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#5月歌舞伎座 『三人吉三 』出演!! #尾上右近 インタビュー【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯28】

落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月ご紹介するのは、5月に歌舞伎座で行われる「五月大歌舞伎」の『三人吉三巴白浪』(さんにんきちさともえのしらなみ)に出演する尾上右近(おのえうこん)さん。坂東巳之助(ばんどうみのすけ)さん、中村隼人(なかむらはやと)さんら、若い世代の3人で歌舞伎の大役を勤めます。演目の見どころや舞台にかける熱い思いをバイラ歌舞伎部が聞いてきました!!

歌舞伎座前で尾上右近さん

↑若手歌舞伎俳優の中でも現在、人気急上昇中の尾上右近さん。カジュアルなスタイルもおしゃれだけど、スーツ姿もかっこいい~♪  ちなみに曾祖父は六代目尾上菊五郎、母方の祖父には俳優の鶴田浩二。

■「こいつは春から縁起がいいわえ」は、『三人吉三』のセリフです

まんぼう部長 5月歌舞伎座での『三人吉三』ご出演、おめでとうございます!! 歌舞伎座で大役を勤めるのは初めてなんですよね。

右近 そうなんです。一年前には、想像もしてなかったことなので、「やっとここまで来られたか」という喜びでいっぱいです。

ばったり小僧 今日は舞台のこと、いろいろお伺いしたいのですが、このコーナーは、カジュアルに歌舞伎を紹介する連載でして……。

右近 いいですね、とことんカジュアルにいきましょう!! まず、5月に僕が出演する『三人吉三巴白浪』のお話を簡単に説明すると、お嬢吉三、お坊吉三、和尚吉三という同じ「吉三」という名前をもった3人の盗っ人の話です。彼らが偶然に出会って、義兄弟の契りを交わすのですが、因果がめぐって追い込まれ、それぞれ数奇な運命をたどる……というどろっとしたお話です。今回、上演するのは、そのうちの一幕で、3人が出会う「大川端庚申塚の場」というシーンをやります。

小僧 長いお話の一場面だけをやるんですね。

右近 そう、歌舞伎あるあるですね(笑)。ただ、たとえ一場面でも「歌舞伎」っていう字のごとく、唄とか、舞とか、色彩とか、セリフのリズムとか、そういう技で、歌舞伎の要素を十分楽しんでもらえるのが、この「大川端の場」で、短時間でもエンターテイメントとして成立している一幕です。出会いの場面は節分という設定で、すごく縁起がいいし、「何が始まるんだろう」っていうわくわく感を楽しんでいただけると思います。

歌舞伎座前でお嬢吉三を勤める尾上右近さん

↑歌舞伎俳優としてだけでなく、歌舞伎の伴奏音楽「清元」宗家の次男として生まれ、現在は、清元栄寿太夫の名で、歌舞伎の舞台で唄うことも!!  最近はミュージカルに出演するなど、幅広く活躍中です。

小僧 右近さんが今回演じるのはお嬢吉三。「お嬢」っていうことは女方ですか。

右近 いや、それが違うんです。男だけれど、女性に化けて悪さをするから、「お嬢」なんですね。同じように『弁天小僧』も女に化けて、ゆすり、たかりをする盗賊の話ですけど、弁天小僧より、お嬢吉三はもっと中性的で、のちのちはお坊吉三とカップルになるようなキャラクターです。

小僧 えーっっ、まさかのBL!? さすが歌舞伎、昔から時代を先取りしてますね。

右近 男なのか女なのかわからないところが、お嬢吉三のエロティックな魅力につながっています。エロと悪という2つが凝縮したお役だと思うし、女方も演ってきた経験を活かせるお役でもあるので楽しみですね。

部長 お嬢吉三になった右近さん、きっと美しいでしょうねぇ。

右近 美しい悪とか、美しい黒さって、どこかで心ひかれてしまうところがあると思うので、その不思議をみなさんに感じていただけるように演じられたらと思います。それとこのお芝居には、有名なセリフが出てくるんですよね。「こいつは春から縁起がいいわえ」って聞いたことありませんか?

小僧 ありますあります!!

お嬢吉三について熱く語る尾上右近さん

↑舞台セットや衣裳など、色彩を見ているだけでも楽しい歌舞伎。「お嬢吉三が黒、お坊吉三が紫、和尚吉三が入れ墨と、3人の配色も美しいです」。わかりやすく、楽しく解説してくれました。感謝!!

