私たちは何を見たくてマドンナのライブに馳せ参じるのか
ドレイク問題。57歳のマドンナは今もセックスシンボルか
かしづかれ、担がれる姿が似合う。女王の風格は健在!
年齢がどうとかの概念を弾き返す、時代のセックスシンボルが降り立った瞬間だった。いい体でいい動きをするダンサーたちに、かしづかれたり担がれたり、お尻を叩いたり叩かれたり。「シックスパック(6つに割れた腹筋)見せてよ」と男性ダンサーのシャツをめくっても、それがセクハラに見えない(むしろ、寵愛に預かり光栄風)。マドンナが現役セックスシンボルかどうかなんて愚問。疑って申し訳なかった。アートとセックスとポップを混ぜて蒸留し、かすかに発酵マジックを使ったようなそんな唯一無二の存在感を放つ、57歳、So what?な別格のセックスシンボルがそこにいた。
新曲に名曲。そして、人生がにじみ出るLa vie en rose
しかし、個人的にいちばん心に残ったのは、ウクレレのような小さなギターをつま弾きながらフランス語で歌った「薔薇色の人生(La vie en rose)」だ。「今日はバレンタインデーだから、もう一曲ラブソングを歌うわ。アイシテマス、ジュテーム、アイラブユー」そんなMCとともに力みなく、少し掠れた声で歌われたシャンソンの名曲。それまで、ピチピチの年齢不詳だったクイーンが、すこしプライベートな雰囲気に。ふと酸いも甘いも噛み分けた大人の女ならではの情感が漂ったことに、こみ上げるものがあった。
ダイナミックで豪華な舞台装置、男女入り交じったイケてるダンサー軍団をとっかえひっかえ軽く抱いたりあしらったりする、セックスアピールみなぎるマドンナ。景気良く踊れる曲に、過ぎた日がフラッシュバックする懐かしの名曲……。特に退場規制もなく、ゾロゾロと会場を後にする群衆のあちこちから、「マドンナ頑張っててすごいね」「元気でた。頑張ろう!」という声が聞こえてきた。そして、私たちは見たかったものを全部見た満足感と、祭りのあとの寂しさを抱いて帰路についたのだった。