自分の「好き」を追求できる趣味も人生の喜びには大事なファクター。今回は、「好き」を仕事につなげたり、「趣味」と「仕事」を上手にかけあわせた女性のライフスタイルを紹介。カレーとのふとした出会いをきっかけに、本格的に社会貢献をはじめたという樋口実沙さん。カレーを通じて社会の様々な問題に向き合う彼女の活動を取材しました。
Earth Company マーケティング・マネージャー
樋口実沙さん
36歳。広島市立大学卒業後、kate spade new yorkでマーケティングに携わったのち、Earth Companyにマーケティング職で入職。2021年より並行して日本サステイナブル・レストラン協会でもマーケを担当。
カレーに夢中!
Q.カレーに出会ったきっかけは?
A. もともとカレー好きでもなんでもなかったけれど、偶然『インド即興料理旅行 チャローインディア』という紀行本の第1号を手にしたのがきっかけ。2015年に実際に自分もインドを訪れ、その食文化に惹かれました。
カレーを通して自然に触れる大切さを思い出しました
長谷川さんの庭で育てているハーブを摘みながら、スパイスについて学ぶ樋口さん
Q.カレーの魅力って?
A. カレーを追いかけてのインド旅行が発展途上国を訪れた最初の経験だったのですが、ミャンマー、パキスタン、ネパール、バングラディシュなど、カレーを通じて様々な国の個性を身近に感じられるようになりました。
Q.仕事とのバランスは?
A. カレーを通して、世界の環境や紛争などの現状やサステナビリティの問題を知り、Earth Companyへの転職や日本サステイナブル・レストラン協会へのジョインにつながったので、カレーが仕事への道を示してくれたよう!
カレー仲間の紹介で知り合い、イベントにも登壇してもらった「WE ARE THE FARM(赤坂店)」。日本サステイナブル・レストラン協会にも加盟。全部つながっている
カレーを通して人と自然と世界のつながりを多くの人に伝えたい
カレーを通して、社会課題に自分なりの貢献をしていきたい!
取材は、日本に帰化したロヒンギャの長谷川留理華さん(写真・左)のお宅でロヒンギャ料理を習いながら行った。ロヒンギャはミャンマー軍の不当な弾圧で非常に多くの人が難民になり、苦しい生活を送っている。樋口さんはEarth Companyでのロヒンギャの女性人権活動家、ウェイウェイ・ヌーさんの支援がきっかけで彼女と知り合った。
樋口さんにとってカレー活動は、こんなふうに、カレーを通して人や文化と出会うことが醍醐味。kate spade new york在職中は西日本豪雨のときにイベントでカレーを作り、被災地である故郷広島への寄付に充てるなどしていた。「カレーとの出会いが人生を豊かにしてくれたので、カレーで社会貢献しようと決めたんです」。西日本豪雨をきっかけに気候変動に意識が向き、このままではいけないとEarth Companyに転職。個人としてのカレー活動も続けるうち、今度は食のサステナビリティの観点にも目が向くようになった。「容器の問題、食材の調達、フェアトレードなどすべてが一筋縄ではいかないことに気づきました」。そんなとき出会ったのが日本サステイナブル・レストラン協会。日本では立ち上がったばかりのこの組織にマーケティングの視点が必要だと気づき、副業としてジョイン。「主に平日はEarth Companyと日本サステイナブル・レストラン協会の仕事を半分ずつ、そして土日にカレー活動をしています」。カレー活動はイベント中心のため今は少ないが、取材や執筆の依頼を受けたり、カレーを提供する店にコンサルティングを行ったりしている。「カレーとの出会いはたまたまですが、カレーには文化、人、風土、社会、あらゆるものが詰まっています。これからもカレーを通してそれらの問題にアクションしていきたいですね」
夢中は…『人や文化との出会いを生み、社会に還元させてくれる』
撮影/山下みどり 取材・原文/吉野ユリ子 ※BAILA2022年1月号掲載