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【市川紗椰の週末アートのトビラ】東京都写真美術館で開催中の「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」へ

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第3回は東京都写真美術館で開催中の「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」に訪れました。市川さんとともに、1930〜40年代の日本の前衛写真運動をたどります。

今月の展覧会は…アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真

写真が今よりずっと“不思議”で“謎”だった時代の熱に触れる!

市川紗椰

恵寿駅のすぐ近くには、世界でも珍しい写真と映像専門の「東京都写真美術館」が。ここで開催中の、1930〜40年代の日本の前衛写真運動をたどる展覧会に行ってきました。

「前衛=アヴァンガルド」という言葉は、絵画や詩については耳にしていたけれど、戦前日本の写真界なんて未知の分野。どんな人たちが関わっているんだろう?どうして写真なのだろう?と、のぞいてみると、斬新で自由で、楽しそう!

デジカメもフォトショップもない時代、高価で貴重な機材を駆使して生み出された不思議な光景たち。日常の風景の見方を変えると別の世界が立ち上がってきたり。実際にあるはずのないものが画面に存在するだけで(逆に、あるはずのものが存在しないだけで)生まれる違和感は、絵画にはない写真ならではのものです。

そしてなにより、新しい情報や技術に飢えていた人々の熱意が込められているのがいいなあ、とニヤニヤ。海外から作品集が届くのを心待ちにして、撮影法をどうやったら真似できるか頭を悩ませる“オタク”たちの姿が目に浮かびます。

展示の流れも面白く、マン・レイなどヨーロッパの前衛写真を手始めに、そこに影響を受けた関西のアマチュア写真家グループの作品へと、ムーブメントがたどれるつくり。大阪、名古屋、福岡と進んでいくと、やがて1940年代の東京に。すると、戦争の足音が大きく響いてくるのです。彼らの自由な活動が行われたのは、第二次世界大戦前夜、たった数年間のこと。その事実が、最後に胸に迫ります。

誰もが毎日のように自分の日常の写真を撮って、気軽に世界に発信できる現代。今やいちばん触れやすい表現になった「写真」についてあらためて考える、新鮮な視点をもらいました。

東京都写真美術館の市川紗椰

大阪、福岡など、前衛写真家たちが活動していた地域ごとに展示。冒頭では彼らに影響を与えた海外の写真作品を見ることができ、ムーブメントの盛衰を追体験できます

市川紗椰「芸術家たちの“わちゃわちゃ感”が伝わります」

“戦前の不穏な時代、新しい情報に飢えて見たことのない表現を目指した芸術家たちの“わちゃわちゃ感”が伝わります”

トビラの奥で聞いてみた

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…東京都写真美術館学芸員 藤村里美さん。

市川 「前衛写真」が関西で盛んだったのはなぜですか?

藤村 芸術から政治まで“主流”が集まる東京より、新しくてトガった文化を受け入れやすかったということがあります。もうひとつはカメラなど機材が高価だったこと。富裕層によるアマチュアが中心となって広がった面もあるんです。

市川 なるほど!「前衛芸術」って、社会への反逆や怒りの表明、というイメージがあったけれど、彼らの写真からは、もっと表現を楽しんでいる雰囲気が伝わってきますね。

藤村 そうなんです。よくも悪くも思想を前面に押し出さず、自由な表現を堪能していて、どこか軽やかでしょう。

市川 戦争中は、その自由さも抑圧されてしまったのですね。

藤村 はい。戦後に「前衛」は復活しますが、ぱっと花開いた当時の情熱は戻らなかったかもしれません。戦争で多くのネガやプリントも失われ、収集や検証には苦労しました

市川 形として残ったものは本当に貴重ですね! 今、自分がスマホで撮影しているのも形のないデータと考えると、写真って、はかない芸術なのかも……。

訪れたのは…東京都写真美術館

市川紗椰 東京都写真美術館

恵比寿ガーデンプレイス内にあり、ショッピングや食事も楽しめる、気軽で便利なロケーション。漫画家・カレー沢薫さんが、展示についてコミカルに、深く描くオリジナルフリーペーパー「東京都写真美術館ニュース別冊『ニァイズ』」も必見!

「東京都写真美術館ニュース別冊『ニァイズ』」

【展覧会DATA】
『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』
~8/21 東京都写真美術館  
東京都目黒区三田1の13の3 恵比寿ガーデンプレイス内 
10時〜18時(木・金曜〜20時・入場は閉館の30分前まで)
休館日/月曜(7/18は開館し、7/19休)
観覧料/700円ほか 
https://topmuseum.jp

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


1987年2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

シャツ¥40700(参考価格)/ガニー パンツ¥25300/ボウルズ(ハイク) バッグ¥14300/ティースクエアプレスルーム(トリキス) 靴¥48400/ザ・グランドインク(ロランス) ピアス¥102300/ソビ リング(人さし指)¥14300/アグ リング(薬指)¥29700/リキッド

撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/猪股真衣子〈TRON〉 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2022年8月号掲載

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