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  4. 【争わずに生きたい】精神科医のアドバイス…

【争わずに生きたい】精神科医のアドバイスからあるあるシチュエーション、小さな声の上げ方まで

できれば平和に過ごしたい。争いごとは苦手だし、不満を伝えて嫌われるのも怖い。我慢してすむならそれでいいと自分を抑えてしまうこともある。相手の気持ちや周囲を気づかうことはいいことだと思うのに、どうしてもやもやするんだろう? “言いたいことが言える世の中”に変わりつつある今、争わずに生きたい気持ちを大切にしながら“私”をすり減らさない、新しいコミュニケーションを模索します。

目次

  1. 1.読者アンケートで見えてきた“争わずに生きたい”マインドの中身
  2. 2.精神科医の先生にこの気持ちについて聞いてみた
  3. 3.こんなときどう返せばいい?~職場編~
  4. 4.こんなときどう返せばいい?~プライベート編~
  5. 5.野村由芽さん&長田杏奈さん対談
  6. 6.「声を上げる」のファーストステップ【知る】ための推薦図書

1.読者アンケートで見えてきた“争わずに生きたい”マインドの中身

□ 乱暴な言葉使いや威圧的な態度に引いてしまう
□ 怒ったり争ったりするのは非効率的だと思う
□ できれば誰にも嫌われたくない
□ 自分の意見を言うのと“言いたいように言う”のは別だと思う
□ 誰かを傷つけたり不快にさせたくない
□ 怒るのは苦手だ誰かが怒られている場にいるのも嫌だ
□ 何かを言うとき、言われた相手の気持ちを考えてしまう
□ 相手を嫌な気持ちにさせてまで自分の主張を通したいとは思わない

BAILA読者の92%が「争わずに生きたい」と感じている

BAILA読者の92%が 「争わずに生きたい」と感じている

読者アンケートによると、“できれば争わずに生きたい”という気持ちに共感する人が73%、どちらかといえば共感する人が19%という結果に。何か嫌なことがあっても自分の中にため込んでしまうという人も多数。
(2021年9月16~20日@BAILA会員77人が回答)

今、「自分の意見を主張する」「何かあったら声を上げる」ことができるように変わってきた社会の中で、周囲への配慮も大切にしながら自分のことも尊重し、健康的に“争わずに生きていく”道を見つけたい!

2.精神科医の先生にこの気持ちについて聞いてみた

“できれば争いたくない”は素晴らしい考え方。相手の顔色をうかがうのではなく、自分の心の平穏のために、争いを生まない方法を知るときっと楽になれるはず

水島広子先生

精神科医

水島広子先生


対人関係療法専門クリニック医院長。「対人関係療法」の日本における第一人者。『つい、「まわりに合わせすぎ」てしまう人へ:もっとスッキリ生きられるヒント』(三笠書房)、『私たちはなぜ「女」を面倒に思うのか──あるある女性の悩み』(自由国民社)など著書多数。

主張するときは非暴力コミュニケーションを心がければ争いにならない

「争いが起これば、どちらかあるいは両方が必ず傷つきます。争いたくないという気持ちを持つ人ばかりなら、戦争だってなくなるはず。まず、この特集のタイトルには“ダメではない、素晴らしいことです”とお答えしたいです」

そう勇気づけられる言葉をくださったのは、精神科医の水島先生。対人関係の専門家である先生に、争いを避けたいのに怒ってくる人と出会ってしまったときの対処法を伺うと――。

頭の中に自動翻訳機を作って、“怒っている=困っている”と認識を変えてみてください。たとえば、上司が怒っているときというのは、本当は“こういうふうにうまくいくはずだったのに”と、期待と現状のズレに困っているんですね。相手が怒っていると思うと怖いし、理不尽に感じてしまうかもしれませんが、困っていると思えば対応もできるはず。たとえば“不勉強で申し訳ありません。何をすればいいか教えてください”と、相手の期待を確認しズレを解消するという視点で発言すれば、相手の怒りも収まりやすくなるでしょう。また、怒りは相手の問題で、力不足を感じたり傷つく必要はありません

では、自分に言いたいことがあるときはどうするのがいい?カギになるのは“非暴力コミュニケーション”。

争いと主張は違うものだと分けて考えましょう相手を否定したり非難しない“非暴力コミュニケーション”で自分の意見を伝えれば、少なくともこちらから争いを持ちかけることにはなりません。意識するべきは、主語を相手ではなく自分にすること。最近広がってきている“Iアイメッセージ”というものですね。“あなたがそんなことをするから!”ではなく、“私が不安になるんだけど”というように、自分の気持ちを主体にして伝えるんです。そのときに大切なのは、相手を責めているように聞こえない言い方を選ぶこと。“私、ちょっと潔癖なところがあるから、片づいてないとダメなの”のように、自分の困りごととして伝える。“私は片づいてないと嫌なんだから片づけてよ!”はよくないということです。人間は、責められていると感じると反撃モードに入ってしまいます。そのスイッチを押さない言い方で主張するというのがポイントです」

争いでも、我慢でもないもうひとつの選択肢は“相手にインタビューする”

