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レディ・ガガに学ぶ「大舞台任され力」

失敗が許されない目玉企画や、誰がやっても批判されるような大舞台で、白羽の矢を立てられアーティストNo.1なのがレディ・ガガ。グラミー賞のデヴィッド・ボウイトリビュートも、スーパーボウルの国歌斉唱も、昨年のアカデミー賞の『サウンド・オブ・ミュージック』も! 歌が上手いから? 服が奇抜だから? プレッシャーとか大丈夫なの? 彼女に頼めば間違いない!とお願いしたくなる、レディ・ガガの『大舞台任され力』に学ぼう。

全身全霊で入り込み、望まれた以上のことをする

レディ・ガガに学ぶ「大舞台任され力」_1
デヴィッド・ボウイになりきったレディ・ガガ。Photo by instagram @ladygaga byLady Gaga
2月15日に行われたグラミー賞で披露された、デヴィッド・ボウイのトリビュートライブ。1月に亡くなったばかりで、ファンの喪失感と悲しみはまだ癒えていない。さらに、音楽的にもビジュアル的にも独自の境地を切り拓いたアーティストだけに、ハードルも高い。でも、誰かがやらなければならない。そこで、ガガである。
 以前から、音楽を始め、ファッションに関心を持つきっかけになったアーティストとして、ことあるごとにデヴィッド・ボウイへの敬意を口にしていたガガ。ビジュアルに強く、歌も上手いし華も知名度もある。彼女こそが適役、と大役を任された。
 舞台は一度きり。しかしガガは、何日も前から徹底的に気持ちを作り込んできた。SNSのアイコンをデヴィッド・ボウイの最新アルバム『★(ブラックスター)』に変え、脇腹にはボウイの象徴的なビジュアル“ジギー・スターダスト”のタトゥーを彫った。誰もそこまでやれとは期待していない。でも、ガガはやる。全身全霊のなりきり力と入り込み力で、プレッシャーさえも燃料にひた走るのだ。
 パフォーマンスは、ボウイ風メイクを施したガガのアップから始まった。プロジェクションマッピングの蠢くメイクが、やがて蜘蛛に変わり顔中を這い回る。カメラが引くと、「出火吐暴威」と漢字で書かれた白いガウンをまとったガガが登場。山本寛斎がデザインした有名な衣装のレプリカだ。監督とギターを務める相棒は、ボウイのポップ路線への転向を成功させた『レッツ・ダンス』のプロデューサー、ナイル・ロジャース。ボウイ風メイクのダンサーを従えてモニターやステージをいっぱいに使い、歌って踊った8分間のパフォーマンスで披露したメドレーはめくるめく10曲。長いキャリアのハイライトをつなぎ、デヴィッド・ボウイを知らない人でも一曲は「聞いたことある!」と思えるセットリスト。エンターテイナー、レディ・ガガ全身全霊のトリビュートライブだった。
 案の定、その後一部から批判もされた。それでも、ガガのアイコンには今も誇らしげにブラックスターが輝いている。

呼吸と間合いで、場を制する掌握力

レディ・ガガに学ぶ「大舞台任され力」_2
星条旗レッドのグッチに身を包み、熱唱。Photo by instagram @ladygaga by Lady Gaga
アメリカの国民的行事、スーパーボウル。2月の第1週目の日曜日に開催され、今年は50周年という記念の年。その開会式で国歌斉唱の大役を任されたのは、またもやガガである。この日も、全身全霊入り込んだ星条旗カラーの装い。グッチのメタリックレッドのスーツに、赤いグリッターシャドウとメタリックブルーのネイル。舞台上には、一台のピアノと胸に手を当てたガガだけ。155cmの小柄な彼女がいつにも増して大きく見えたのは、高く盛り上がったオールバックのウィッグや厚底ヒールのせいだけではないだろう。
 歌い出しは声を張らずに、語りかけるように。徐々に昂り、会場から自然と歓声が湧き始める。周囲を見渡しながら歌うので、「あ、自分らに歌いかけてる」というムードも煽られる。曲中、ひと呼吸の間合いがいちいち絶妙で、徐々に世界のピントがガガに集約されるように場が掌握されてゆく。高らかに歌い上げるラストでは、ジェット機が飛び、この日戦うカロライナ・パンサーズとデンバー・ブロンコスの猛々しい男たちが雄叫びを上げる。それでも、ガガの声とパンチの効いた存在感はひとつも霞まず場を制していた。

実はど王道&ど正当派でも勝負できる

レディ・ガガに学ぶ「大舞台任され力」_3
『サウンド・オブ・ミュージック』の主演女優ジュリー・アンドリュースとハグ。©amanaimages
生肉ドレスや奇抜な全身タイツだけがガガじゃない。2015年のアカデミー賞で、映画史に残るミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の50周年記念メドレーという大舞台を任されたのも、やっぱりガガだった。この日の彼女は、純白のドレスに王道メイクと巻き髪。「The hills are alive♪」の歌い出しを聴けばすぐ、あの有名な原曲の高いコードや歌唱法を忠実に再現されていることに気づいたはずだ。見た目も、歌もいつもと違う正統派。それでも堂々と聴衆を魅了して四曲のメドレーを歌い終えたガガは、ステージに現れた主演女優のジュリー・アンドリュースと熱いハグを交わした。
 その前日譚として、こんな話がある。ある日突然、ガガがジュリーの元に電話をかけてきて、自分がメドレーを歌うことで気を悪くしないかと尋ねてきた。そして、ジュリーに敬意を表すため、原曲と同じキーにこだわり練習を重ねていることを伝えたのだそう。結構気にする繊細な性格と、オリジナルへの敬意が感じられるエピソードだ。

歩くだけで「本日の目玉」になる圧倒的な存在感

レディ・ガガに学ぶ「大舞台任され力」_4
マーク・ジェイコブスのランウェイを闊歩。Photo by instagram @ladygaga by Lady Gaga
2月18日には、デヴィッド・ボウイトリビュートの衣装も手がけた、マーク ジェイコブスのランウェイに登場。この日は、波々をつけたアールデコ風ヘアにゴシックメイク、ビッグシルエットのコートにおおきなボウタイつきシャツ&ファーのアームカバー、ぽっくり下駄のような厚底ヒールという出で立ち。他のモデルに比べると小柄な彼女だが、存在感は圧倒的。彼女が登場すると会場は騒然とし、シャッター音が鳴り止まなかったという。ラスボス級の存在感を放ちつつも、腰は低め。あらかじめ、バックステージで特別扱いしないでほしいと伝えたというのも彼女らしい。

ひとつ期待を寄せられたら、それ以上のエネルギーをもって全身全霊で打ち返す。大舞台を任せたくなる魅力と努力の人、ガガ。今月28日に控えたアカデミー賞でも、パフォーマンスするという噂も。今度はどんな姿で楽しませてくれるのだろうか。
文/長田杏奈

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