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【働く女性のヒット商品ストーリーまとめ】バイラ世代のあの人の仕事が社会を前に進めてる!

今まで世の中になかった新しいものを生み出すためには、相応の覚悟と行動力が必要に。「こんなものが欲しかった!」。思わずそう声を上げたくなるヒット商品の数々は、実はバイラ世代の女性たちが多くの壁や苦悩を乗り越えた末に生み出したものでした。それぞれの分野はまったく違うけれど、根底にあるのは「世の中をよくしたい」という共通の思い。前向きな彼女たちの生き方を通して、働くすべての女性たちにエールを届けます!

目次

  1. 1.新体験の応援購入サービス「Makuake」が生まれた理由とは?
  2. 2.お菓子メーカーのプライドをかけた「プライドポテト」、成功の理由とは?
  3. 3.糖質ゼロとおいしさを両立!サントリービールの新商品ができるまで
  4. 4.女性がよりよく生きるために。吸水ショーツ「Nagi」誕生に込められた想いとは?
  5. 5.ザ・ノース・フェイスのユニセックスなマタニティウェアが生まれるまで
  6. 6.セルフケアの大切さを知ってほしい。「WRAY」のユニークな取り組みとは?
  7. 7.「サボリーノ シートマスク」の開発者3人に聞く、チームワークを最高レベルに高めるコツとは?

1.新体験の応援購入サービス「Makuake」が生まれた理由とは?

株式会社マクアケ 坊垣佳奈さん(共同創業者・取締役 38歳)

同志社大学卒業後、2006年に新卒でサイバーエージェント入社。ゲーム子会社などを経て、2013年にマクアケの立ち上げに参画。講演活動や地方創生にも尽力。

株式会社マクアケ 坊垣佳奈さん(共同創業者・取締役 38歳)

アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」
あっと驚く近未来のプロダクトや新しい体験の応援購入サービス。作り手の想いや製作の背景を知り、共感した上で購入することができる。「ウィンドーショッピングでの出会いのように、『あったら便利』と思えるものにたくさん出会えます」

Makuake ロゴ

インターネットの力を使って、アナログの世界をよくしたかった

日本には面白い産業がたくさんある

今でこそクラウドファンディングサービスはたくさん世の中にあるけれど、「Makuake」の最大の魅力は“応援購入”というわかりやすい言葉を打ち出したこと。

「日本人の多くは寄付サイトというイメージを持っていますし、ファンディングという言葉がつくことによって金融業界からすると資金調達というイメージも強い。でもどれも実態と違うんです。言葉だけが独り歩きして、それぞれが抱くイメージが違うことが大きな壁でした。そこを打破するために、2019年の東証マザーズ上場のタイミングで“応援購入”というオリジナルの言葉を打ち出し、オリジナルの市場を作りました

共同経営者として「Makuake」を設立したのは今から8年前。20代から広告会社やゲーム会社の経営者として才覚を発揮し、IT業界の真っただ中にいた坊垣さん。「クラウドファンディングの業態を使って新規事業を」という上司からのミッションを受けて考えたのは、意外にも「アナログの世界をよくしたい」ということだった。

「ITの世界はオンラインだけで完結する事業が多いのですが、広告をご提案する企業やものづくりをしているメーカーのリテラシーはそれほど高くない。地方に行くとなおさらでした。日本はもともと職人気質な方が多く、各分野を探求する力は強いですし、それぞれの土地で面白い産業がたくさん存在している。一方で、廃れつつある産業があることも事実なので、インターネットの力を使って技術や伝統といったアナログなものを広げていきたいと思いました」 

風通しのよさの秘訣カルチャーにあり

現在、「Makuake」の社員の男女比はほぼ半々。管理職や常勤経営陣の女性比率が半数を占める企業は、上場企業では珍しい。意思決定の場に坊垣さんがいることが大きく影響していて、「採用の段階から男女両方の目でフラットに進めるようにしています」という。 


「新しく会社に入ってきた方から『風通しがいい』と言われることがあるんです。たとえば生理痛ですごく体調が悪いときに『休ませてください』と言えたり、ライフステージが変わって『妊活のために病院通いが増えます』と言えるかどうかは、実は空気が関係している。制度やルールがあっても使いやすい空気がないと意味がないので、コミュニケーションが円滑であることが大前提です。そのために、社内ではカルチャーづくりに力を入れています」
 

