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【お金で社会に意思表示】「エシカル消費」から考える満足度の高いお金の使い方のヒント。日本のフェアトレードの先駆者に聞いた

毎日の買い物も、仕事で得る給与も、投資も、お金を介して私と社会はつながっている。だからこそ、お金に自分の意思を込めることができる! 今回は“エシカル消費”をクローズアップ。日本のフェアトレードの先駆け「プレス・オールターナティブ 第3世界ショップ」の取り組みを通して、エシカル消費のヒントを探る。

生産者に思いを巡らすエシカル消費がお金の満足度を上げてくれる

プレス・オールターナティブ 第3世界ショップ


1985年に創業者の片岡勝氏が北欧でフェアトレードに出会い、輸入・販売部門として、翌1986年に日本で初めてフェアトレードを事業とする「第3世界ショップ」を設立。紅茶やチョコレート、ドライフルーツ、ナッツといった食品や、インドの山羊革工芸品やフィリピンの手漉き紙製品などの雑貨類を扱う。2020年に、輸入業者として有機JAS認証を取得。

プレス・ オールターナティブ 第3世界ショップ

インド南部のシンガンパティ農園と、北部のシンゲル農園が作るオーガニックの紅茶を使ったフェアトレード紅茶。パッケージは、福祉施設&アトリエの嬉々‼CREATIVEのアーティストが手がける「Artisan」仕様

生産者の物語を理解して少しずつ世界をよくしていく

エシカル(倫理的な)消費という言葉の背景には社会への問題意識がある。象徴的なのはチョコレート。植民地時代、カカオはヨーロッパ諸国の嗜好品としてアフリカの奴隷労働により栽培されていた。その不平等な構造は長く残り続け、生産地は貧困に陥り、豊かな森林は失われた。現代では、明らかに非人道的な取り引きは行われにくいが、その分問題が顕在化しにくいという。今私たち消費者がエシカルにお金を使うには、自分から情報を集め、商品を見極める必要がある。  

「私たちが運営する『第3世界ショップ』では、生産物を適正な価格で継続的に取り引きし、生産者の生活や環境保全をサポートするフェアトレードのもと作られた商品を採用しています。この協業は、スタッフが原材料の作物の栽培方法や生産過程を確認して、生産者と顔を合わせて直接対話をし、お互いにエシカルなポリシーを共有するところから始まります。生産者は対等な仲間であり、生きがいとなる安定した仕事を一緒に作りながら、貧困や後継者難、環境破壊などの問題を解決していきます。お金を払って買い物をするからには、誰もが最大限満足したいと思いますよね。その満足感には、安さや美味しさや手軽さなど、色々な価値観があります。フェアトレードの商品を買うことで、生産者の生きがいや生活のストーリーを意識して、社会へ働きかけることができたら、美味しいだけではない大きな満足感を得られますし、使うお金の意味も変わると思うんです。まさに、お金に自分の意思を込められます」    

大事なのは、買い物をする際、これからの社会やそこに暮らす人々に、ちょっと思いを巡らせてから商品を手に取ってみること。  

「オーガニック紅茶を取り引きしている、南インドのシンガンパティ農園は、自然保護区の中にあり、自然と共存しながら紅茶を生産しています。インドで最初に有機認証を取得した農園で、1988年には有機栽培はもちろん、太陽の動きや月の満ち欠けなどに合わせた自然のエネルギーの循環に沿って栽培するサステナブルなバイオダイナミック農法を採用。敷地内には、紅茶畑や製茶工場で働く人とその家族が1000人ほど暮らしていて、育児、教育、医療などが無償提供。長らくフェアトレードが行われ、ひとつの村のように安定した健やかな暮らしが構築されています。そのほかに、カシューナッツを作るカンボジアの生産者とは、生産体制の見直しから関わっています。かつては硬い殻を割ることが大変なため、殻ごとベトナムなどに売り、安く買いたたかれていた構造があったんです。そこで、われわれが日本の大学の先生と学生に協力を仰ぎ、地元の資材で殻を割った後の乾燥に必要なオーブンを作ることで、現地の雇用の創出と適正な取り引きを進めました。このように、生産者によって課題のレベルは異なり、関わる領域も様々なので、相手の状況と環境に合わせた取り引きを行っています。それもあって、私たちは会社としてフェアトレード認証を取得していないんです。認証制度ができたときには、弊社はすでにいくつもの生産者と独自の関係を築いていたので、制度にのっとるとおつきあいのある生産者をあらためて区別しなくてはいけなくなります。それぞれの生産者に対して同じ熱量でつきあい、ポリシーを共有しているほうが大事だと考えています」    

第3世界ショップが生産者に合わせて個別に向き合う姿に、エシカル消費のヒントがある。何を社会の課題と感じるかは消費者それぞれでいいし、自分が応援したいという素直な気持ちに従って、商品を選択すればいいのだ。

プレス・オールターナティブ 第3世界ショップ 広報 山﨑 恵さん

プレス・オールターナティブ 第3世界ショップ 広報 
山﨑 恵さん

「美味しい!」を作っている雇用や自然環境にも目を向けて

第3世界ショップのスタッフがシンガンパティ農園を訪問し、生活環境をヒアリング。

第3世界ショップのスタッフがシンガンパティ農園を訪問し、生活環境をヒアリング。ワーカーの就労時間は、7時半〜16時で、12時〜13時はランチ休憩を取っている。平均寿命もインド全国の平均に比べて抜群に長いという

シンガンパティ農園では、託児所から高校までが無償で通える。

シンガンパティ農園では、託児所から高校までが無償で通える。また、商品代金以外の支給される資金「フェアトレード・プレミアム」をシンガンパティ基金として運営し、生命保険の付与やノートなどの現物支給にあてられている

カンボジアで生産したカシューナッツを使用したミックスナッツ。

カンボジアで生産したカシューナッツを使用したミックスナッツ。現在は、労働環境や生産量を鑑みてブレンド商品のみ

Artisanシリーズのチョコレート

10月から始まるArtisanシリーズのチョコレートは、紅茶同様フェアトレード&オーガニック。毎年変わるポップなイラストが人気

撮影/小渕真希子 取材・原文/力石恒元 ※BAILA2022年9月号掲載

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