ときには相手に怒りを感じることもあるはず。でもそういうときこそ、ただ我慢するのではなく、話を聞くことが大切。「争うか我慢するかの二択ではありません。相手に対して怒りを感じたときは、“この人はなぜこんなことをするんだろう”と、まず相手の背景を考えてみてください。もしかしたら理不尽に怒鳴るというやり方しか知らずに育ったのかもしれない。バカにされることが多くて被害者意識が強くなってしまったのかもしれない。そう考えて相手のあり方を許してあげる。その上で、相手の怒りが自分に向いたときは、“それなら、私はどうしたらいいか教えて”と穏やかに尋ねましょう。先ほどと同じように、困りごとを解決するという姿勢で向き合えばいい。相手に何か注意したいときも“インタビュー”が有効です。「どうしてこうしたの?」の問題や間違いを一緒に解決していくほうが、怒って言うことを聞かせるよりずっといい。相手も“この人は愛を持って接してくれる”と信頼して、さらなる一歩の努力をしてくれますから。これは、仕事でもプライベートでも同じです」

最後に、自分をもやもやさせない方法を聞いてみたところ……

「争わない生き方をする人には二つのタイプがいます。ひとつは、他人の顔色を気にして争わないようにしているタイプ。そしてもうひとつは自分の心の平和を大切にしているタイプです。後者の自分主体の争わない主義であれば、もやっとすることはぐっと減ります。“私ばかり我慢している”“損をしている”と思わずにすみますから。ちょっと耳が痛い話ですが、争いたくない人は道徳心が強く、物事を正しい・正しくないでジャッジしがち。でも正しさは人によって違うものだから、それを基準にするのは不満のもとです。世の中には面白い・面白くない軸で生きている人もいますからね(笑)。ですから、争いを選ばないのは、“そうするのが正しいから”ではなく、“私がそうしたいから”と考えてほしい。“私は平和でハッピーに生きていくんだ!そのために争わない選択をするんだ!”と自分を主役にした考え方こそが、もやもやをためないいちばんの方法なんですよ」

「そうは思えない、という人も練習すればできるようになります。我慢していると思ってしまったときに、“いや、これは自分の平和のためにやっているんだ”と思い直すことを繰り返す。思考だって筋トレと同じ、練習すれば変えられます!


「“怒りを表明しない”というのは立派な生き方のひとつ。争わずに生きたいという素敵な考え方を大切にして、平和にハッピーに過ごしていってください」

【もやもや解消ポイント】

  • □ 怒っている人は“困っている”人に置き換える
  • □ 主語を「私」にすると争いを避けて意見を伝えやすい
  • □ 理不尽だと思うときこそインタビュアーになろう

3.こんなときどう返せばいい?~職場編~

平和に穏やかに過ごしたいのに、なんだかすり減る…。“争いたくない”けど、ときどきもやもやする人へ、カウンセラーの大野萌子さんとイラストレーターの描き子さんがうまく立ち回る方法&心の持ちようをアドバイス! 

【お悩み1】優しく指導しても改善しない後輩。適切な次の一手がわからない

優しく指導しても 改善しない後輩。 適切な次の一手がわからない

「新入社員が、会社の文化になじむ前に文句を言い始めた。それでいて、本人のやるべき仕事もできない&やらないで、こちらから指摘してもヘラヘラ。基本的にはきちんと説明指導をするけれど、理解した様子もない。こちらが主体的に動くほうがラクで、結果としてその後輩が育たない。本人の資質もあるけれど、何が正解か思い悩む」(40歳・営業)など指導に悩む声が。

大野さん相手が自分で考えてくれるような質問を投げかけてみる
(大野さん)

「ヘラヘラしている相手はやる気がなさそうに見えて、どうしていいものか悩みますよね。とはいえ、指示も注意もしないと、組織が悪い方向にいってしまいます。“次ミスしないためにはどうしたらいいと思う?”など、相手が考えるよう促すのはどうでしょうか。また、注意や指示をするときは“これをこういうふうに、いつまでにやってね”と細かくしっかりと伝えることも大事ですね。曖昧にすればするほどすれちがってしまいますから」

描き子さん育ててあげる気があるなら仲よくなるところからスタート
(描き子さん)

「このお悩みの文章を読むと、新入社員に対して苦手意識があるように見えますね。争いたくないというよりも、“踏み込みたくない”という印象です。もし育ててあげようという気持ちがまだあるなら、注意する前に一度仲よくなってみるのはどうでしょうか。親しくなった先輩の言うことなら響くかもしれません。“もう知らねえよ”と思うならほうっておいてもいいと思いますよ。彼が伸びなくても、辞めても、あなたの責任ではありません」

【お悩み2】仕事を負担することより注意をするストレスが大きい

「こちらは軽く指摘したつもりでも、相手は“叱られた”と感じてしまうのではないかと不安になります。相手に誤解されるなら言いたくないです。代わりに私が仕事の修正をしたり、難儀を引き受けたほうがマシだと思ってしまいます……」(32歳・公務員)という人も。

大野さん“叱られた”と思われるのを防ぐ言い方をしてみては
(大野さん)