成果主義のイメージが強いIT業界ながら、社員同士の横のつながりは強く、やはりどこかアナログ。 


「リモートで仕事をするようになってからも、毎朝10時にオンラインで朝会をしています。毎週司会者が代わるのですが、木曜日にはその人が個人的にめちゃくちゃ詳しいことを発表する時間を設けています。会社の中でゆるっとできるようにカフェを作ってバリスタに常駐してもらっていますし、部活動も推進しています。ビール部やワイン部、アニメ部やアウトドア部など25ほどあって、私は着物部と日本酒部に所属しています。『女性だから』『年下だから』といった区別を超えた差別は、こういう空気の中では生まれづらい。これからも、風通しのいい空気を醸成していきたいと思います」

ヒットの裏側を深掘り

あの日あの人と…ヒットにつながるコミュニケーション
いつ:打ち合わせの場で
誰と:お客さまと
何を:オンラインでの打ち合わせだけでなく、大阪、福岡、名古屋、広島と全国に支社があるので、担当者が実際にお客さまと顔を合わせて丁寧にサポートしています。Gメールで“全返信”ができない方にやり方を教えたことも(笑)。お互い、得意なことが違うだけととらえています

名場面PLAYBACK
想像力の重要性に気づいた
これは20代の頃、別会社でたくさんの部下ができたときに実感したこと。同じ事柄でも見る人の角度によってとらえ方が違うので、相手に寄り添う想像力はすごく重要視しています

プライベートでは
今年の4月に結婚しました
お互いの出張の予定に合わせ、前乗りして旅行をすることも。旅先にはウェアを持っていって朝にランニングをしています。その地域のものを食べたりする趣味が、仕事につながったりも

Q.仕事で大切にしていることは?

1.誠実さ 2.想像力 3.行動力
物事は基本的に、自分さえいいという発想では成果が出ないもの。お互いが気持ちよくWin-Winな状態で進められる条件は何かを、誠実に探るようにしています。もし部下が噓をついたりごまかしたりしたら見逃さず、めちゃくちゃ怒ります(笑)。まずは行動してやってみることも大切。戦略を練っている時間がもったいないし、やってみないとわからないことも多いので、行動してからチューニングするように

株式会社マクアケ 坊垣佳奈さんのヒット商品ストーリーを

2.お菓子メーカーのプライドをかけた「プライドポテト」、成功の理由とは?

株式会社 湖池屋 野間和香奈さん(マーケティング本部  マーケティング部 部長 39歳)

2004年に湖池屋入社。2017年から社運をかけた「KOIKEYA PRIDE POTATO」のマーケティングを担当。現在は湖池屋の商品全てのブランドの管理・広告宣伝を担当。

株式会社 湖池屋 野間和香奈さん(マーケティング本部  マーケティング部 部長 39歳)

湖池屋プライドポテト
国産の中でもうまみの濃いじゃがいもを選定し、温度を変えながら素材本来のうまみや甘みを閉じ込めるなど、料理を作るように丁寧に仕上げたポテトチップス。現在「神のり塩」や食塩を一切使用していない「芋まるごと」ほか5味をラインナップ

湖池屋 プライドポテト

商品の開発はもちろん、お菓子メーカーとしてのプライドを取り戻す社内ブランディングも手がけました

創業時の思いを込めたブランドブックを製作

湖池屋を代表する新たなポテトチップスとして2017年に発売された「KOIKEYA PRIDE POTATO」は、2020年2月に行ったリニューアルが大きな反響を呼び、発売約4カ月で売上20億円を突破するヒットを記録。マーケティング部 部長の野間さんは、発売当初から指揮を執ってきた立役者だ。

「2017年は、会社自体もリブランディングをした年でした。実はポテトチップス市場は平均売価が下がり続けていて、過去10年で10円以上下落。賃金も生産に関わるコストも上がっているなか、売価が下がり続ければ私たちの利益は圧迫されていき、会社としての体力がなくなっていく。そこで、能動的に手に取っていただくために価格で勝負するのではなく、価値を高めて勝負していこうと舵を切ったんです」  

そこで野間さんがまず着手したのが、社内ブランディング。ポテトチップスを日本で初めて量産化した企業としてのプライドを取り戻すべく、創業者の思いや新CI、新たなブランドに込めた姿勢を共有するブランドブックを作った。

「商品開発をする私たちだけでなく、当時踏ん張りきれなくなっていたフロントにいる営業メンバーを鼓舞する意味もありました。“新しいほうへ、イケイケ! 難しいほうへ、イケイケ! 面白いほうへ、イケイケ!”というスローガンのもと、みんなで自信を持ってチャレンジしようというメッセージを伝えたかったんです」  

商品を開発する上で前提となるのは、「社会課題を解決していくこと」。どんな商品が社会に貢献できるかを探るため、世の中の空気をキャッチするタウンウォッチを欠かさない。

