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「腹筋見せてよ」とマドンナは言った

バレンタインデーの2月14日。さいたまスーパーアリーナで開催された、米ポップ界の女王マドンナ(57)の「レベル・ハート・ツアー」日本公演。ライブの熱気冷めやらぬなかの、来た・見た・感じたをエモーショナルレポート。

私たちは何を見たくてマドンナのライブに馳せ参じるのか

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ダンスユニットAyaBambiらを引き連れたマドンナ。Photo by instagram @madonna byMadonna
マドンナ10年ぶりの来日公演は、SS席5万円、S席2万円。会場は、都心からはやや離れたさいたまスーパーアリーナ。前日13日に開演予定時間が約2時間遅れたと聞きつけ、あらかじめ兵糧を装備して臨む。金額的&時間的にそれなりの覚悟をしてでも、一生に一度は体感したいマドンナのライブ。米ポップ界を代表するスーパースターで、常に流行の最先端を貧欲に取り込むエンターテイナー。でも、それだけ? 私たちは、何が見たくてマドンナのライブに出かけるのだろうか?

ドレイク問題。57歳のマドンナは今もセックスシンボルか

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転げたり絡んだりのセクシーなダンス。Photo by instagram @madonna byMadonna
昨年、「コーチェラ・フェスティバル」で人気ラッパーのドレイクのステージにサプライズ出演。興に乗ったマドンナが食いつかんばかりの濃厚なキスをしたところ、ドレイクがいかにも迷惑そうに顔をしかめたという事件があった。デビュー以来、たゆまぬ努力と野心で現役セックスシンボルとして君臨してきた女王のキスを、(後でSNSでフォローしたとはいえ)露骨に嫌がる男性がいることが、とてもショックだった。天下のマドンナ姐さんの魅力が翳って、「気を遣って一応セックスシンボル扱い」みたいな感じになっちゃったの?

かしづかれ、担がれる姿が似合う。女王の風格は健在!

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キャバレー風の衣装で「Material Girl」を披露。Photo by instagram @madonna byMadonna
そんな先入観があったので、今回少しでもマドンナに衰えが見えたら、きっとその部分に目が行ってしまい残酷なフォーカスをしてしまうだろうな、と思っていた。しかし、檻に入ったマドンナがつり下げられて登場した途端、そんな心配は吹き飛んだ。攻めたコスチュームと引き締まったシルエット、甘くてエロティックな声音、しっかりとした体幹を感じさせるキビキビとした動き。そしてなにより、イケてるダンサー軍団を従え、ステージを掌握する気迫と存在感! 

年齢がどうとかの概念を弾き返す、時代のセックスシンボルが降り立った瞬間だった。いい体でいい動きをするダンサーたちに、かしづかれたり担がれたり、お尻を叩いたり叩かれたり。「シックスパック(6つに割れた腹筋)見せてよ」と男性ダンサーのシャツをめくっても、それがセクハラに見えない(むしろ、寵愛に預かり光栄風)。マドンナが現役セックスシンボルかどうかなんて愚問。疑って申し訳なかった。アートとセックスとポップを混ぜて蒸留し、かすかに発酵マジックを使ったようなそんな唯一無二の存在感を放つ、57歳、So what?な別格のセックスシンボルがそこにいた。

新曲に名曲。そして、人生がにじみ出るLa vie en rose

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「薔薇色の人生(La vie en rose)」を弾き語り。Photo by instagram @madonna byMadonna
「Bitch I'm Madonna」を始めとする最新アルバム『レベル・ハート』からの楽曲はもちろん、見せびらかすようにジャケットを脱ぎ「熱くなっちゃった」と悩ましげにシャツのボタンを外して歌った「ライク・ア・ヴァージン」や、テキーラをショットであおってからの「La Isla Bonita」など、懐かしの名曲も披露したマドンナ。
しかし、個人的にいちばん心に残ったのは、ウクレレのような小さなギターをつま弾きながらフランス語で歌った「薔薇色の人生(La vie en rose)」だ。「今日はバレンタインデーだから、もう一曲ラブソングを歌うわ。アイシテマス、ジュテーム、アイラブユー」そんなMCとともに力みなく、少し掠れた声で歌われたシャンソンの名曲。それまで、ピチピチの年齢不詳だったクイーンが、すこしプライベートな雰囲気に。ふと酸いも甘いも噛み分けた大人の女ならではの情感が漂ったことに、こみ上げるものがあった。

ダイナミックで豪華な舞台装置、男女入り交じったイケてるダンサー軍団をとっかえひっかえ軽く抱いたりあしらったりする、セックスアピールみなぎるマドンナ。景気良く踊れる曲に、過ぎた日がフラッシュバックする懐かしの名曲……。特に退場規制もなく、ゾロゾロと会場を後にする群衆のあちこちから、「マドンナ頑張っててすごいね」「元気でた。頑張ろう!」という声が聞こえてきた。そして、私たちは見たかったものを全部見た満足感と、祭りのあとの寂しさを抱いて帰路についたのだった。
文/長田杏奈

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