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長編『みがわり』をレビュー!予測不能のラストに向かって疾走する傑作【30代におすすめの本】

書評家・ライターの江南亜美子が、アラサー女子におすすめの最新本をピックアップ! 今回は、小説を読むことの恍惚と不安を味わせてくれる青山七恵『みがわり』をご紹介します。

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江南亜美子

江南亜美子


文学の力を信じている書評家・ライター。新人発掘にも積極的。共著に『世界の8大文学賞』。

『みがわり』

自分とうり二つの人間はこの世に3人いるという。いわゆるドッペルゲンガーがテーマの物語は少なくないが、本作は一風変わっている。

無名の作家、律は、自分に会いに来ていきなり泣いた九鬼梗子から、亡き姉にそっくりだと告白される。物語作りが得意だった姉に代わって彼女の伝記を書いてとの無茶な依頼を引き受けたのも好奇心からだった。

梗子の娘の沙羅、ディカプリオ並みに二枚目な夫の青磁とも深く知り合い、過去を掘り下げるうち、梗子とその姉の百合との確執があらわになる。書いては見せ、読まれては書き直す、百合の生前の物語。律は虚構と真実の渦に巻き込まれるのだ。「百合とはいったい何者なのだろう」

物語は終盤、律が「軟禁」状態で執筆を強制され、ムードが変わる。作家に書かれることで初めて出現する物語の力が、律の世界をのみ込んでいくのだ。ページをめくるたび、位相の変わるストーリーのダイナミズムにより、読者は一気呵成にラストまで読むことになる。目覚めながら見る夢の記録のような、非現実と現実の交錯。自分という存在は、誰が主人公の物語のなかに生きているのかと、ふと心もとなくなってくる。不思議な読後感が味わえる作品だ。

『みがわり』

青山七恵著

幻冬舎 1700円


「本当のお話って何?」虚構の迷宮に誘われて

駆け出し作家に届いた依頼は、自分とそっくりだった女性の「伝記」を書くこと。取材が進み、家庭事情が暴かれていく。書く/書かれるの関係をめぐる不思議な長編小説。サスペンスから驚きの結末へ。


これも気になる!

『るん(笑)』

『るん(笑)』
酉島伝法著
集英社 1800円
 
平熱は今日から38度。オカルトを風刺する小説
疑似科学とスピリチュアル療法が、科学を凌駕した世界。「わだかまり」は千羽鶴で、発熱は祈りで治癒できるとされるディストピアを、どう生き延びるか。不安感に襲われる、気鋭のSF作家の中編集。

イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2021年2月号掲載

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