「SNSはもちろんチェックしますが、それは家や会社でできること。電車に乗るときは絶対にスマホを触りません。皆さんの洋服のカラーや髪型ひとつとっても、気持ちをくみ取るヒントになりますからね。雑誌も対象年齢問わず幅広くチェックしますし、ヒットしている映画や音楽についても、なぜ受け入れられているのか自分なりに研究するようにしています。コンセプトはいきなり生まれるものではないので、誰かと接したり、いろんな人の気持ちを察しながら考えるようにしています」 

困難を乗り越えすぎて今はストレスが何もない

これまで直面してきた壁は「たくさんありすぎます」と快活に笑う野間さん。「何度もトラブルや困難を乗り越えてきましたし、“楽しむ”というモチベーションがベースにあるから、今はストレスがありません」と断言する姿はパワフル。ついていきたいと思わせる吸引力を持っている。

気をつけているのは経験泥棒をしないこと。私が手を出しすぎることでメンバーの経験を奪うことは避けたいので、年齢や役割問わずフラットに接するようにしています。『これをやって』と指示されるより、自分がやりたいと思って行動するほうが断然エネルギーがわくじゃないですか。メンバーはそれぞれが『こうしたらいいんじゃないか』という仮説を持っているので、私はそれをフォローをしたり、違うアプローチを提案したりしながらベストな回答を決めるだけ。リーダーらしくはないかもしれないけれど、そのほうがいいものが生まれると信じています」

ヒットの裏側を深掘り

あの日あの人と…ヒットにつながるコミュニケーション
いつ:いつ、何時も!
誰と:ブランドごとのメンバーと
何を:LINEグループを作って「こんなことが起きてるよ」と気になったニュースなどを常に共有するようにしています。するとメンバーからも「だったらこんなことができそうですね」「僕はこのニュースを拾ってきました」と広がっていくので、密にコミュニケーションがとれています

名場面PLAYBACK
2020年にプライドポテトの味を4品に集約
もともと営業にいた女性メンバーから、商品数が多くて売り切れないのではという意見があり、6品から4品にしぼることを社長に提案。反対されましたがチームで粘り強く説得しました

プライベートでは
小学3年生の男の子のママです
欲張りな性格なので子どもとの時間を取れるように必死でやりくり。経験泥棒をしないのは息子に対しても同じで、彼の意見を聞きながら、決めつけないことを心がけてます

Q.仕事で大切にしていることは?

1.情熱 2.誠実 3.感謝
特に心がけているのは「ありがとう」という言葉をしっかり口に出すこと。そうすることで自分の心も救われるし、お互い気持ちがよくなると思うので。人はどうしても見捨てられたと思う瞬間にやる気もなくすし、関心を持たれていないと思った瞬間に自分の存在価値を疑ってしまうもの。仕事をする社内外のメンバーに対しては常に好意を寄せていますし、そのことをしっかりと表現していきたいと思っています

株式会社 湖池屋 野間和香奈さんのヒット商品ストーリーを詳しくチェックする

3.糖質ゼロとおいしさを両立!サントリービールの新商品ができるまで

サントリービール株式会社 稲垣亜梨沙さん(マーケティング本部 イノベーション部 34歳)

2010年にサントリー入社。ノンアルコール飲料や新ジャンルなどの商品開発やマーケティングを経験後、「パーフェクトサントリービール」のブランドマネージャーに。

サントリービール株式会社 稲垣亜梨沙さん(マーケティング本部 イノベーション部 34歳)

パーフェクトサントリービール
ビールど真ん中のおいしさと糖質ゼロを両立させ、2021年4月にデビュー。糖質がゼロになるまでじっくり醗酵させながらおいしさを生み出す独自の醗酵技術により、機能性だけでなくアルコール5.5%の力強い飲みごたえを実現した

パーフェクト サントリービール

飲料メーカーに勤めるお酒好きとして、ビール開発に携われることは誇りの持てることだった

機能性とおいしさの両立が難しかった

松嶋菜々子さんのCMでおなじみの「パーフェクトサントリービール」は、糖質ゼロとは思えない飲みごたえが大人気。発売3カ月で年間販売計画の半分を突破する売り上げを記録した。二人のお子さんをもつ稲垣さんは、産休明けすぐにブランドマネージャーに着任し、各部署の専門家とチームを組んで開発を進めた。

「中心メンバーは私を含め、20〜30代の醸造家とデザイナーの数名。開発が始まったのは、醸造家が『いちばん喜んでいただけるビールとは?』と考えたことがきっかけでした。ビールは一日の終わりに開放的な気持ちにしてくれるものだと思っていますが、『体のことを考えると糖質が気になる……』というモヤモヤは、そんな開放感を邪魔してしまいます。そこで、糖質ゼロビールに着目したんです」  

