「人生に飽きている」は贅沢な悩み? コラムニスト・カレー沢薫のコラムになるほど!

2019-06-01 18:00
  • ご自身も「人生に飽きてなくもない?」と感じているというコラムニスト・カレー沢薫先生。「飽き」の背後には深刻な問題があるのかも。読めばなるほど!と納得のコラムを寄せてもらいました。
  • 漫画家・コラムニスト カレー沢薫さん
    『ビッグコミック週刊スピリッツ』などで連載する傍らエッセイも多数執筆。エッセイ『ブスの家訓』(中央公論新社)発売中。Twitter:@rosia29

  • 人生に飽きたにまつわるカレー沢薫的毒にも薬にもなったりならなかったりする話

  • 「人生に飽きている」。
    はた目には社会の第一線で活躍しているBAILA読者のなかにも実はこの悩みを抱えている人が多いのではないだろうか。だが、この悩みはなかなか口に出すことができない。なぜならこの悩みを他人に相談して返ってくる第一声1位は「一体何が不満なの?」だからだ。ちなみに2位は「無言でグーパン」だ、相談相手がフリーランスや無職だった場合はこちらが1位になる。

    まず「人生に飽きている」と感じるアラサー女は大体「そこそこ安定した職」についている場合が多く、幸福度に関しても「少なくとも自分は不幸じゃない」と思っている者が大半なのだ。この時点で私のようなフリーランスという名の無職は「貴様らに将来不安を語る資格はない」「うぬは何が不満なのだ」と作画原哲夫の顔で言ってしまいそうになる。

    実際「人生飽きている」と感じている彼女らに「大きな不満」はないのだ。だが「不安」はあるのである。むしろ将来に対する不安は、毎日を懸命に生きている人より強いかもしれない。明日大きな商談がある人や、月末に闇金から鬼電が来ている人は「10年後の自分」のことなどぼんやりしたことは考えないのだ。

    日々が安定し、直近で解決すべき悩みがない人ほど「この先どうなるんだろう」という漠然としたことを考え、不安になりがちなのである。

    さらに彼女らが今持っている「安定」が盤石でないということを彼女ら自身も知っている。安定した職場と言っても、明日爆発しないとも限らないし、給与が2兆円ということもないだろう、いつこの安定がなくなるか、という不安も同時に抱えているのだ。だが安定しているが故に動くことができない。しかし他人からすれば、大学2年生が「何か面白いことないかな」と言っているのと同じに聞こえるし、最悪マウントと思われ「お? ケンカか? やるか?」とファミレスの外に出るように促されてしまう。
  • 人生への飽き
  • しかしこの人生に対する漠然とした不安や飽きをあまりなめないほうがいい。明治の文豪芥川龍之介が「僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」という言葉を残している。まさに人生飽きてる系女子の心情だ、さすが文豪、もしくは芥川龍之介はアラサー女子だったのかもしれない。

    この、ぼんやりとした不安には年齢も大きく関係している。30代といったらもちろんまだ若いのだが、肉体的には衰えが始まる、少なくとも身長がこれ以上伸びることはないし、増えるとしたら、体重、シワ、白髪だ。さらに親に対し「もう完全にジジイババアやんけ」と感じるのもこのころだ、それについても考えていかなければならなくなる。

    つまり「人生に飽きている」というのは、「今が大してピークともいえないのにあとは下るだけ」と思えてしまっている状態なのである。これ以上楽しいことはなく、あとは老いと面倒事だけだというなら「だったらここで終わらせてもよくね?」という龍之介マインドになってしまうのである。龍之介が本当にそう考えていたかはわからないが、人生への飽きが生きる意欲を奪うのは事実だ。「贅沢な悩み」ではなく「深刻な問題」として向き合うべきだろう。

    具体的に何をしたらよいかというとやはり「新しいこと」を始めることだろう。「転職」とか「インドに行く」など、でかいことである必要はない「2・5次元沼にはまる」ぐらいでいいし、そういうことに年齢は関係ない。

    もしかしたら、この「新しいこと」に「結婚」を挙げる人もいるかもしれない。それもいい、しかし「不安」そして「焦り」で動くのは危険だとだけは言っておこう。私も無職なので、将来に対する不安は、ぼんやりどころか、10㎞離れていても見える、その不安から老後資産を増やそうとして、株に手を出し、現在10万円ぐらいマイナスを出している、これだけあったら、しばらく生きられる額である。焦っているときというのは、引き戸を一生懸命押したりと、いつもはしないような失敗すらしてしまうものだ。結婚という一大事でその失敗を犯すのは厳しい。

    焦りではなく、安定している今だからこそできることがあるという「ワクワク感」で動いたほうがいいだろう。
イラスト/いいあい 取材・文/東 美希 ※BAILA2019年6月号掲載
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