確固たる個性と審美眼を持つ、大人のおしゃれプロが手に入れた“真の一生もの”とは? 出合ったストーリーやお気に入りのポイント、今も愛用している理由とともに、“マイ・一生名品”を紹介。スタイリスト福田亜矢子さんの一生名品は?
ふくだあやこ 大人の審美眼で選んだベーシックアイテムを軸にした、洗練された女性らしさを感じさせるスタイルが人気。「NAVE」のディレクターとしても活躍。
1 ザ・ロウのコート、手に入れたのはいつ?
―いつ手に入れましたか?
「3年くらい前に表参道にあるChaosというショップで購入しました。ザ・ロウといえば“クワイエット・ラグジュアリー”を代表するブランド。長く着られる上質なコートが欲しいとずっと思っていて、仕事で立ち寄ったショップで一目惚れしてしまいました」
ザ・ロウのコートの中でも、エッセンシャルと呼ぶべきベーシックなデザイン。コート/ザ・ロウ
―なぜ気に入ったのですか?
「長く愛用できるシンプルで上質なコートを探していたのですが、とはいえあまりにもベーシックすぎると、大人には少し物足りない気も。その点、このコートはバランスが絶妙! たっぷりとしたロング丈で、Aラインではなくストレートシルエットなところも気に入った理由です。さらに襟がほんの少しだけ大きく、ベルトの幅も太め。さりげないディテールが効いているから、シンプルなスタイリングに羽織るだけで決まるんです」
ワードローブの8割以上が黒だという福田さん。黒こそ素材と仕立てのクオリティが出るからこそ、年齢を重ねるにつれ上質なものが気になるようになってきたそう。コート・ブーツ/ザ・ロウ
2 このコートが、“マイ・一生名品”になった理由とは?
黒の美しさを引き立てる、上質なウールのしっとりとした光沢。ベルトをさらりと結んでウエストマークするほか、前を開けてガウン風に着ることも。コート/ザ・ロウ
「このコート、たしかにかなり勇気がいるプライス(40万円くらい)ではあったのですが、でも例えば毎年1枚ずつ何かのアウターを買うくらいなら、何年か買うのを我慢してでもずっとこれを着たいと思えたんです。とにかく、袖を通してみたときの気持ちの上がり方が違いました! 包み込まれるような着心地や、身体をきれいに見せてくれるシルエット、しなやかな肌ざわり。他のコートとは格が違う“上等なシンプルさ”には、特別なパワーがあると実感。何がその人にとっての一生名品になるかはそれぞれですし、ファッション的な視点で言えば一生ものってないのかもしれないのですが……。圧倒的に気分が上がって、心が豊かになれるものが私にとっての名品なのだと思います」
取材・文/発田美穂