そもそもビールは、原材料のうち麦芽の比率が50%以上であることが酒税法で定められているため、麦芽が多いと糖質のもとになるでんぷんも多くなる。早いものでは1〜2年の開発期間で発売する商品もあるなか、異例の5年という歳月が、チームのこだわりを表している。

「実は糖質をゼロにするだけであれば、すごく頑張ればできたんです。でもそれをさらにおいしくすることがとても難しく、中味開発に数年かかりました。おかげさまで目隠しで飲んでいただいても、『普通のビールと変わらない』『むしろこっちのほうがおいしい』という嬉しい声を多くいただいています」  

糖質ゼロをうたう商品がたくさん存在するなか、チームでブレずに共有したのは「あくまでも本格ビールとして闘っていく」という想い。

「機能系商品のパッケージは多くが白や緑、水色などの爽やかな世界観。開発の段階ではそちらの方向性も検討したのですが、先に完成していた中味が糖質のあるビールと比べても遜色ないものができたという自信を持っていましたので、王道のビールとしてのポジションをブラさず、品質感や品格を感じさせるゴールドと紺のパッケージを採用しました」

娘からの言葉が仕事への大きな活力になった

もともとお酒が大好きだったことからサントリーに入社したという稲垣さん。「飲料メーカーにいるお酒好きとしては、ビールの開発に携われることは誇りが持てることだった」と振り返る。ただし、子育てと仕事との両立は、「大変なことは数えきれないほど……」と苦笑いを浮かべる。

「上司や同僚、家族の助けを借りながらなんとか乗り越えました。今はほぼ在宅勤務をしているのですが、5歳の娘が私の仕事のノートに『ママ、おいしいビール、がんばってつくりなさーい!』と書いていたことがあったんです。それを見た瞬間は泣きそうになりましたね。一度困ったのは、店頭で流れている松嶋菜々子さんのCMを見て娘が『あ、ママ!』と叫んだこと。周りの方からはかなり不思議な目で見られました(笑)」  

納得のいく商品開発ができたあとも、ブランドマネージャーの仕事は中長期的に続いていく。

「一人でも多くのビール好きの方に手に取っていただけるよう、これからも広告や販促活動を頑張っていきたいです。そして同時に、子どもたちからはカッコイイと思ってもらえる母親になることが目標です」

ヒットの裏側を深掘り

あの日あの人と…ヒットにつながるコミュニケーション
いつ:パッケージのデザイン時
誰と:各部署のプロフェッショナル
何を:機能系の爽やかな方向性のパッケージでいくか、ビールらしさを追求するかについては様々な意見が出ましたが、板挟みになってただの伝書鳩にならないよう、お客さまや市場を見て「商品のことを誰よりも深く考えているのは自分だ」という強い意思を持つことを心がけました

名場面PLAYBACK
ネーミングの候補はまるで小宇宙
名前が決まるまでは、ネーミングの案ごとのデザインも数えきれないほどありまして。最終的にチームのみんなが「これにしよう!」と同じ方向を向けたときは「売れる」と感じました

プライベートでは
平日も休日もとにかく全力!
5歳の娘と2歳の息子がいるのですが、平日はゆっくり子どもとふれあう時間が取れなくて。その代わり休日に思い切り子どもと遊ぶようにしていたので、体力的にヘトヘトでした(笑)

Q.仕事で大切にしていることは?

1.敬意を持つ 2.誰よりも商品のことを考え抜く 3.厳しい局面から目を背けない
醸造家、デザイナー、宣伝、営業など、すべての人がその道のプロフェッショナル。相手への敬意は忘れないように心がけました。商品を発売したあとは、責任者として数字を追いかけなければいけないですし、お客さまの声にも向き合わなければいけません。厳しい局面はたくさんありますが、そういったことから目を背けずに、常に課題を探して「こうすればもっとよくなる」という方向性を見つけ続けたいと思います

サントリービール株式会社 稲垣亜梨沙さんのヒット商品ストーリーを詳しくチェックする

4.女性がよりよく生きるために。吸水ショーツ「Nagi」誕生に込められた想いとは?