「パワハラが厳しく問われる今、萎縮して後輩に注意ができない……というお話はよく聞きます。でも、あきらめるのは仕事上よくないですよね。“叱られた”とできるだけ思わせないようにするには、行動に焦点を当てるのがポイント。心情や相手の本質にフォーカスするのはNGです。“書類が上がってくるのが遅い”は○で“お前は遅い”は×。また、注意したあとに“難しかったら相談してね”などのフォローのひと言を入れると、なおいいと思います」

描き子さん注意がストレスになるような人の言葉は、きっと優しいです
(描き子さん)

「極端なことを言うと、相手がどう感じるかというのはこちらでコントロールできることではありません。どんなに言い方を考えたところで相手が“叱られた”と思うかどうかはわからない。誰もが100%傷つかない言葉って、きっと存在しないんです。でも、あなたのように“叱られたと思わせないように”と気をつけている方は、激しい言い方を選ばないはず。仕事なんですから注意するところはすべき。考えすぎなくて大丈夫だと思いますよ」

聞く耳をもたず、一方的に怒る上司。言っても無駄とは思いつつ…

聞く耳をもたず、一方的に怒る上司。言っても無駄とは思いつつ…

「今年の4月に転職しました。入ったチームのリーダーが自分の思いどおりにいかないとすぐにすごく怒るタイプで、面倒くさいんです。争いたくない自分は、リーダーに対して“はい”しか言わなくなりました。周りも私と同様で、間違いを誰も指摘しないよくないチームになっている気がします。どうすれば争わずに上司に意見を言えるでしょうか」(31歳・SE)対策求ムの声が!

大野さん“はい”に加えて要件を復唱してあげるだけでもOK
(大野さん)

「この上司はみんなから厄介だと思われているせいで、承認欲求が満たされてないんでしょう。『はい』に加えて『○○の件、△△というご指示承知しました、ありがとうございます』のように、復唱というサービス精神を添えると、受け止め感が伝わり怒りを予防できます。こういう上司の攻略法は、早めの相談。このタイプは、知らされないことを嫌います。決定前でも先にちょっとだけ話しておくことで、怒りを未然に防止することができますよ」

描き子さんいつも怒っている人は優しい言葉をかけてあげると態度が変わる
(描き子さん)

「このタイプの上司がめんどくさいの、わかります(笑)。“はいしか言わない”ってある意味正解です。いつもぷんぷんしてる人って、同時に傷ついて困っている人であることも多い。おそらく、上司も周りが萎縮していることをわかってるんじゃないでしょうか。理解者がいないから余計ぷんぷんしていく。なので“よく気がつかれるから厳しく指摘してくださるんですよね”などと優しい言葉をかけてみると、態度が和らぐこともありますよ」

自分以外への叱責でも、ストレスを感じてしまう

「職場で上司が後輩を叱っているところを見ると、自分のことのようにドキドキ。また、他人への愚痴を聞くのも苦手。“それを私にぶつけても何も解決しないし、もう少し建設的な解決方法はないのか”と思ってしまうが、嫌われたくないので最後まで聞いてしまう」(38歳・薬剤師)ほか多数。

大野さん愚痴に疲弊しないためには、同感をせずに共感すること
(大野さん)

「後輩が叱られているとき、つらいならトイレに立ちましょう。耳に入らないようにし、自分を守ってください。愚痴を“嫌われたくないので聞いてしまう”こと自体は変えづらいので、愚痴を流せる方法をお教えします。それは、同感せず共感すること。同感は“私もそう思う”と自分の感情を動かすので疲弊します。共感は“あなたはそう思うのね”と相手を肯定すること。自分の感情は動かさなくていい。相手も満足し、自分も疲れないのは共感です」

描き子さん悪い言葉を聞きたくないという健全な自分をまず褒めてあげて
(描き子さん)

「“他人に対するものでも悪い言葉を聞きたくない”というのは、健全なこと。認めて褒めてあげるべきものだと思います。ただ“嫌われたくないので聞いている”、という部分は少し気になりますね。愚痴を聞くにしても聞かないにしても、“自分がどうしたいのか”を軸にして考えてみてほしいです。“嫌われたくないから聞く!”でも“愚痴は苦手だから聞かない!”でもどちらでもいいと思いますが、“自分がどうしたいか”で決めるとラクになるかも」

誰もやりたがらない仕事を引き受けてしまう、断れない

誰もやりたがらない仕事を引き受けてしまう、断れない

「誰かがやらないと終わらない仕事を、誰もやりたがらないので自ら引き受けています。営業さんや上司からは喜ばれていますが、同僚や仕事が嫌いな年上の女性陣は、“やりたくないものは誰かがやってくれる”というスタンスなので、私の仕事量がただただ増えるばかりでつらいです」(34歳・広告代理店)あるある!

