文芸評論家の三宅香帆が、バイラ世代におすすめの最新本をピックアップ! 今回のテーマは「カフェで読みたい本」。仕事の合間に、休日の息抜きに。カフェで読書するとしたらどんな本がぴったりくる? 三宅さんが推しの作品について語ります!
【三宅香帆の働いていても読みたい本】カフェで読みたい本
嶋津輝『カフェーの帰り道』

『カフェーの帰り道』
嶋津輝著 東京創元社 1870円
第174回直木賞受賞作。東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない『カフェー西行』。そこには個性あふれる女給たちがいた――。大正から昭和にかけてカフェで働いた“女性たちの物語”。お仕事小説としても読みごたえ満点の一冊。
レトロな世界観と人間考察の深さを楽しめる群像小説!
BAILA読者の皆さん、こんにちは。今回から連載がリニューアルに。巻頭の1ページ枠にお引っ越しできるなんて……本当に光栄です! これからは本の紹介に絡めて、私の身辺雑記なども自由にお伝えできたらと思っています。というわけで今月のテーマは「カフェで読みたい本」。京都に住んでいる私にとって、日常の中で大事にしている時間がまさに“カフェで読書するひととき”なんです。地元のお店でコーヒーを頼み、ぱらぱらとページをめくる時間は、人生でいちばん贅沢なのでは⁉と思うほど。特に行きつけのお店は決めておらず、老舗の喫茶店はもちろん、東京ではチェーン店のコーヒーショップもよく利用しています。
カフェでの読書って、お店の少しざわざわした感じも好きで。自宅で本を読むときとはまた違い、心地よいBGMがあるように感じられるんですよね。隣の話が聞こえすぎてしまったり(笑)、本の内容に集中したいときはノイズキャンセリングイヤフォンをつけたりと、自分のペースでカフェ読書できるようにも工夫しています。でも締め切りやタスクが立て込込み、優雅に本を読んでいられる状況じゃないと思ってしまうときもありますが……過去には『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』でも書いたとおり、読書をしたくて会社員を辞めた経験も。忙しくても、目の前にやるべきことが山積みでも、「これは自分のためのリフレッシュだ!」と割切って、すき間時間を見つけたらカフェや喫茶店へと駆け込んでます。大学生の頃から今に至るまで文芸評論を仕事にできているのは幸運だと思います。
そんな私が推す一冊が、戦前から戦中・戦後にかけて、東京・上野にあるお店を舞台にした小説『カフェーの帰り道』。「カフェー西行」というお店と、そこで働く女給さんたちが登場する群像ものです。登場人物それぞれの視点でお話が書かれているのが、惹き込まれるポイント。たとえばある女給さんが、お客さんの女性を「あの人は上品な奥さまでいいなあ」と思っていたら、一方でその奥さまは彼女を「なんてきれいな女給さんなのだろう」と思っていたり。自分が認識しているイメージと他人が感じる自分像とのギャップ。こういうことって時代や性別を問わず、誰にでもあることだと思うんですよね。人が持つ心の機微が丁寧に描かれている作品です。
本作は約100年前の東京を舞台にしているので、その時代の様々な女性の立場や、日常について書かれているのも面白いですね。着物など着ているものの描写も美しいので、ファッションが大好きなBAILA読者の皆さんにぴったりかも。また上野界隈の街の変化も楽しめるので、読んでいてどんどんイメージがふくらみます。ちなみに私は読みながら「これ、NHKの夜の時間帯でドラマ化したらどうなるのだろうか?」と妄想が湧いてきました(笑)。レトロな世界観や時代物のドラマが好きな人だったらわかるはず! 読んだあとに「誰をキャスティングしたい?」と、友達と感想を言い合って盛り上がれる作品だとも思います。
著者の島津さんは、この小説で第174回直木賞を受賞されました。私は毎回、賞の候補作を読み受賞作を予想しているんです。どの作品も興味深かったものの、『カフェーの帰り道』が受賞してくれるといいな、と思っていたので個人的にも満足の結果となりました。
私を含めてBAILA世代って忙しいですよね。だからこそこんな感じで、ゆるゆるとおすすめを語っていきたいと思うので、どうぞおつきあいください!
これも読んでほしい!
山本文緒『なぎさ』

『なぎさ』
山本文緒著
KADOKAWA 748円
とある姉妹の“カフェ開業&経営”小説。「大好きな山本文緒さんの作品。主人公の家庭の事情、カフェを事業として成り立たせていくための現実など、生活に根づいたエピソードが満載。それでいて読後は元気になれるので、お疲れぎみのときにはぴったりの一冊です!」
ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』
ファン・ボルム著 牧野美加訳
集英社 2640円
会社を辞めたヨンジュは、ブックカフェを立ち上げる。お店には様々な悩みを抱えた人たちが集まるように――。「韓国の小説ですが、登場人物たちの背景から韓国社会の持つリアルかつシビアな空気感が伝わります。ブックカフェ=ほっこりなイメージを覆すような物語」
獅子文六『コーヒーと恋愛』

『コーヒーと恋愛』
獅子文六著
筑摩書房 990円
昭和の作家・獅子文六が綴る、日本の高度経済成長期を背景にした恋愛ユーモア小説。「コーヒーをいれるのが上手な女優のモエ子さん&年下の同棲相手……と設定やディテールがおしゃれで。昭和の小説なのに今どきの配信ドラマ感がありテンポよく読み進められます」

撮影(くま)/久々江満 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2026年4月号掲載

BAILA編集部
30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。














































