取材でも猿之助さん、言ってました。「セリフに『また感染者が出てるよ』『ロックダウンして物流が止まったね』なんていうのが出てきて、上演当時は絵空事でしたけれど、今まさにその状況が自分たちの身に迫っている」って。

初春大歌舞伎の記者会見での松本幸四郎

↑『弥次喜多』はAmazon Prime Videoで配信中。「僕はAmazonにずいぶん投資(買い物)してきました。スポンサーと言ってもいいくらい(笑)。Amazon Japanさんにそれを伝えてほしいです」と幸四郎さん。 

部長 なんかそれだけでぶるっとくるわね。しかも世界が更新するとか、命の価値を巡る問題とか、とても哲学的な内容で、欲望のままに好き勝手をやってきた人類への批判になっているというか……。

小僧 そして、その秘密が「よろず屋家族商店」に隠されているという。う~む、深い!! さすが知性と想像力あふれる猿之助さん。

壽 初春大歌舞伎での市川猿之助と松本幸四郎の記者会見

↑同世代で仲良しの二人。楽しそうなこの笑顔♪ 取材会も終始笑いに包まれていました

部長 映像のクオリティも半端なくて、一気に闇の世界に引き込まれるような引力があったわ。そして最後の弥次さんのあの表情!! ああ、もう想像しただけで・・・。

小僧 でも、幸四郎さんが言ってましたね。「撮影の合間に鏡で自分の顔を見て、びっくりしました。あのシリアスな演技をこの顔(八の字眉)でやってたのか!? って」と(笑)。難しい役どころだったと思いますけど、その八の字眉に「迷える小羊感」がめっちゃ出ていて、切なさMAX!! 思わず涙しました~っ。

図夢歌舞伎「弥次喜多」のキービジュアル

↑超インパクトのあるポスター!! 染五郎さんと團子さんもぶっとびのヤンキーテイスト。 脇を固める市川猿弥さん、市川笑三郎さんの演技も光ってたわ~。

■染五郎&團子は、金髪と赤髪のヤンキーになって登場!!

部長 それにしてもあのはちゃめちゃな『弥次喜多』の世界観と、シリアスな原作の世界観をうまくマッチングさせちゃうんだから、猿之助さんってすごいわ。

小僧 本当ですね。これまでの弥次喜多らしく、笑える小ネタもたくさん入っていて楽しめました。「よろず屋家族商店」を現代のコンビニに見立てていて、ドアを開けるたびに、聞き慣れたピンポンピンポンという音がしたり(笑)。

図夢歌舞伎「弥次喜多」で演出する市川猿之助

↑『弥次喜多』の撮影風景。出演しながら監督もつとめた猿之助さんは大忙し。半沢コンビでもあり、いとこ同士でもある中車さん(中央)とは息もぴったり。

部長 そうそう、イートインコーナーがあったりして細かいのよ。幸四郎さんの大好きな『堅あげポテト』も出てたし(笑)。

小僧 家族商店の常連役の市川中車さんも最高でした。中車さんと幸四郎さんの掛け合い、あそこだけコントみたいになっていて、あれは絶対、アドリブだなと思いました (笑)。

図夢歌舞伎の中車・團子親子について語る市川猿之助

↑「歌舞伎ですと中車さんが息子の團子に何かを教えるところは、まず見ません。でも、今回は映像だったので、立ち位置とか、目線とか、しっかり教えるんですね。微笑ましかったです」と猿之助さん。

部長 中車さんと猿之助さんの半沢ネタもあったわね。例の名セリフがきっちり入ってた♪ 個人的には市川寿猿さんの登場に大爆笑しちゃったけど。

小僧 あの役ですね(笑)。あと注目は、市川染五郎さんと市川團子さん!! 舞台の『弥次喜多』から続いて、梵太郎と政之助を演じていますけど、二人ともグレて不良になっていて。髪の毛も金髪と赤髪だし、着物にチェーンがついてて、指にはシルバーのアクセサリー。かなり気合が入ってますね。

部長 品行方正だった二人がヤンキー座りしててびっくり(笑)。

図夢歌舞伎「弥次喜多」につぃて語る松本幸四郎

↑十返舎一九の『東海道中膝栗毛』は、歌舞伎でもたびたび上演される人気作。「『東海道中膝栗毛』は旅をする話です。弥次さん喜多さんは何も考ていません。考えてないから興味本位でどこへでも行けてしまう。だから時代を超えて愛されるのだと思う」と幸四郎さん。