大野さん頼まれてないのならやめてしまっても大丈夫ですよ
(大野さん)

「もし、誰からも頼まれていないのであれば、やめてしまえばいいと思います。自己判断でやっているなら、キャパを超えた時点でやめましょう。もし、気づいてお礼を言ってほしいのであれば“○○やっておきましたー!”と軽く報告するのはいかがですか?さすがに同僚や先輩も“ありがとう”と言うでしょう。頼まれて断れない……という場合は“今手いっぱいでできません”“スキルがないので自信がないです”と理由をつけてお断りを」

描き子さん感謝してもらいたい気持ちがあるなら自分からお礼を言う人に!
(描き子さん)

「私は引き受けるあなたは素敵だなと思うのですがご本人が納得いってないんですよね。これはまず、“私、優しいなぁ”と自分で自分を褒めてあげてほしいです。きっと“気づいてお礼を言ってほしい、褒めてほしい”と思っていらっしゃるのでは。それならば逆に、ほかの人を褒めるようにしてみてはどうでしょう。細かいことを“ありがとう”といえば、“あなたもいつもありがとう”と返ってくるような雰囲気の職場になるかもしれませんよ」

反論したいことがあってもうまく言い返すことができずもやもやする

「上司や先輩から理不尽な言い方をされても我慢してしまう性格です。ミスやトラブルがあったときなど、正直、主張や反論をしたくなることもあります。でも、意見を伝えたところでそれを相手が気に食わなければ、結局自分の評価が下がり、仕事に支障が出てしまう。関係性維持のため何も言わずにいますが、どうしてももやもやが残ってしまいます」(32歳・保健師)など。

大野さん事実だけを話すことで言い訳ではなく説明を!
(大野さん)

「反論しなきゃと思わずに、“説明”をすれば大丈夫!ただし、“言い訳”に聞こえてしまうと、火に油を注ぐことになりかねません。説明とは、事実のみを伝えることです。“電車が30分遅れました”“○○さんには3回電話をかけましたがつながりませんでした”など、事実のみを端的に話すこと。“遅れるつもりはなかった”“徹夜して頑張ったんですけど”など、自分の気持ちや感情を含めない。何が起きて、結果どうなっているかを説明するのは業務上必要なことですから」

描き子さん黙ってみたり、驚いたり、少しだけ反抗してみる
(描き子さん)

「仕事のためだと思うのであれば、ミスの再発を防ぐためにもむしろ主張すべき。といっても、いきなり“それは違います!”なんていうと、争いの種になりそうで怖いですよね。それならば、少し黙ってみたり、“えっ”と驚いた返事をしてみるのはどうでしょう。ただ素直に聞いているよりは小さな反抗になるはず。カッとなる人の中には、言ってから後悔してしまうタイプもいます。あなたがかるく歯止めをかけてあげることで、逆に争いが減るかもしれませんよ」

4.こんなときどう返せばいい?~プライベート編~

“争いたくない”けど、ときどきもやもやする人へ。職場編に続き、プライベートでうまく立ち回る方法&心の持ちようを、カウンセラーの大野萌子さんとイラストレーターの描き子さんがアドバイス! 

パートナーに不満を伝えると相手が不機嫌になるので言いづらい

パートナーに不満を伝えると相手が不機嫌になるので言いづらい

「夫との家事分担について不満がありますが、争いたくないので妥協しています。そうすると夫がどんどん好き勝手して、私に家事の負担がくるんです! もやもやするので伝えると、すぐ不機嫌になるので困っています」(31歳・コールセンター業務)同意見がたくさん!

大野さんやってほしい家事を具体的に言うと相手も対応できるかも
(大野さん)

「程度によりますが、もはやモラハラではないでしょうか?機嫌が悪くなる=お前が家事をしろ、ということですよね……。とはいえ、うまく話し合いで解決したいのなら、やってほしいことを具体的に伝えるといいかも。もうちょっと手伝ってよ!だと何をしていいかわからない人もいます。“週末はお皿を洗ってほしい” “週に1回掃除機をかけてほしい”のように、いつ何をしてほしいか伝えたほうが相手も対応しやすいです」

描き子さんここで我慢し続けたらあなただけがずっとつらいまま
(描き子さん)

「すみませんが、これはもう争うしかないですよ。だって家事を全部負担したくはないんですよね。家事を我慢して続けるか、夫の不機嫌に耐えてでも分担するか、どちらかです。夫不機嫌になるんじゃねえよ!って話なんですが、ほうっておくともっとエスカレートする気がします。夫婦は二人で生きていかなければならないので、ここは腹をくくっていくしかない!争わないことを優先すると、つらくなるのはあなただけです」

相手の気持ちをおもんぱかっているのに向こうは気づかってくれない

「一緒に住んでいる彼が休日に予定を好き勝手に入れてしまう……。思うところはあるけれど、文句を言われると嫌な気分になるかなと思い何も言
えない。何も伝えてないから彼は“これで大丈夫だ”と理解しているのだと思う。でも、本当は私のことも考えてほしいと少しもやっとしている」(35歳・フリーランス)など。

大野さんパートナーとの問題は早めの話し合いですり合わせる!
(大野さん)

「これはお願いですむうちに伝えたほうがいいですね。予定を決めるときに相談してほしいとか、次の週末はどこにも行きたくないとか。イエスと言ってくれるとは限りませんが、すり合わせていくことが大事。話し合えないようなら、そもそも長続きする相手ではないですし、今の状態からさらに進んで怒りが乗ってくると、争いに発展しやすくなります。少しもやっとする、のうちに解決しましょう!」

