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大江麻理子キャスターと一緒に「防衛力強化」について深堀り!【働く30代のニュースゼミナール vol.29】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第29回目は「防衛力強化」について大江さんと一緒に深堀りします。

今月のKeyword【防衛力強化】

ぼうえいりょくきょうか▶ロシアによるウクライナ侵攻が起こり、日本を取り巻く安全保障環境が変化しているなかで、岸田首相は「防衛費の相当な増額」を表明。政府の骨太の方針には「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記され、2022年末までに防衛関連の3つの文書が見直される方針となっている。

今月のKeyword【防衛力強化】

関連ニュースTopic

2002年5月

日米首脳会談で防衛費の「相当な増額」の確保を表明
岸田首相はバイデン米大統領と東京で首脳会談に臨み、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏づけとなる防衛費の相当な増額を確保すると決意を表明した
2022年6月

骨太の方針に「防衛力を5年以内に抜本強化」と明記
政府は、国の政策方針を示す、経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針) に、国際情勢の緊迫化を踏まえ「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記
2022年年内

政府は年内に安全保障関連の戦略3文書を見直す方針
3文書とは、外交・防衛政策の基本方針にあたる「国家安全保障戦略」、防衛力の水準を示す「防衛計画の大綱」、防衛費の見積もりを定める「中期防衛力整備計画」

バイラ読者81人にアンケート

Q 国際情勢のニュースに関心がありますか?

Q 国際情勢のニュースに関心がありますか?

8割以上が「関心がある」と回答。「ウクライナ情勢の長期化や世界への影響が心配」「台湾情勢や北朝鮮など日本周辺の動向が気がかり」「世界中で防衛力を高めているようで緊張する」という人も

Oeʼs eyes

ウクライナ侵攻以降、ニュースなどで取り上げられ、世界各国の防衛力や日本が隣国それぞれと様々な問題を抱えていることをあらためて知る機会が増えていると思います。実際に政府も今、日本の防衛力を強化しようとしているタイミングですのでより関心が向きやすい時期なのではないでしょうか

Q 日本の平和と安全を確保するための安全保障環境に不安を感じたことはありますか?

Q 日本の平和と安全を確保するための安全保障環境に不安を感じたことはありますか?

「とても不安」「どちらかというと不安」を合わせると約9割。「周辺国が防衛力を強化しているなか日本は渡り合えないのでは」「隣国の状況から日本が戦争に巻き込まれるのでは」といった不安の声が多数

Oeʼs eyes

皆さんが「もしも何かが起こった場合、日本は国を守る術があるのか」と我が事としてとらえていることがこの調査からわかります。武力が出てくる前にどうにか外交で収めることができるような外交の胆力がまずは問われますが、さらにはその表裏の関係として防衛の重要性を考える機会でもあると思います

Q あなたは、防衛費の相当な増額を確保するという政府の方針に賛成ですか?

賛成 32%
どちらとも言えない 53%
反対 15%
「どちらとも言えない」が約半数。理由には「よくわからない」「防衛費の具体的な中身を知らない」などが。賛成には「リスク対応のため」、反対には「防衛費の必要性をよく理解できていない」との声も

Oeʼs eyes

日本は長い間、防衛政策をさほど変更せずにすんできたため、皆さんこれまで防衛について考えるきっかけが少なかったのではないかと思います。世界の軍事的状況から日本の防衛力も見直す必要が出てきましたが、急に「じゃあどうすれば」と具体的に思いつくかというと非常に難しいのは当然です

Q 現在国際情勢を踏まえて、今後10年以内に日本が戦争に巻き込まれる可能性はあると思いますか?

Q 現在国際情勢を踏まえて、今後10年以内に日本が戦争に巻き込まれる可能性はあると思いますか?

昨年6月号で同じ質問をした際の46%より「はい」の割合が増え、読者の見通しが悪化。ただどちらに回答した人にも共通するのが「戦争が起きないでほしい」「平和の維持を徹底してほしい」という思い

Oeʼs eyes

刺激的ではありますけれど、これこそ皆さんの肌感覚なのかもしれません。国際情勢を踏まえて考えたとき「このまま日本が無傷でいられるのかな」と皆さんが真剣に考えた結果がこの数字だと思います。過去10年も激動でしたが、今後10年も何が起こってもおかしくないと感じているのかもしれませんね