BLAST Inc. 石井リナさん(CEO 31歳)

IT系広告代理店でキャリアをスタートし2018年にBLAST Inc.を設立。女性向けエンパワーメントメディア「BLAST」を立ち上げ2020年にフェムテックブランド「Nagi」をローンチ。

BLAST Inc. 石井リナさん(CEO 31歳)

Nagi 吸水ショーツ
開発期間に1年半をかけ、150人の女性にヒアリングして作った吸水ショーツ。たった30秒で97.2%の水分を吸収し、1枚でナプキン6枚分の吸水量を実現(スタンダード)。制菌加工によりイヤなにおいを軽減するなど細部までこだわっている

「Nagi」に関する記事はこちら

パーフェクト サントリービール

日本の女性だけでなく世界の女性をエンパワーメントしたい

3年以内のグローバル展開を見据えています

着たい服が着られない、座って立ち上がるのが怖い、肌がかぶれる、においが気になる……。毎月訪れる憂うつな生理と快適につきあい、「女性たちが凪のようにいつでも穏やかに暮らせますように」という思いで作られたのが、2020年5月に発売した「Nagi」の吸水ショーツ。

「販売開始1週間で2000枚が完売。そのタイミングで約140媒体に取り上げていただきました。『もう紙のナプキンには戻れない』という意見をいただき嬉しかったです」

IT系の広告代理店でSNSマーケティングに従事していた石井さんが、日本の女性をエンパワーメントするメディア「BLAST」を立ち上げたのは2018年のこと。日本のジェンダーギャップ指数の低さに衝撃を受けたことがきっかけだった。

「2016年頃は、海外のSNSでダイバーシティやフェミニズムが盛んに叫ばれた時期でした。その潮流を追う中で、先進国だと思い込んできた日本のジェンダーギャップ指数の低さに驚いたんです。構造的差別の中にいることや、知らずしらずのうちに抑圧されている現状に気づかない私のような女性はほかにもいるはずだと思い、まずはメディアを立ち上げました。日本の女性をエンパワーメントすることは、情報だけではなくプロダクトでもできると考えていたので、物理的にサポートする『Nagi』をローンチしました」  

女性が置かれている構造的な差別に気づいたことは、同時に痛みを伴うことでもあった。

「新卒で入った会社の経営層に男性しかいなかったことや、ロールモデルがいないと感じていたのは女性が出産後も満足に働ける環境が整っていなかったからなど、いろんなことに納得がいきました。そこに気づいたからこそ、傷つきやすくなったり絶望したり、悲しくなることも多くなった。フェミニズムに出会うと不可逆的で、知らなかった頃には戻れないんです」  

石井さんのもとには、同じく社会への違和感を覚える女性たちが駆け込み寺のように採用面接に来ているという。

「社会はトップダウンで政治やルールが変わるパターンと、市民が気づき声を上げボトムアップで変えるパターンの二つがある。女性一人ひとりが気づき声を上げ権利を勝ち得ていけるよう私も活動していきたいです」

見据えるのは、世界の女性をもエンパワーメントすること。

「真摯に作っている私たちのショーツは非常に高いクオリティがあると自負しています。直近3年以内にはグローバル展開もしていく予定です」

Nagi  吸水ショーツのパッケージ

テンションが上がるおしゃれなパッケージデザインにもこだわりが

石井リナさん

「Nagi」をやるようになって「自然とグリーンのものを選ぶようになった」と笑う石井さん

Nagi  吸水ショーツ

社会問題を是正するアイデンティティがある会社として、生理の貧困や環境問題にも配慮。学割や環境団体への寄付企画も行っている

Q.仕事で大切にしていることは?

1.ミッションを忠実に 2.スピード感のある事業成長を目指す 3.自分の体と心を大切にする
女性をエンパワーメントするというミッションから始まった会社なので、私が仕事をする上でそこから外れた事業はやらない。またそうしたコミュニケーションをとらないよう心がけています。加えてスタートアップの経済圏にいるので、できるだけ早く、遠くに行ける事業成長はどうすれば達成できるか、常に考えています。あとはやっぱり体と心が資本なので、体調が悪いときは率先して会社を休むことも

BLAST Inc. 石井リナさんのヒット商品ストーリーを詳しくチェックする

5.ザ・ノース・フェイスのユニセックスなマタニティウェアが生まれるまで

株式会社ゴールドウイン 矢野真知子さん(ザ・ノース・フェイス事業一部  キッズグループMD 30歳)

入社後3年は営業で経験を積み、その後産休へ。復帰後に社内公募の試験に合格し、キッズウェアの企画部署に異動。半年後の2018年1月に、新しいマタニティ部門の立ち上げを命じられる。

株式会社ゴールドウイン 矢野真知子さん(ザ・ノース・フェイス事業一部  キッズグループMD 30歳)