描き子さん私は自分の意見を言えない」と伝えてみよう
(描き子さん)

「伝えてないことって、絶対伝わらないんですよね。察してほしがるのはよくないと思います。不満を言うのが苦手なら、せめて“私は自分の意見を言えないタイプです”と彼に伝えましょう。そうでないと、彼はあなたに何が起きているかまったくわかりません。“私はなかなか自分の意見を主張できないから、たまにこれでいいかな?って確認してくれない?”とお願いすれば、きっとやってくれるはず」

好きな人ほど嫌われたくなくて思ったことを言えない

「仕事であれば意見を言えるけど、プライベートで好きな人には反対意見を言いづらいんです。考え方の違いで嫌われて疎遠になってしまうかもと不安になって、相手に合わせてしまいます」(34歳・メーカー)という声も。

大野さん好きな人だからこそ早期解決。プラスに働く可能性も高い
(大野さん)

「言う前にあきらめないで!相手にすべて合わせてでも仲よくいたい気持ちはわかりますが、自分ばかり我慢していると遅かれ早かれ破綻します。意見が違う部分は、早期発見早期解決がいちばん。反対意見を言うことは“自分に従え”と争うことではありません。すり合わせて、お互いが折り合いをつけられる地点を探すために言うんです。話し合うことでどちらかの考え方が変わったり、成長したり、プラスに働く可能性も高いんですよ」

描き子さんパートナーだけは争いがあって当然。衝突を恐れないで
(描き子さん)

「ほかのお悩みにも共通することですが、ともに生きていきたいパートナーとだけは“争いがあって当然”と考えてほしいです。安心できる場をつくるには、数回の争いくらいは必要なもの。それによって傷つけたり傷ついたりすることも、避けられない。むしろ“なんであのとき言ってくれなかったの?”となるほうが話がこじれるので、つらい意見の相違があるなら、早めに言っておくほうが楽だと思います。パートナーに対してだけは衝突を恐れないで」

会話の中でずっと聞き役になってしまうのが地味につらい

会話の中でずっと聞き役になってしまうのが地味につらい

「親友と二人でよく仕事の愚痴を言い合うことがあります。お互いにストレス発散になるのですが、ほとんどが親友の愚痴を聞くばかりで終わってしまう。私の愚痴になると“私なんてね!!”と親友はもっとひどい状況にあると訴えてくるので、私の話す愚痴はほぼお流れ状態でもやもや。私だって聞いてほしい!」(38歳・受付事務)など。

大野さん相手に話を遮られてもさらに割り込んで聞いてもらおう
(大野さん)

「親友かもしれないけれど、力関係ができてしまっていますね。一度そうなると変えるのは難しいのですが、意思表示しないと親友は“この人は聞いてくれる!”と感じ、エスカレートしていくと思います。変わってほしいなら、親友に話を遮られてもさらに“今日は私の話も聞いてくれる?”としっかり割り込んでみましょう。質問形式なら、争いにはならないはず。それでも聞いてくれない相手は残念ながら親友とはいえません」

描き子さん愚痴は言い合えないけど親友という関係でもいいと思います
(描き子さん)

「こういう人は基本的には変わらないんですよね。親友とは別に、愚痴のペースが合う友達を新たに増やすのが手っ取り早いと思います。その人のことは“親友だけど、愚痴を言い合える関係ではない”と割り切り、悪い話を聞きたくないときは“最近楽しいことあった?”と質問して明るい話に持っていき、愚痴を避けてみるのはどうでしょう。せっかく親友と思えている相手なんだから、楽しく過ごせなくなるのはもったいないです」

争いたくない同士だと本音で話せているかわからず不安

「相手も自分も争いたくないタイプだとわかっている場合、話しているときに“相手は気をつかっていないか”“相手が本音を言えていないのではないか”と気になってしまう。多分相手も気にしており、会話が気のつかい合いになっている気がします」(受付事務・30歳)というパターンも!

大野さんまずは自分の「我慢している」という思いをなくす努力を
(大野さん)

「“気をつかってない?”とそのまま聞いてみるのがいちばん! あと、こういう方は自分が我慢してるから相手も我慢してると思ってしまうんですよね。だから、“自分は我慢している”という思いをなくすことが先決です。そのためには、意志をはっきりさせること。“何も言わない”という行動も、“私が私のためにそれを選んでいる”のであれば、我慢にはならないはず。本当にそう思えているのか、自分の本心を見つめてみてはいかがでしょうか」

描き子さん気をつかわせないためには言葉よりもオナラ一発が効果的
(描き子さん)

「すごく気をつかう人をくずすには、こっちがむちゃくちゃするのが最も効きます。私の夫がよくやるのは、自宅に招いた相手の前でオナラすること(笑)。何度も“気をつかわないでくつろいでね”と言うより、オナラ一発のほうが効果があるんですよね。本音を言ってほしいなら、こちらが突拍子もないくらいの本音を言う。我慢させたくないなら、こちらも我慢しない。傷つけるのはNGですが、“この人私に全然気をつかってないな”と思わせるべし!」

相手に合わせたいのに意見を求められると困る

相手に合わせたいのに意見を求められると困る

「争いたくないという気持ちが強いタイプです。そもそもそんなに強い希望がないからこそ、相手に合わせているのですが、たまに“あなたの意見を主張してほしい”と言われて困ります。主張しないことが争いの種になるなんて……」(34歳・金融事務)など多数!

