12月の公開以降、単館上映ながらSNSなどでその評判を耳にし、ずっと観に行きたいと思っていた『否定と肯定』。訪れたのは土曜日午後だったのですが、開始10分前に駆け込んだらもう前の方しかあいていないという盛況ぶりに驚きました。
「その真実に圧倒される」……映画パンフレットの冒頭はそんな一言で始まります。舞台は2000年、ロンドンで実際に行われた、ユダヤ人歴史学者とホロコースト否定論者の裁判。歴史学者のデボラ・E・リップシュット(レイチェル・ワイズ)が、大量虐殺はなかったとする“ホロコースト否定論者”に対して、自身の著書で対立する主張を繰り広げたころ、その否定論者から名誉棄損で訴えられます。イギリスの法廷では訴えられた側に立証責任があり、真実を証明するために優秀な弁護団とともに奔走するリップシュタット。果たして大量虐殺はあったのか、なかったのか、歴史の真実を争う裁判の行方は・・・。
テーマとしては大変重い内容。でも、主軸になっているのは、リップシュタットと弁護団の苦悩や葛藤、そして相互理解。そのプロセスにおいての細やかな描写に圧倒。特に相手が理不尽な主張を声高に叫んだとき、その「土俵に乗るべきかどうか」という主人公の葛藤が心に残りました。心情としては思いっきり反論したい、でも相手の土俵に乗ってしまうことが得策かどうか……。詳しくは書けませんが、リップシュタットのこの部分の苦悩の描写には本当に心が震えます。ぜひ映画で確認を。SNSが影響力を持つ今、「ポストトゥルース」や「フェイクニュース」といった言葉が話題です。そんな今こそ真実とは何か、について深く考えさせられた作品でした。都内だと有楽町TOHOシネマズ シャンテで上映中です!(編集きっこ)