THE NORTH FACEマタニティダウンコート
妊娠中も産後も着用できる画期的なデザイン。防風性・撥水性を備えたGORE-TEX INFINIUM™を表地に使用するなど、アウトドアアイテム開発で培ったザ・ノース・フェイスならではの機能性と、ママである矢野さんの細やかなアイディアを取り入れた

妊娠・出産・育児に奮闘する女性たちを応援したかった

妊娠出産、子育ては想像以上に大変だった

アウトドアブランドならではの機能性はもちろん、産後も子どもと一緒に着用できる設計が大きな反響を呼んでいる「ザ・ノース・フェイス」のマタニティライン。2019年秋冬に第1弾がデビューすると、2020年秋冬には前年の販売金額の約300%という結果をたたき出した。コンセプトワークを一手に担っているのは、双子のママである矢野さん。企画の部署に異動してからわずか半年後、当時「唯一の妊娠出産経験者」ということで立ち上げを命じられた。

実際に自分が妊娠してみると、マタニティウェアにはリボンがついているものが多かったりして、着たいと思えるデザインのものがないと気づいたんです。さらに私自身、子どもが双子だったこともあり、想像以上に妊娠や出産後の子育ては大変でした。『ザ・ノース・フェイス』は8‌000m級の登山に対応するギアやウェアを作っているので、機能性で女性たちの負担を軽減し、挑戦する女性を応援できるのではないかと考えたんです。妊娠中の限られた期間だけでなく、産後に使えることも大事なコンセプトでした。当初は自分にできるか精神的な不安もありましたが、提案したコンセプトを『素晴らしい』と上司が認めてくれたことが、大きな自信になりましたね」  

とはいえ、デザイナーもパタンナーもマタニティウェアを手がけるのは初めて。サイズの設定基準を決めるために妊婦のお腹の出方を研究した論文を読み込んだりと、すべて一から手探りで進めていったという。「マタニティウェアの顔となるダウンコートは、ベビーキャリアカバーをコートのフロントに連結して子どもを抱っこしたまま着られるようになっています。富山に自社のラボがあるのですが、気温や風の強さを変えて実験をし、衣服内の暖かさが保たれるか実証しました。カバーは取り外してベビーカーに装着することもできるのですが、座高の低いベビーカーでも引きずらないよう丈を調節できるようにしています。仕様設計が本当に細かいので、パタンナーたちと一日がかりでサンプルを床に広げ頭を悩ませたこともありました」  

2021年の春夏には、マタニティライン初となる男女兼用で使えるユニセックスのレインコートを発表。「妊娠出産は女性特有のものですが、子育ては女性だけのものではないですからね。立ち上げ当初から、世の中に女性のアイテムばかりなことが気になっていたんです。そういったメッセージは、これからも商品を通して社会に訴えていきたいです」

マタニティラインから初めてリリースしたユニセックスのレインコート

マタニティラインから初めてリリースしたユニセックスのレインコート。抱っこにもおんぶにも対応している

THE NORTH FACEマタニティダウンコート

シリーズの顔となるダウンコートは2021秋冬にアップデート。ママの首もとを保温できるような仕様に

Nagi  吸水ショーツ

ベビーキャリアカバーを取り外せば産後も使える。カバーは単体で抱っこひもやベビーカーにつけることも可能

Q.仕事で大切にしていることは?

1.“Never Stop Exploring”の精神 2.周囲の人への敬意 3.家族との時間を大切に
“Never Stop Exploring(飽くなき探求)”というブランドのタグラインが好きなんです。今後もよりよい企画を目指し、常に挑戦をしていきたいです。会議では意見が対立することもありますが、どんな意見も敬意を持って聞くことで、自分にはない発想をもらえることも。また、どんなに仕事が楽しくても誰かの犠牲の上では長続きしません。子どもや家族との時間を大切にすることは自分に言い聞かせているルールです

株式会社ゴールドウイン 矢野真知子さんのヒット商品ストーリーを詳しくチェックする

6.セルフケアの大切さを知ってほしい。「WRAY」のユニークな取り組みとは?