大野さん希望を言うのではなく避けたいことをひとつだけ挙げてみる
(大野さん)

「おそらく相手は“何を考えているかわからない“と不安なのでは。もしくは、あなたとわかり合いたいと思っていたり、我慢させていないか気にしていたりするのかもしれません。強い希望がないなら、避けたいことを言ってみるのはどうでしょう。何食べたい?と聞かれたとするなら、“辛いもの以外!“と答えてみるとか。これも立派な主張です。“本当に不満がないんだ”ということが伝われば、相手も安心するはず」

描き子さん相手にすべてを決めさせるのは負担をかけているのかも
(描き子さん)

「相手は自己主張をしてほしいわけじゃなく、ヒントを求めているだけじゃないでしょうか。“相手に合わせる”というのは何も言わないことじゃなくて、考えをまとめるヒントをあげることだと思っています。“私には意見がないから全部決めてほしいんだ!”というのは、相手に決断という大きな負荷をかけていることにもなります。“合わせていれば相手は嫌な気持ちにならないはず”という考えは、少しズレているかもしれません」

友達でも意見の合わない話題は避けるって、冷たい?

「コロナ禍になり、ワクチンや自粛の考え方の違いなどが明白になり、個人の考え方なので否定はしないけれど、考えが違うことを説明して理解してもらえるとも思えないので、上手にかわすようにしています。これって友達として冷たいのでしょうか?」(39歳・事務)という声も。

大野さんどうしても気になるなら自分がやった事実のみを感情抜きで伝える
(大野さん)

「いえ、むしろ素晴らしいと思います。価値観や感覚は人それぞれだし、説得することも無理です。相手にとっては信じているものが真実。相手を否定したり批判したりする必要はないし、関係性が悪くなるだけです。もし、考え方が違うことについて何も言わないのがどうしても気になるなら“私はワクチン打ったよ”など、自分の話をすればいいと思います。世間の常識や多数派についての話はナシにしたほうがいいでしょう」

描き子さん争いになるような話題を避けるのは愛情ですよ
(描き子さん)

「もやっとするということは、ぶつかり合ってでも本音を言う!という友情を、心のどこかで求めているのかも? やってみてもいいけれど、おそらくケンカになるし、そうなってもあなたの責任です。友達は家族ほど密接な相手ではないから、適度な距離感が大事。争いになるような話題を振らないというのは、むしろ愛情だと私は思いますよ。それこそが、“多様性を大事にする”ということだと感じます。気にせずそのままで」

教えてくれたのは
大野萌子さん

カウンセラー

大野萌子さん


日本メンタルアップ支援機構代表理事。人間関係改善コミュニケーション、ストレスマネジメントなどが得意分野。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える働く人のための言いかえ図鑑』(サンマーク出版 1540円)など。

『よけいなひと言を好かれるセリフに変える働く人のための言いかえ図鑑』
描き子さん

イラストレーター

描き子さん


イラストレーター。エッセイスト。『推しにも石油王にも出会えない私たちの幸福論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 1650円)など、エッセイ本も出版。生きづらさ解消に関する情報を主にTwitter(@kaqico)で発信している。

『推しにも石油王にも出会えない私たちの幸福論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 1650円)

5.野村由芽さん&長田杏奈さん対談

ハラスメントやジェンダーロールの問題など、今まで見過ごされていたものに声を上げられるようになった現在。主張が苦手な私たちはこのままでいいの?身近なことから社会問題まで、自分らしい“声の上げ方”を実践しているバイラ世代の野村由芽さん、長田杏奈さんに話をしていただきました。

野村由芽さん

me and you取締役・編集者

野村由芽さん


1986年生まれ。2017年に自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティ「She is」を竹中万季さんと立ち上げ。現在は個人の対話を出発点に、想像や語りを広げるための拠点「me and you」を竹中さんとともに運営。Podcast&J-WAVEでラジオ「わたしたちのスリープオーバー」配信中。Twitter→@ymue

長田杏奈さん

ライター

長田杏奈さん


1977年生まれ。ライター。BAILAをはじめ、美容を中心に様々なメディアで活躍。性暴力や女性議員数などの社会問題に対して等身大の発信を続けている。著書に『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)。ニュースレター「なんかなんか通信」やPodcast「なんかなんかコスメ」配信中。Twitter→@osadanna

“争いたくない”気持ちのままで大丈夫。小さな声の上げ方と誰かのためにできること

野村由芽さん 長田杏奈さん

「Noを言うためにはまず“嫌”の境界線をつくること」長田さん
「自分に合った声の上げ方を。互いを尊重するのが大事」野村さん

自分の“嫌”を優先していい?