右近 みなさん耳覚えがあるセリフだと思うんですけれど、そのセリフを言うのが、お嬢吉三です。歌舞伎では、掛け言葉などの入った長セリフを「つらね」と言うんですけれど、この演目では「月も朧(おぼろ)に白魚の……」で始まる七五調のリズミカルなつらねが見どころのひとつで、その最後が、「こいつは春から縁起がいいわえ」なんですね。

小僧 えーっ、歌舞伎のセリフだったんですね!? 知らなかったです。

右近 歌舞伎のセリフが今でも生活の中に残っているということは、昔の人たちにとって、それだけ歌舞伎が身近なものだったということだと思うし、この演目がすごく人気だったということだと思うので、そんなことも感じてもらえたらと思います。

部長 今回、お嬢吉三はどなたに教えていただいたんですか。

右近 (尾上)菊五郎のおじ様にご指導いただきました。これまで一番舞台を見たのは、菊五郎のおじ様のお嬢吉三ですし、以前、(尾上)菊之助のお兄さんがお嬢吉三を演ったときは、「おとせ」というお役で出させていただいた経験もあって、一番馴染みがあるのが音羽屋のお嬢吉三なんですよね。

おじ様に「お稽古お願いいたします」とお願いしたところ、当たり前のように「わかった」って言ってくださったのがうれしかったですね。「やるんでしょ、おまえ。その立場なんでしょ」っていう感じで、歌舞伎座の出し物の主となる役どころを僕がやることを、ごく自然に受け入れてくださってる感じが、とってもうれしかった。

今年3月の京都南座(『四の切』)でも菊五郎のおじ様に教えていただいて大役を勤めましたけど、今回も歌舞伎座という大舞台での大役を菊五郎のおじ様に教えていただけるっていうのは、音羽屋の人間として、宝物がまた1つ増えたという感じがしているので、これを自分の中で大事にして、熟成させていきたいと思っています。

五月大歌舞伎 三人吉三に出演予定の尾上右近さん

↑『三人吉三』は歌舞伎では珍しく3人が主演であり、それぞれの個性が際立ってるっていうところも見どころのひとつ。「3人が義兄弟の契りを交わすシーンでは、手首切って、お互いに血杯を交わす場面もやります。そこがまたかっこいいんですよね」。

■歌舞伎座での大役の第一歩をお客さまに見守ってほしい

部長 今回の舞台は、右近さんのほか、お坊吉三は中村隼人さん、和尚吉三は、坂東巳之助さんと、同世代の若い3人の共演ということでも話題ですね。

右近 若手の同世代で歌舞伎座の一幕を開けるというのは、また格別な思いがあります。歌舞伎というのは鍛錬の世界なので、歳を重ねた俳優さんの熟練した芸を楽しむことも大きな魅力の1つですけれど、『三人吉三』は若くて向こう見ずな若者の話なので、今回若手でやらせていただくことが、そのリアリティにつながるんじゃないかと思いますし、若い僕たちだからこそ表現できることもあると信じて舞台に立ちたいと思います。

部長 巳之助さん、隼人さんは右近さんからみて、どんな俳優さんですか。

右近 巳之助さんは3歳上ですけれど、冷静で客観的な視点をつねに持っている人ですね。僕はニュアンスで何となく、「楽しそうならいいじゃないか」ってなっちゃうんですけど、「いや、それだけじゃダメだろう」「なぜ楽しいと思えるか考えないと」って追及するタイプで、1つ1つ丁寧に準備して、お芝居を組み立てていく俳優さんです。だから、ある意味、緊張する。巳之助さんに突っ込まれないようにしないとっていう緊張感はありますね。

隼人さんは、同じ高校の1つ下の後輩で、巳之助さん同様、お芝居に対する情熱が強くて、あと自分を信じる力がすごく強いです。もちろん心の中では、葛藤してるけど、自分を信じぬくっていうのかな。だから大舞台にも強い。そしてイケメンといわれるような爽やかさと、まっすぐさと、きらびやかさがあります。だから3人並んだときは、3色、全然違うんじゃないかなと思います。

また、嬉しいのは、おとせというお役も、自分には思い入れのある役で、それが中村莟玉さんという、僕もすごく大事に思っている後輩が演じるっていうこと。莟玉さんはおっとりしているけれど、決して夢を諦めない強さがあります。自分が初めての大役を勤めるときに、彼に共演してもらえるのはすごく嬉しいですね。

歌舞伎座前でポーズをとる尾上右近さん

↑巳之助さん、隼人さんとは、子どもの頃からよく知っている間柄。「舞台が決まって、早速3人のグループLINEを作りました(笑)。誰に教わるかなど、細かい連絡事項などをやり取りしています」。息のあった舞台が楽しみです!!

部長 では、自分の俳優としてのポイントはどんなところだと思いますか?