株式会社WRAY 谷内侑希子さん(代表取締役 37歳)

大学卒業後、2007年にゴールドマン・サックス証券に入社。2012年に第1子を出産し、2年間海外在住。帰国後はコンサルティング会社、PR会社を経て2020年4月に「WRAY」を立ち上げた。

株式会社WRAY 谷内侑希子さん(代表取締役 37歳)

WRAY シークレットシルクソックス
靴を脱ぐ場面でも恥ずかしくない、外から見えない5本指靴下。大人気で欠品したことも。吸湿性・通気性・保温性に優れたシルク製で蒸れにくく、汗による足先の冷えやにおいのトラブルも防ぐ。心地いいフィット感にも徹底的にこだわった

「WRAY」をきっかけに、セルフケアの大切さを知ってもらいたい

自分をケアしているという前向きな気持ちになってほしい

昼夜問わず働いていた20代前半のときに生理不順に直面。第2子出産後の30代半ばにはPMSが強くなるなど、ライフステージが変化し、自分の体の優先順位を下げたことをきっかけに、ダイレクトに悪影響が出るようになったという谷内さん。自分のようにホルモンバランスや体調のリズムに悩みを抱える女性たちの活躍をサポートするため、何かできないかと考えて立ち上げたのが「WRAY」。インナーケア、スキンケア、ライフスタイル、アパレルの4つのカテゴリーを展開している。

「心がけているのはどのカテゴリーもまんべんなく、偏らないようにすること。私が目指しているのは女性を360度多角的にサポートできるウェルネスライフスタイルブランドなので、日常生活のいろんな場所に、セルフケアのための『WRAY』のロゴが目につく状態を目指しています」  

取材中、谷内さんの口から何度も出たのが「きっかけ」というワード。キャリアや子育ての過程で自分の優先順位を下げてしまいがちな女性たちが、「WRAY」をきっかけに自分を見つめ直し、自分のために行動を起こしているという前向きな気持ちになってほしいと熱く語る。

「特に目指しているのが婦人科に定期的に足を運んでもらうこと。うちではセルフケアアイテムを扱っていますが、それだけではどうにもできないこともあります。婦人科に通えばPMSを軽減できる可能性がありますし、ピルにもいろんな種類がある。皮膚科を併設していたりオンライン診療をしている病院もあるので、『ちょっとおかしいな?』と感じたときに歯医者さんと同じように通う習慣をつけてほしいと願っています」  

WRAYは子どもを持つママが多い会社のため、社員には週1回1時間、勤務中に自分を物理的にケアできる時間を設けているのも魅力的。

「エステでもマッサージでもジム通いでもいい。自分の体をよくすることを自分たちが知らなければいけないので、これも仕事のうちだと思っています。インスタグラムではお客さまからご意見をお聞きする『INSIDE WRAY』という承認制コミュニティをつくっているのですが、商品開発に興味がある方にメンバーとして加わってもらい、新たに3商品の開発も進行中。育児などで今就労していない方や副業に興味がある方にも参加いただいています。私自身、第1子出産後に2年間専業主婦を経験したこともあり、ブランドのサブテーマとして女性のキャリアも積極的に支援していきたいです」

シーンや気分に合わせて選べるオーガニックハーブティー

シーンや気分に合わせて選べるオーガニックハーブティー

谷内侑希子さん

冷えやすいお腹や腰、お尻をしっかりカバーでき、服に響かない超薄手腹巻きのシルクウォーマー。「INSIDE WRAY」から出た意見を受け、股上を2㎝長く改良しおへそが隠れる丈に

ファッションに合わせやすいリブ仕様のシークレット5本指靴下

ファッションに合わせやすいリブ仕様のシークレット5本指靴下

Q.仕事で大切にしていることは?

1.立ち止まり、考える時間を確保 2.会社のポリシーを指さし確認 3.周りの人の思いに耳を傾ける
物事を次々決定するスピード感も大切ですが、今後の方向性や採用に関することなど、じっくり考えたほうがいいなと感じたらあえてスケジュールに組み込むようにしています。質のいいものづくりをすることやお客さまの声を聞くことなど、会社として大切にしているポリシーを守ることは必須条件。チームで仕事をする上では、考えを一方的に伝えるのではなく「みんなはどう思う?」と聞くよう心がけています

株式会社WRAY 谷内侑希子さんのヒット商品ストーリーを詳しくチェックする

7.「サボリーノ シートマスク」の開発者3人に聞く、チームワークを最高レベルに高めるコツとは?

BCLカンパニー

御殿谷りえさん(左)(宣伝本部 宣伝部次長 PRマネージャー 39歳)

商品の宣伝企画を担当。現在は朝に夫婦で目ざまシートを愛用しているそうで、二人のお子さんたちもその姿に驚かなくなったそう。

大小原碧里さん(中)(国内事業部 マーケティング部 ブランド戦略室室長 35歳)

転職した年にリーダーに抜擢され、同年に結婚。ほか二人も同時期に結婚したことから、「開発チームは結婚する」というジンクスが。

齊藤久美子さん(右)(企画本部 企画2部次長兼 企画本部企画2部1課課長 39歳)