「政府は5年以内に防衛力を抜本的に強化。日本の防衛にとって今年は大きな転換期」

「ウクライナ侵攻が起こり、力による現状変更が現代になっても起こりうることを皆さん実感したと思います。日本周辺の軍事的なバランスの変化を背景に、政府は『防衛力を5年以内に抜本的に強化する』と骨太の方針に明記。年末までに防衛関連の3つの文書が見直される予定です。そうしたなかで皆さんにも問題意識を共有していただきたいと思い、このテーマを選びました」と大江さん。日本周辺は今どんな状況ですか。

「まず、ウクライナを侵攻しているロシアは日本の隣国であるわけです。また、北朝鮮がミサイルや核の開発を進めていることはすぐそばにある脅威だと思います。さらに中国が近年の急激な経済成長とともに防衛力を非常に増してきています。尖閣諸島への中国の公船の侵入が続き、台湾をめぐる緊迫感も増しています。8月にアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪れた際には、直後から中国は台湾の近海で大規模な軍事演習を行いました。その台湾と日本の与那国島は100キロほどしか離れていないんですね。距離でいうと東京ー熱海間ぐらいです。そうなると、もし台湾で有事が起こった場合、台湾をアメリカが守るためには日本を拠点にして台湾を防衛することになるはずですので、日本は巻き込まれることになりす。また、台湾有事が起きている最中に、たとえば尖閣諸島へ他国が上陸してくるなど、複合的な事態になった場合、日本にとって『自分で自分のことを守れる力を身につけておかないと何か起こったときに大変』という懸念が、もしそうなったらという話ではなく、実際にいつ起こってもおかしくない状況として対策を考えておく必要が出てきました。周辺国の緊迫化に合わせて日本もそれに備えなければならない状況になってきた。またその議論が高まってきたということだと思います」

読者からは「日本はどう防衛力を強化しようとしているのですか」との質問が多数。

「岸田首相は、防衛費の『相当な増額』を明言しています。これまで日本は、国の防衛費をGDP(国内総生産)と比べて1%ほどに抑える状況が長く続いていました。今年の政府の骨太の方針には、NATO同盟国がGDP比2%を防衛費の目標としていることを例に示した上で『防衛力を5年以内に抜本的に強化する』と明記しているので、日本の防衛費の大幅な増額が決められそうな転換期といえます。ただ政権としては防衛費の金額ありきではなく、防衛力をしっかりと持つためには何が必要なのか、それをまずは積み上げ型で考えていく必要があると言っています。それを年末までに考えて戦略3文書を改定し、必要なものには一体どれくらいお金がかかるのかというところで防衛費を定めていくと見られています」

たとえばどんなものが必要なのですか。

「古くなった戦車などの装備品を現代の戦い方に合わせて更新することやドローンなどの活用、不足している弾薬の備蓄。ウクライナを見てもサイバー戦争の側面が大きいですので、サイバー戦争になった場合のソフト面である人材をどう育成していくかなどの課題もあります。また、今日本は攻撃をされそうな場合にその相手方の基地を攻撃する能力を持っていないため、それを持つべきかどうか『反撃能力』の保有も検討されています。ただ武器を持てばいいという話ではなくて、かなり多岐にわたる戦略や対策が必要になると考えられています」

「ニュースや一次情報を読み解き、時流の変化の兆しをとらえられると安心感につながる」大江さん

「防衛費の数字の裏には国を守ってくれる人や国民の命がある。決して他人事ではない」

防衛費を増やすにあたって、財源はどのように考えられているのですか。

「財源の議論はこれからです。現代の防衛に必要なものを定め、そのために必要な金額を割り出し、それを工面するための財源を議論することになります。これまで日本が経済成長を遂げられてきたのは防衛費を抑えられたことも大きいと思います。防衛費が浮いた分、ほかのことに予算を割くことができたわけで、『平和の減税効果』とも言われます。今後、防衛費の『相当な増額』をするのであれば、『平和の減税効果』が薄れた分、他の分野の予算にしわ寄せがいくことは避けられないかもしれません」

これから防衛関連のニュースを見る際にどのような視点を持つとよいでしょうか。

「防衛費と聞いたとき、機械が戦うわけではなくて防衛する人がそこにいる。国民の命、防衛してくれる人たちの命を懸けての話なんだという視点を持っていただけたらと思います。防衛費はただの数字ではなく、数字の裏には命があります。国を防衛する人たちの命も含めて国民の命を守れるかどうかという観点で、今何が日本に防衛力として必要なのかという議論を進めていってもらいたいですね」

大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/芹澤信次 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2022年10月号掲載

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