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壮絶な愛憎劇を演じることで、心が強くなった【入山法子インタビュー・映画『天上の花』】

詩人・萩原朔太郎の没後80年を記念して制作された映画『天上の花』で、主人公が恋に落ちる朔太郎の美しい妹・慶子役を演じた入山法子さん。戦争の時代に翻弄されつつ、詩と愛に葛藤しながら懸命に生きた人々から、今を生きる私たちが受け取るべきメッセージとは? 鬼気迫る愛の物語に身を投じた入山さんが感じた、物語の魅力をインタビュー。

入山法子

誰もが抱えるどうにもできない曖昧な感情を、 受け入れて救ってくれる作品です

映画の原作は、萩原朔太郎の娘である萩原葉子の小説『天上の花ー三好達治抄ー』。萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治と、朔太郎の妹・慶子の愛憎劇を描いた物語。

 

ーー入山さんはこの物語を演じる前から三好達治と慶子のことはご存知でしたか?

 

「小学生の頃、教科書で達治の詩を読んだ記憶が薄っすら残っている程度で、二人のことは知りませんでした。実際に本を読んでみて、二人ともすごく不器用な人だと思ったのが率直な印象です。どうして素直に気持ちを伝えることができないのだろう、と」

 

ーー慶子を演じる中で感じた慶子の魅力とは?

 

「曖昧に揺れ動く自分の感情を素直に受け止めることができず、憎しみとして放出することしかできなかった慶子の不器用さに、愛おしさを感じました。たぶん、本当はすごく自由で可愛らしくて、魅力あふれる人だったと思うんです。でも時代や家族との関係によって、素直に生きることができなかった。現代に生まれていたら、もう少し生きやすかったのかもしれないですね」

2022「天上の花」三好達治と、朔太郎の妹・慶子

©2022「天上の花」製作運動体

ーー達治の慶子への一途な愛は報われることがなく、次第に憎しみが心を蝕んでゆき、壮絶な暴力が繰り返されますが、入山さん自身の心がすり減ったり、役に飲まれて落ち込んでしまうようなことはありましたか?

 

「役に飲まれることはありませんでした。達治を演じた東出 (昌大)さんは、エネルギーがあふれている方だったので『この人に負けてたまるか!』という気持ちで挑むことができました。壮絶なシーンを撮影するときは、細かく段取りを決めて、怪我がないように注意しながら、いいものを作ろうという気持ちで一丸となって挑めていたので、心がすり減るどころか、私自身どんどんたくましくなっていった気がします(笑)」

2022「天上の花」朔太郎の妹・慶子を演じた入山法子

©2022「天上の花」製作運動体

三好達治の詩の世界と美しい自然の風景も見どころに

ーーいちばん印象に残っているシーンは?

 

「物語のクライマックスでもある、達治から逃れようとして雪が降る中を慶子が無我夢中で走るシーンは印象に残っています。何度も撮り直すことができるものではなかったので、東出さんとはもちろん、監督やスタッフの皆さんと入念に意見を出し合って撮影に挑みました。その結果、1回1発で撮ることができました! 実は普段、自分が出演した作品をあまり観る方ではないのですが、今回は思い入れが強く4回も観てしまいました(笑)」

 

ーー映画では壮絶な愛憎劇だけでなく、三好達治の詩が、美しい自然の風景とともに散りばめられているのも見どころですよね。入山さんが感じた詩人としての三好達治の魅力とは?

 

「霞のような風景を文字として書いていて、すごくロマンチストな人だと思いました。正直、達治の詩を読んで、彼の伝えたいことをまだ完全には理解することができないけれど、ロマンチストな達治が見た世界が一体どんなものだったか知りたい、という思いが日に日に強くなっているので、これから達治の詩をたくさん読んでみようと思いました」

入山法子さん立ち姿

ーー@BAILAを読んでいる世代と慶子は年齢が近いこともあり、共感できる部分も多いかと思います。ぜひ同世代の読者に見どころを教えてください。

 

「自分がしてしまったことに対して落ち込んだり、軽蔑してしまうこともあるけれど、それを受け入れて、救ってくれる作品だと思っています。映画を観終わる頃には皆さん、奔放な慶子に感情移入して、愛おしく感じているかもしれません(笑)」

入山法子さんの笑顔

ーー最後に入山さんが最近ハマっていることがあれば教えてください。

 

「最近ではないけれど……ここ数年、着物を着ることにハマっています。お祝いの席や新年会、友人との会食など、相手を喜ばせたいという気持ちがあるときに着ることが多いです。着物の世界は奥深いですし、慣れてしまえばお洋服を着る感覚で簡単に着られるようになるのでオススメです」

映画『天上の花』公式サイト
映画『天上の花』メインビジュアル

©2022「天上の花」製作運動体

映画『天上の花』


原作/萩原葉子『天上の花ー三好達治抄ー』
監督/片嶋一貴 脚本/五藤さや香、荒井晴彦 
出演/東出昌大、入山法子、有森也実、吹越満
 

昭和になってすぐ、萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治は朔太郎の末妹・慶子と運命的に出会い恋に落ちたが慶子の母に拒絶され、失意の中、別の女性と見合い結婚する。それから16年4ヶ月の月が過ぎ、慶子に再会した達治は思いを伝え慶子を家に迎える。東京に空襲が迫り来る中、ひっそりと身を隠すように越前三国に新居を構えた二人には雪深い冬の過酷な生活が待ち受けていた。純粋な文学的志向と潔癖な人生観の持ち主である達治は、奔放な慶子に対する一途な愛とその裏返しの憎しみで心が蝕まれてゆき……。 
 
12月9日(金)より新宿武蔵野館、ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他順次公開

入山法子

入山法子


いりやまのりこ●1985年8月1日生まれ、埼玉県出身。2006年より女優活動を本格的に始動し、これまで数多くのドラマや映画に出演。今年の秋に放送されたドラマ『雪女と蟹を食う』ではヒロインの謎多きセレブ妻を演じ話題に。

撮影/井手野下貴弘 スタイリスト/小川恭平 ヘア&メイクアップ/美舟(SIGNO) 取材・文/菊池美里

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