商品の原案やコンセプト、価格やバルクなどを担当。ティッシュのようにするりと出てくる取り出しやすい設計は齊藤さんのアイディア。

御殿谷りえさん(左)、大小原碧里さん(中)、齊藤久美子さん(右)

サボリーノ シートマスク
朝60秒張るだけで洗顔、スキンケア、保湿までが完了する「目ざまシート」。2015年4月の発売以来累計5億枚(2020年12月時点)を超える大ヒットを記録。2019年にはエイジングケア成分を追加した大人向け夜用マスクも販売をスタート

サボリーノ  シートマスク

縦割りの組織の中で、横の連携の重要性をアピールできた

数多くの失敗や社内の逆風も乗り越えてきた

「朝は1秒でも長く寝ていたい!」という切実な思いから生まれた「サボリーノ 目ざまシート」は、さかのぼること8年。2013年に「自分たちの欲しいものを作ってほしい」という社長直下のお題を受け、大小原さん、御殿谷さん、齊藤さんたちが招集された。部署間の交流がほとんどない縦割り組織だったものの、メンバーはすぐに意気投合。「大ちゃん」「齊藤ちん」「みどちゃん」と呼び合う、まるで友達同士のような関係を築いた。

齊藤 年代が同じだったことはもちろん、仕事に対してガッツを持って取り組むスタンスも一緒だったので、メンバーが共通する個性を持っていたことはラッキーでした。

大小原 当時は独身だったこともあり、メイクに対する自分の中の正解がそれぞれありましたし、そこに至るまでのステップに苦労をしていて。起きてからの手順をホワイトボードに書き出して、「ここが短縮できそう」と内容を詰めていきました。  

ただし、洗顔も化粧水も保湿下地も兼ねる朝用シートマスクというアイディアは、社内の逆風も強かった。

齊藤 洗顔料やステップ美容商品を出している会社なので、ほかの商品を否定してしまうことになるのではという意見がありました。それでも、「サボリーノ」はバラエティストアやドラッグストアで流通させる商品なので、売り場がかぶらないということでゴーサインをもらったんです。

大小原 さっぱりさせるためのメントールの強弱など、試作も通常の3倍ほど繰り返しました。

御殿谷 最初の頃はファンデーションも入れたよね。

齊藤 そうそう(笑)。シートからポタポタと肌色の液が落ちてきて……。

大小原 これは事故になるな、となってまた一から考え直したり。

齊藤 今なら試作する前に結果がわかりそうですが、ある意味、若さ故の行動力だったと思います(笑)。

齊藤久美子さん(左)、大小原碧里さん(中)、御殿谷りえさん(右)

部署を横断する連携が会社の文化になった

初めて部署を横断して仕事をするようになった彼女たちは、「仕事の話1割、無駄話9割だった」という密なコミュニケーションを経て、チーム戦の大きな可能性を感じることに。

大小原 もともとは予算がゼロだったので、自分たちのやりたいことを会議を使ってアピールしたり、社内の信用を得るためにそれぞれが得意な分野で連携しながら動きました。

御殿谷 「こことこういう組み方をすればいけるんじゃないか」など、本当に頭脳戦でしたね。

大小原 おかげさまで今は会社の売り上げの約4割が「サボリーノ」に。

齊藤 私たちが成功したことをきっかけに、部署間を横断するチーム企画もかなり増えましたし、文化として根づいている感覚はあります。

御殿谷 人と人との巡り合わせや業務への取り組み方で、ここまで会社が変わることを実感しましたし、すごく嬉しかったですね。

齊藤 サボる企画をとことん考えてきましたが、仕事に対しては私たち、かなりまじめだったと思います(笑)。

Q.女性チームで仕事をする上で大切にしていることは?

1.信頼をする
「相手のいいところを見つけ、この人と仕事がしたいという敬意や想いを日頃から意識しています。『この人と組めば絶対にいいものが生まれるし、成功できる!』と思える信頼感は、チームで仕事をする上でかなり重要だと思います」(御殿谷)

2.コミュニケーション
「部署が違うと月日の流れの感覚も微妙に違ってくるので、LINEグループでお互いの意見を共有したり、リアルタイムでコミュニケーションするように心がけました。当時は仕事終わりにチームで飲みに行くことも多かったです」(大小原)

3.自分ごと化する
「会議や打ち合わせでも、呼ばれているからただそこにいるだけという意識ではまったく意味がありません。『サボリーノ』チームは常に問題を自分ごととしてとらえて積極的に参加し、主体的に動けるようなチームだったと思います」(齊藤)

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撮影/目黒智子 取材・原文/松山 梢美 ※BAILA2021年12月号掲載

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