長田 以前、ハラスメントについて野村さんと話したときに、「自分がどう感じたかで決めていい」という話をしたよね。私が傷ついたとか、私はそのせいで仕事に行きたくなくなったとか。自分が嫌と感じたら、それは“嫌”でいい。

野村 「嫌だったけど、私のせいかもしれない」って考えてしまう人は少なくないですよね。でもまず「自分の嫌な気持ちを大事にしていい」と知ることが大切。気持ちも少し楽になると思います。

長田 自分の“嫌”を後回しにしちゃう人は、自分の大切な人や推しが同じことをされていたらどう感じるかで考えてみてもいいかも。嫌だと思うなら、それは優先してもいい“嫌”なんじゃないかと。

野村  今は自分の嫌も大切にできるようになったけど、私も昔は「私は大丈夫です!」根性を発揮してたなぁ(笑)。

長田 相手は嫌じゃないかな?って相手の気持を大切にできるのって、実は今見直されてるケアの才能でもあるんだよね。でも、その優しさのせいで自分の陣地がどんどん狭くなって疲弊してしまうなら、小さくてもいいから声を上げる練習をしたほうがいいと思います。それは、自分の“嫌”を大切にする練習です。

小さくても声を上げる方法は?

野村  小さくてもいいから声を上げるって、どうすればいいんでしょう。

長田 まず、境界線を自分で決めることかな。ここまでは譲るけど、ここからは絶対嫌だっていう、ラインを作れば、自分の“嫌”を優先しやすいと思う。

野村  最初から全力で“嫌”を主張する前に、「相手がなぜそんなことをするのかわからない」ときは、「なんで?」って理由を聞いてしまうのもひとつの方法ですよね。

長田 そうそう。強く主張する必要はない。たとえば、とんカツを食べたいとしたら「とんカツはどう?」と聞いてみるくらいでもいい。「とんカツでなければ許さぬ!」ではなく、「こうなったら嬉しいな」を言う練習から始めてもいいと思う。

野村  「いや、ステーキじゃないと許さぬ!」と言われたら「なんで?」の出番。もしかしたら、その人は牛肉を食べないと体調が悪くなってしまう……みたいな事情があるのかもしれないし。自分の嫌も、相手の嫌もどちらも大切だと考えて、相手の“嫌”を優先する前に、理由を聞いてみるのがいいかもしれません

長田 まず、そこに悪意があるか。あるならビシッと言うことも必要かも。

野村  悪意のない身近な相手の場合は相手の話もしっかり聞いて、自分の意見も言うのがいいと思う。長期的な目で見て“この人ともっとわかり合えればいいな”という相手なのであれば、ぶつかり合うとか争うとかではなく、こまやかに関係をメンテナンスしていけるといいのかな。

誰かの声の上げ方に違和感を感じたら?

長田 意見は同じでも、声の上げ方は個人差があるよね。

野村 「その人のやり方がある」と知ることが大事ですよね。スピーディに、大きな声を上げて変化を促す態度も否定しない。もし違和感がある場合は、具体的に何に対してそう思うのか、分解して考えてみるのがいいかもしれないですね。「ここは同じ意見だな」「ここは人格攻撃だから賛同できないな」とか。そうするだけでも、ちょっとスッキリすると思います。

長田杏奈さん

「誰もが声を上げられる状況にいるわけじゃない」長田さん

どうしても勇気が出ないのはダメ?

長田 最近「声を上げろ!」という圧に感じてしまう人もいますよね。「傍観者は加害者と同じ?」みたいな。もちろんそんなことはなくて、トラウマの真っ最中の人は息をするのがやっとだったりもする。声を上げられない人にも、事情があることがもっと周知されるといいんだけど……。

野村  勇気が出なくて声が上げられないことは責められることではないですよね。

長田 声を上げるってやっぱりエネルギーがいるんですよ。私は当事者ではない問題に声を上げることもあるけど、自分に余力がないとできないから。でもだからこそ、リスクを負って声を上げた人を孤立させてはいけないとも思うんです。大きく声を上げている人も、崖っぷちの状態で「私たちはこんなに頑張ってるのになんで協力してくれないの?」って思っていたりする。しかもその裾野にものすごい量の泣き寝入りがあることを思いやれたら。

野村  “誰かのやり方に違和感を感じたとき”と同じですよね。それぞれが、できるときに、やりやすいやり方で。それを尊重し合う。でいいんだと思います。

声を上げる人のためにできることは?

長田 たとえば、セクハラで声を上げている人が新入社員のような弱い立場の人だとしたら、当事者ではないフラットな関係性の人の声が、大きな力になることも多いんです。同僚に「あれセクハラじゃない?」って言うとか、小さくでもサポートしてあげると心強いと思う。

野村  その人を一人にしないことも大切ですよね。臨床心理士の方に教わったのですが、組織に所属しているとき、いちばんストレスがかかるのは一人で問題を抱えること。表立って一緒に戦うことができないとしても、そばにいるとか、話を聞くとか、味方だと思ってもらえるようにするだけでも、きっと全然違う

長田 自分ができることとできないことを把握しておくのも大事かも。“この話題だったら大きい石を投げることもできる”とか、“これは聞くことしかできない”とか。世の中のすべての問題にフルコミットするのは難しい。自分の中で優先順位をつけておくこと。たとえば私は、性暴力と女性議員数の話題であれば、勉強していることもあって発言できるけど、あまり勉強していないことなら、寄付したり署名したりというかたちでサポートしてる。

野村  フルパワーでコミットできないことで必要以上に自分を責めなくていいんです。私たちはいつも何でもできるわけではない。持ちつ持たれつの状態でいるためには、必要なときに誰かを助けられるよう自分の心も守らなきゃいけない。自分のことを過大評価も過小評価もせずに、そのときできることを探すことが大切。

野村由芽さん

「声を上げている人のそばにいるだけでも協力になる」野村さん

争わずに世の中を変えることはできる?