小僧 手にはマニキュアまでしてるんですけど、これは撮影のとき、スタジオのそばのイオンで幸四郎さんが買ってきたらしいです(笑)。でも、リムーバーを買い忘れちゃったもんだから、翌日、染五郎さんが学校に行く前にすごい焦ってたって幸四郎さんが言ってました。

それと私が好きだったのはエンドロール。俳優さんの名前が全部ローマ字になっていて、「KOSHIRO MATUSMOTO Ⅹ」とか、「ENNOSUKE ICHIKAWA Ⅳ」とか、何代目というのがローマ数字になっているんです。それが全員王様みたいでめっちゃかっこいいと思いました。猿之助さんが「世界で通じる作品」と言っていたけれど、ぜひ世界に配信してほしい!!

部長 値段も1900円で歌舞伎としてはリーズナブルなお値段。コロナ自粛中で退屈してるみなさんにぜひ観てほしい!!

図夢歌舞伎「弥次喜多」の記者会見の市川猿之助と松本幸四郎

↑ ボケをかましたかと思えば、真面目な芝居談義になったり。硬軟どっちもイケる二人。昨年暮れの『紀尾井町家話』のトークもおもしろかった~。これからも二人で見たことのないものをどんどん作ってください!!

■幸四郎&猿之助は、1月歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」に出演中!!

部長 それにしても幸四郎さんと猿之助さん、コロナ禍で本当に八面六臂の活躍よね。去年、8月に歌舞伎座が再開してから、二人とも結構な頻度で舞台に出てるのに、その間を縫って、『弥次喜多』を作ったなんてすごすぎる。

小僧 実質4日間で撮影したというのもびっくり。幸四郎さんは国立劇場の出番を終えてから撮影してたらしいです。さらに猿之助さんは、監督、脚本、演出からカット割りまで考えたりして、かなりたいへんだったとのこと。

部長 歌舞伎座、行って来ました。エッヘン! 第一部の舞踊劇『悪太郎』、楽しかった~!! 猿之助さんが演じる酒乱の悪太郎が超キュートなの。もはや元の顔がわからないようなメイクも愉快だし、斬新な色合わせの衣裳も素敵。猿之助ワールド全開だったわ。

歌舞伎座での「壽 初春大歌舞伎」を宣伝する市川猿之助と松本幸四郎

↑1月は歌舞伎座に出演中。幸四郎さんは三部の『車引』で梅王丸を、猿之助さんは一部の『悪太郎』で悪太郎を勤める。新作から古典まで、幅広い役柄に挑むバイタリティあふれる二人。歌舞伎俳優は、常人とは違うエンジンを積んでる気がする……。

小僧 合同取材では、「こんな世の中なので、今、みんな笑いたいじゃないですか。それで珍しいものをお目にかけようと思った」って、猿之助さんも言っていたので、さぞ楽しい演目なんでしょうね。

部長 そうね。そして酔っ払ってる体での踊りが超絶うまいっ。最後の幕切れのところとか、片足でずっとけんけんしてて、 ものすごい体幹だと思ったわ。一緒に出演している中村鷹之資(たかのすけ)さんも若いんだけどめっちゃ踊りがうまいので、ぜひ注目してほしい。

壽 初春大歌舞伎の「悪太郎」を演じる市川猿之助

↑2021年1月歌舞伎座第一部『悪太郎』で、悪太郎を勤める猿之助さん。『猿翁十種』のひとつに数えられる澤瀉屋にとって大切な演目。つけひげがめっちゃキュートです♪

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」での「悪太郎」の舞台写真

↑2021年1月歌舞伎座第一部『悪太郎』。左より、修行者智蓮坊=中村福之助、伯父安木松之丞=市川猿弥、悪太郎=市川猿之助、太郎冠者=中村鷹之資。楽しくてにぎやかな演目。こんなときだから、新年を笑って過ごそう!!

