自分の「好き」を追求できる趣味も人生の喜びには大事なファクター。今回は、「好き」を仕事につなげたり、「趣味」と「仕事」を上手にかけあわせた女性のライフスタイルを紹介。インクルーシブファッションブランド「SOLIT」を運営し、サステナブルな洋服づくりに勤しむ田中美咲さん。様々な理由でファッションが制限されていた人々から喜びの声が届く毎日にやりがいを感じているそう。
SOLIT株式会社 代表取締役
田中美咲さん
33歳。サイバーエージェント、防災ガール代表理事を経て、インクルーシブファッションブランド「SOLIT」CEO。社会課題に特化した人材育成・企画会社「morning after cutting my hair,inc」代表取締役も務める。
サステナビリティに夢中!
Q.サステナビリティに出会ったのは?
A. 大学3年の終わりに東日本大震災を経験。自分に何ができるかを考え、IT企業に就職後もいてもたってもいられず、福島県に移住。復興支援に従事し、それ以降様々な社会課題の現場に出向くようになった。
これがオールインクルーシブファッション「SOLIT」!
「SOLIT」の商品。パーツごとに最大12サイズ展開なので、四肢の長さや動きに強い特徴のある人にもフィットする
Q.サステナビリティの魅力って?
A. 自分が差し出した手が誰かの人生をぐわっと変え、人が喜ぶ瞬間に立ち会える。人生に一度か二度あればいいようなそんな素晴らしい体験を毎日のように起こせる。誰かの幸せがそのまま自分の幸せにつながっています。
2019年から2年間、社会貢献のための倫理や思想をもう一度見つめ直すため大学院へ。そのときの発表の様子
Q.仕事とのバランスは?
A. 職業かそうでないかという境目はほぼなくなっていて、オンオフの切り替えもなく、四六時中仕事のことを考えています。たとえば動物園に行っても体の動きと服のことなど学びや発見があり、仕事に生きます。
着るために我慢するのでなく着ることで自由になれる、そんな力のある服を届けたい
課題も喜びもある「ファッション」を通して、誰かの力になりたい!
「どうすればみんなが幸せになれるんだろう」。自分が最も効果的にそんな課題に対処する方法は何か──そう考えた田中さんは“環境・人権における課題が多いファッション業界で、多様な人も地球環境も考慮された製品を作ろう”と2020年秋にSOLITを立ち上げた。
東日本大震災を機に社会貢献活動を開始。7年間「防災ガール」代表理事を務めたあと、社会課題解決に特化したPR・企画会社運営とともに、大学院に通い、リベラルアーツを学んだ。その先にたどり着いたのがこのSOLIT。
「従来ファッションは生産や廃棄における環境と人権負荷、信仰や障がい、ジェンダーにおける制限など、多くの課題を抱えていました。一方でファッションは勇気やワクワクも与えてくれます。それらの長所短所を形にしようと思ったのが、立ち上げの動機です」
スタート時はコロナ禍。障がいのある人には免疫力の弱い人も多く、試着やヒアリングのための面会が難しくてニーズを拾うのに難航したが、なんとかリリースに至った。「部位ごとにサイズを変えられること、マグネットか通常ボタンか、ジャケットの袖の内側にリブを入れるか、背面をラグランにするか、ウエストをジッパーにするかなど選択できるようにしています」
月に3〜4回は全国へ試着会やポップアップイベントなどに出かける。「ジャケットやシャツを着るのが夢だった、と言ってくれる方や、娘の結婚式に着ていけると喜んでくださった全身まひの男性も。こんなに嬉しいことはありません」。継続するため、信念と経済性と社会性のバランスには日々悩むという。「正解はないし、価値観の押しつけもしたくない。でも誰かの喜ぶ姿を見るために挑戦していきたいと思います」
夢中は…『誰かの人生が変化する瞬間に毎日立ち会わせてくれる』
撮影/山下みどり 取材・原文/吉野ユリ子 ※BAILA2022年1月号掲載