野村 独立したme and youでも、どのように声を上げていくのかについて考え続けています。相手を責めることは本質的でないという実感があるんです。単純な対立構造のように見せかけて、社会システムに問題があることがほとんどだから。

長田 野村さんは、まず問いを立てているイメージがある。

野村 答えはたくさんあると考えているから、問うんだと思います。「この問題をどう思う?」って問いかけると、色々な意見が見えてくるから。争いには「それは間違っている!」という断定の場面が多いと感じます。でも、人も問題も環境も日々変わり続けているもの。ただ一つの絶対的な答えを求めるのではなく、お互いに変わり続けることが大事だと思うんです。「争わず」の前に、日々の生活の「小さな選択の権利」に目を向けることも大切かもしれません。ささいなことであっても自分の見解を持つ訓練をする。力のあるほうに流されてしまわないように

長田 開示しなくてもいいから、自分の視点を持っておく。声を上げる前の土台を耕す、というのかな。本を読んだりして知識を蓄えておくのもそのひとつ。

野村  私とあなたという小さな主語で語り合うことで見えてきた発見から、考えを広げていけたら素敵ですよね。

6.「声を上げる」のファーストステップ【知る】ための推薦図書

野村由芽さん、長田杏奈さんが「自分の見解を持つ」ことの参考になったという本はこちら。知ることが、変える一歩に。

野村さん推薦の4冊

『海をあげる』

『海をあげる』
上間陽子著
筑摩書房 1760円

本屋大賞2021 ノンフィクション本大賞ノミネート。若年出産のシングルマザーのためのシェルターをつくった方の本。「言葉を失ってしまうような出来事のあとの日々で、嫌なことへの自分だけの感じ方が綴られている」

『新版 いっぱしの女』

『新版 いっぱしの女』
氷室冴子著 
筑摩書房 770円

「女性として生きる中での日々の不条理や女同士のすれちがい。軽快で新しい提案があって、文章が小気味よくて、すごく面白かった!」。人気小説家・氷室冴子さんが1995年に出版した人気エッセイが今年復刊。

『それを、真の名で呼ぶならば: 危機の時代と言葉の力』

『それを、真の名で呼ぶならば: 危機の時代と言葉の力』
レベッカ・ソルニット著 渡辺由佳里訳
岩波書店 2420円

「蛮行や腐敗に真の名前をつけていくという主旨が、“解放を目指して声を上げる”というテーマにぴったりです。勇気をもらえる一冊!」。女性蔑視、民族・人種差別などを取り扱ったアメリカのエッセイ。

『まとまらない言葉を生きる』

『まとまらない言葉を生きる』
荒井裕樹著 
柏書房 1980円

被抑圧者の自己表現をテーマに研究を続ける文学者・荒井裕樹さんが生きづらい人に向けて書いたエッセイ集。「しんどい言葉が増えている状況で書かれた、言葉をあきらめないための本。“刻まれたおでん”の話が印象的」

長田さん推薦の4冊

『環状島=トラウマの地政学』

『環状島=トラウマの地政学』
宮地尚子著 
みすず書房 3520円

“環状島”をモデルに、〈内海〉〈外海〉〈斜面〉〈尾根〉などを駆使してトラウマの全体像やあるべき方向性を解説。「専門書だけど、声を上げられる人、上げられない人がいる構造を図で理解できるのが画期的!」

『世界の半分、 女子アクティビストになる』

『世界の半分、女子アクティビストになる』
ケイリン・リッチ著 寺西のぶ子訳
晶文社 1870円

何かを変えたい女子のための本。運動の始め方やオンライン署名の集め方など、変化を起こす方法を紹介。「ティーンが読める本なので、とっかかりにも◎。自分ができることを探したい人におすすめです」

『「ほとんどない」ことにされている 側から見た社会の話を。』

『「ほとんどない」ことにされている 側から見た社会の話を。』
小川たまか著 
タバブックス 1760円

「性暴力についての取材を長年行ってきた小川たまかさん。行動や信念は“強い”のに、言葉の使い方が繊細で、素敵だなと思います」。2016〜2018年に起きた、性犯罪やジェンダー炎上案件などの発信記録。

『つらいと言えない人がマインドフルネス とスキーマ療法をやってみた。』

『つらいと言えない人がマインドフルネスとスキーマ療法をやってみた。』
伊藤絵美著 
医学書院 1980円

「ハラスメントされる人だけでなく、する人も実例として出てくるので、両方の視点から理解が深まります」。“オレ様”な男性と、人に尽くしてしまう女性がマインドフルネスとスキーマ療法をやってみると?

撮影/花盛友里 イラスト/いいあい 取材・原文/東 美希 ※BAILA2021年12月号掲載

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