右近 トータルバランスかな。立役も女方もやるし、こだわんなきゃいけないとこはこだわるし、でも無防備に楽しむとこは楽しむし。理屈じゃない部分と、理屈の部分と、どっちの気持ちもわかるっていうか。偏らないようにバランスをとるっていうことについては、すごく気をつけているところです。

部長 それにしても最近の活躍ぶりはすごいですよね。大河ドラマ『青天を衝け』では孝明天皇役で出演中だし、夏には古田新太さんとW主演ミュージカル『衛生』もあるし。

右近 僕は目の前のことを一生懸命やってるだけなんですよね。だからそれに対する反応とか、新たに用意されるステージが、毎回びっくりするくらい大きくなっていっていることに自分でも驚いちゃいますね。

小僧 知名度もぐっと上がってきて、前みたいに、大好きなカレー屋さんにも気軽に入れなくなったりして……。

右近 それはね、まったく気にしてないです。世間の認知度が上がるのは、本当にありがたいことですけれど、昔から知ってる人に、「変わっちゃったな」と思われたくないっていう気持ちがすごく強くて。環境が変わると、自然と人は変わっていく部分もあると思うけど、そこは変わりたくない。これまで通りのスタイルで、コツコツと頑張りつつ、頑張り以上のいいことが起きることは期待していきたいです(笑)。「棚からぼたもち」も実力のうちですから。

三人吉三について熱く語りながらも爆笑する尾上右近さん

↑今回の公演でやるのは、長いお話の一幕だけ。「この先どうなるんだろうっていうところで終わる、トゥビーコンティニュースタイルなので、これをきっかけに通しで観たいなと思ってもらえるようにしたいですね」。爆笑の表情も超キユート♡

部長 そういえば4月にやったプロ野球・阪神タイガース戦での始球式、最高でした!! 紋付き袴姿&白塗りで、正座しての口上も盛り上がりましたけれど、投球したあとのマウンドでの見得がめちゃくちゃおもしろかったです。斬新というか、ミスマッチ感がたまらなかったです。

右近 みなさんに喜んでいただけて良かったです。

部長 始球式のあと、ピッチャーズプレートの土を払って、きれいにしていたじゃないですか。あれが素晴らしいと、野球ファンの間でも好感度爆上がりしてました。

右近 あれはね、うちの兄貴の奥さんの弟のアドバイスのおかげなんです。僕と同い歳で、ずっと野球をやっていたので、始球式の話をしたら、「パフォーマンスも大事だけれど、マウンドへの礼儀を大事にしたほうがいい」と言われたんですね。それで「ピッチャーは、白いプレートが汚れていると嫌がる」という話も聞いて、確かにそうだよなと。僕たちも誰かが舞台を汚していったら嫌ですからね。それでプレートをきれいにしていったら、それが話題になったみたいで。

小僧 義弟さん、ナイスアドバイス。阪神タイガースも絶好調だし、まさに「こいつは春から縁起がいいわえ」ですよ。

では、最後にバイラ読者にメッセージを!!

右近 歌舞伎には「新春浅草歌舞伎」という若手の登竜門となっている公演があります。毎年1月は菊五郎のおじ様のもと国立劇場に出演していますので、「浅草歌舞伎」に出演する二人と合流できたという感慨もあって、「お待たせ!」っていうような感じがあります。そして「お待たせ!」といって再会した場所が歌舞伎座っていうところがね、またぐっとくるところでもあります。その喜び、感動、興奮っていうのは、絶対にお客様に伝わるものだと思っています。歌舞伎座での大役の第一歩、ぜひ皆さまに見守っていただければと思います!!

 #5月歌舞伎座 『三人吉三 』出演!! #尾上右近 インタビュー【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯28】_7

◆五月大歌舞伎

日程:2021年5月12日(水)~28日(金)

【休演】19日(水)

*緊急事態宣言に伴って、日程が変更になる場合がありますので、 詳細は、歌舞伎座ホームページでご確認ください。

 

場所:歌舞伎座



■第1部

一、三人吉三巴白浪 (さんにんきちさともえのしらなみ)

大川端庚申塚の場

作:河竹黙阿弥


お嬢吉三:尾上右近

お坊吉三:中村隼人

和尚吉三:坂東巳之助



ニ、新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)

作:河竹黙阿弥


叡山の僧智籌実は土蜘の精:尾上松緑

平井保昌:坂東亀蔵

源頼光:市川猿之助


■第2部

仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)


<浄瑠璃 道行旅路の花聟>

早野勘平:中村錦之助

鷺坂伴内:中村萬太郎

腰元おかる:中村梅枝



<六段目 与市兵衛内勘平腹切の場>

早野勘平:尾上菊五郎

女房おかる:中村時蔵

千崎弥五郎:中村又五郎

母おかや:中村東蔵

一文字屋お才:中村魁春

不破数右衛門:市川左團次


■第3部

一、八陣守護城 湖水御座船(はちじんしゅごのほんじょう)

作:中村漁岸

補綴:松貫四


佐藤正清:中村歌六

雛衣:中村雀右衛門


ニ、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)

作:福地桜痴 小姓弥生後に獅子の精:尾上菊之助

胡蝶の精:坂東亀三郎

胡蝶の精:尾上丑之助

◆公演詳細

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/714/


◆公演チケット情報

https://www.kabuki-bito.jp/ticket.html

写真/伊藤奈穂実 

取材・構成/バイラ歌舞伎部  

まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。 

ばったり小僧……歌舞伎歴2年。やる気はあるが知識は乏しい新入部員。若いイケメン俳優だけでなく、オーバー40歳の熟年俳優も大好き。

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