小僧 幸四郎さんは、お父さんの松本白鸚さんと、息子の染五郎さんと3人で第三部の『車引』に出演しているんですよね。こちらもお正月らしくて、きっと華やかでしょうね。

部長 もうね、このご時世だから、親子孫三代が元気に一緒に舞台に立ってるってだけでおめでたい!! って感じ。 白鸚さんは、ますますパワフルになって声にも張りがあるし、幸四郎さんの荒ぶる感じは、これぞ荒事って感じだし、染五郎さんは若者らしくフレッシュで、所作が美しいし。見応え満点。 

「壽 初春大歌舞伎」の「車引」で梅王丸を演じる松本幸四郎

↑2021年1月歌舞伎座第三部『車引』で、梅王丸を勤める幸四郎さん。足にまで赤い隈取がしてあって、いきってる感満載。勢いもあって超シビれる!! それにしてもこうして見ると、まるで人形のよう。歌舞伎ってすごいわ~。

「壽 初春大歌舞伎」の「車引」での高麗屋親子3代の舞台写真

↑2021年1月歌舞伎座第三部『車引』。左から桜丸=市川染五郎、松王丸=松本白鸚、梅王丸=松本幸四郎。高麗屋の親子孫三代そろっての出演には歌舞伎ファンも感無量。三つ子を親子孫で演じられるのも歌舞伎ならでは。

小僧 梅王丸を演じる幸四郎さんも、「歌舞伎をやっている感が一番ある役。歌舞伎って、こうだよねと感じていただける、ど真ん中の役」と言っていたように、『車引』は型といい、衣裳といい、歌舞伎の様式美がぎゅっと凝縮されている演目で、私も大好き。リモートワークになって、ちょっと時間に余裕ができたから、早速行ってきます!!  今月は一部から三部の連チャンだーっっ!!

◆図夢歌舞伎『弥次喜多』

配信開始日:2020年12月26日(土)
配信場所:Amazon Prime Video

 http://www.amazon.co.jp/kabuki
視聴料:1900円(税込)
監督・脚本・演出:市川猿之助
原作:前川知大「狭き門より入れ」
構成:杉原邦生
脚本:戸部和久
監督:藤森圭太郎
製作:松竹株式会社
出演:松本幸四郎、市川猿之助、市川中車、市川染五郎、市川團子/市川猿弥、市川笑三郎、市川寿猿、市川弘太郎(声の出演)

◆壽 初春大歌舞伎

日程:2021年1月2日(土)~27日(水) 
※休演日 12日(火)、19日(火)

場所:歌舞伎座

<第一部>
一、『壽浅草柱建』(ことほぎてはながたつどうはしらだて)
曽我五郎時致:尾上松也
曽我十郎祐成:中村隼人
小林朝比奈:坂東巳之助

大磯の虎:中村米吉
化粧坂少将:中村莟玉
喜瀬川亀鶴:中村鶴松
茶道珍斎:中村種之助
小林妹舞鶴:坂東新悟
工藤左衛門祐経:中村歌昇



岡村柿紅 作
二、猿翁十種の内  『悪太郎』(あくたろう)

悪太郎:市川猿之助

修行者智蓮坊:中村福之助
太郎冠者:中村鷹之資
伯父安木松之丞:市川猿弥

<第ニ部>
坂田藤十郎を偲んで
今井豊茂 脚本

一、『夕霧名残の正月』』(ゆうぎりなごりのしょうがつ)
由縁の月

藤屋伊左衛門:中村鴈治郎
扇屋夕霧:中村扇雀
太鼓持鶴七:中村亀鶴
同 亀吾:中村虎之介
同 竹三:中村玉太郎
同 梅八:中村歌之助
扇屋番頭藤兵衛:中村寿治郎
扇屋女房おふさ:上村吉弥
扇屋三郎兵衛:中村又五郎

二、『仮名手本忠臣蔵』(かなでほんちゅうしんぐら)

祇園一力茶屋の場

大星由良之助:中村吉右衛門

遊女おかる:中村雀右衛門
鷺坂伴内:中村吉之丞
斧九太夫:嵐橘三郎
寺岡平右衛門:中村梅玉

<第三部>

一、『菅原伝授手習鑑』(すがわらでんじゅてならいかがみ)
車引

松王丸:松本白鸚
梅王丸:松本幸四郎
桜丸:市川染五郎
杉王丸:大谷廣太郎
金棒引藤内:松本錦吾
藤原時平:坂東彌十郎

岡 鬼太郎 作
眠駱駝物語
二、『らくだ』
手斧目半次:中村芝翫

紙屑買久六:片岡愛之助
駱駝の馬太郎:中村松江
半次妹おやす:市川男寅
糊売婆おぎん:中村梅花
家主女房おいく:坂東彌十郎
家主佐兵衛:市川左團次

◆公演詳細

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/698/

◆公演チケット情報
https://www.kabuki-bito.jp/ticket.html

写真/富田恵
取材・構成/バイラ歌舞伎部  
まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。 
ばったり小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、本当はオーバー40歳の熟年役者好き。

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