2017.1.21 シアターコクーンにて。「世界」という名のすぐ“隣” # 渋谷 # 演劇 # 舞台 舞台初日が演者のインフルエンザによって延期になってしまったことが話題になってしまいましたが、それでも。この舞台はぜひ観てほしい作品のひとつ。出来事、考え方、言いがちなこと。登場人物のなかにはひとりもすごい人はいなくて、もしかしたらすぐそばの誰かかもしれなくて。こういう人っていそうだよね、こういうことってありそうだよね、という“世界”の「不恰好さ」がジワリとくる作品なのです。 舞台は船橋。工場を営む父・義男(風間杜夫)は、長年連れ添った妻・節子(梅沢昌代)から離婚を求められ、判を押したばかり。息子・健二(大倉孝二)とはほぼ口をきかず、朝の食卓で新聞を広げては当たらない天気予報に文句を言ったり、“世界”情勢のうまくいかなさについて、八つ当たりをする毎日。 アパートの別の部屋ではスーパーのアルバイトで生計を立てる男・諸星(和田正人)が、なじみのデリヘル嬢・あずみ(広瀬アリス)とぎこちない会話を続けている。 なんだかうまくいかない。それに目をつむれば世界は“平和”。工場に勤めはじめた新人・辺見(早乙女太一)の言動に首を傾げながらも、健二の浮気に薄々気づきながらも、声を荒げなければ、首根っこを捕まえて詰問しなければ、世界という名の日常は続いていく。不甲斐ない、と思いながらも、でもいつかその当人は自分になるかもしれない。そんな世界を、不安定だけど「だよね」と肯定する視点が、個人的にはとてもよかった。 ちなみに、東急百貨店に隣接したシアターコクーンは、好きな劇場のひとつ(欲を言えば施設内にもう少しレストランやバーが欲しいところですが)。 昨年はここで、岩松了さんの戯曲で小泉今日子さんや村上虹郎くん(彼がものすごくよかった!)ら出演の「シブヤから遠く離れて」や、宮沢りえさんと森田剛さんの共演作「ビニールの城」も観ることができました。第一希望の席はなかなか当たらないんですが、わりとどこでも観やすいので。 BAILAでも毎号注目の作品を紹介していますが、やはり、舞台は気になる役者さんだけでなく、演出家、脚本家の作品を目の前で見られる楽しさがあるし、舞台美術や音楽など、その想像力が形になったもののなかに入り込めるのも魅力。 皆さんも是非気になった作品を観に行ってくださいね (副編Y)