圧倒的な美しさと気品あるたたずまい……魅惑的な宝塚男役トップスターとして活躍した月城かなとさん。これから新しい世界で、俳優として、アーティストとして、その一歩を踏み出した月城さんに今の思いをインタビュー。宝塚時代のお話、そして退団後に思ったこと、これからの道。ご自身の言葉でたっぷりと語ってくださいました。
1990年12月31日生まれ、神奈川県出身。2009年に95期生として宝塚歌劇団に入団、ノーブルな立ち居振る舞いに圧倒的な美貌、芝居の巧みさで2021年に月組男役トップスターに就任。2024年7月に惜しまれながら退団。主な代表作に『今夜、ロマンス劇場で』や『グレート・ギャツビー』、『ブラック・ジャック 危険な賭け』『応天の門』など。予定されている出演作にコンサート『de ja Vu』(2024年11~12月大阪・神奈川)がある。11月17日よりオフィシャルファンクラブ「KANATO TSUKISHIRO OFFICIAL FANCLUB」をオープン。
今まで持っていた自身の引き出しに、何をプラスしていくか
——退団されて約4カ月。今の心境をお聞かせください!
あっという間でした。東京に引っ越してきたことなど、生活環境が変わったことが大きくて。それに慣れようとしている最中という感じです。
自分の生きる環境を大きく変えることって、なかなかないですよね。私は高校一年生の終わりに音楽学校に入ってから、自分の意思で身を置く環境を変えるという経験がなかったので、人生の中でもそうそうあることではない“大きな変化の時”を過ごしているのだと思います。
——月城さんの笑顔が眩しいので、きっと楽しい毎日を送られていることと思います。
今までは用意された環境の中で自分がどういうふうにいたらいいか、という感じだったので、今は楽しい気持ちを持つと同時に、自分が変えずにいたいことは何だろうというのを考えます。
働き方もそうですが、これからいろんなことを自分で選択して生きていかなくてはならないので、どんな自分でいたいのか、自分がやりたいことは何だろう、というのを模索しているところです。
——具体的に「これから、こんなお仕事をしたい!」というのはあるのでしょうか。
特に「これだけを目指している」というのはありません。自分の表現の方法は今までは舞台だけでしたが、外に出て、もっといろんなことを経験したいなと思っています。
何にでも挑戦していきたいですが、これからできる役柄やお仕事が、今よりも増えていけば嬉しいです。それには時間がかかるのも理解しているので、焦らずに、新しい人と出会うことや吸収することのスピードは緩めずにやっていきたいですね。
——月城さんは宝塚時代も、品のある立ち居振る舞いが美しく、お芝居もすごく巧みな印象でした。ご自身が考える“強み”を教えてください。
ありがとうございます。宝塚でやってきたというのは私にしかない個性なので、それをなくす必要はなくて、これからはそこに何かをプラスしていかなければと思っています。そこからいい変化をしていくことが必要。
諸先輩方がすごく長い時間をかけながら、それぞれが努力されて道を見つけられているのを見ると心強くもありますし、自分も舞台で学んできたことを生かしつつ、どんなことができるのか、探していかないといけないと思っています。
——そういうことはどなたかにご相談されたりするのでしょうか。
あまり誰かに相談するタイプではないんです。相談したくない、というわけじゃなくて、簡単に言葉にできることじゃないと思っているので……あまり軽々しく話せないなって。でも、尊敬する先輩方はたくさんいらっしゃって、その方々の生き様を拝見していると、頑張らないといけないなと勇気をもらいます。
壁にぶつかったとき、自分に必要な努力は何か考える
——目標にされている俳優さんなどはいらっしゃるのですか?
ジャンルを問わずに活躍されている方です。たとえば、舞台出身の方が映像でも活躍されているとか、声優さんで吹き替えもたくさん担当されていながら映像も舞台もできる方とか。基礎となるものがまったく違うはずなのに、それを両立されているのがすごい!と思います。
——月城さんの“座右の銘”は何でしょうか。
これが座右の銘、というのは特にないんです。でも、ありがたいことに「自分の実力以上にやらないといけない」という環境に身を置かせていただくことが今までとても多くて、そうなったときに「私にはできないかも」という気持ちが先に来ると本当にできなくなってしまうんです。できないのはわかっている——それをちゃんと理解したうえで、そこに向けて必要な努力って何だろうというのを考えます。
「どうしてできないんだろう」という方向に考えてしまうと、それより先に行けない気がして……。できないことが悔しくなって止まってしまわずに、必要なものは何だろうと考えたほうがよい気がします。
できないことに対して同じ当たり方を何度繰り返しても、そのときは多分乗り越えられないから、真っ向から当たり続けるというのはあまりしないです。とくに本番までの日程が決まっていると、スピード感が重要なんですよね。なるべく遠回りはしたくないから。
“自分らしくリラックス”できるのが目標
——オフの日に、何か新しく始めたことはありますか。
まさに今それを探しています! 今まで仕事とオフがすごく近いところにあったので、「オフって何だろう?」みたいな感覚だったんです(笑)。今は“余白時間の過ごし方”みたいなものを考えていて、どうしたら自分が癒されて、何となくフタをしてきたようなところを開く余裕ができるのか、それを見つけようとしています。
最近は時間があると外に出ていることに気がつきました。今日も出かける前に時間があったので、少し散歩してみたり。こんなに時間があって大丈夫なのかなと、今までだったら思っているはず(笑)。
——最近ショッピングに行かれたり、何か新しく買ったりしたものはありますか?
お買い物……行ってないです。今は、宝塚時代のモノを整理するのに時間もスペースも取られていて、新しいものを入れる隙間がないんです。何しろ、16年分ですから!(笑)
ソファは新しくしたいと思っています! でもまだ買いに行けてないです。
——これまでは男役としての洋服選びというのがあったと思いますが、今してみたいスタイルなどはありますか。
お仕事用で、スーツ上下みたいな服が多かったので、今は仕事というフィルターを通さずに、リラックスできるようなものが必要なのでしょうね。でも、リラックスできる=Tシャツ一枚でいいかというと、そういうわけではなくて。着ていて居心地がよく、リラックスもできる……。“何もしない”という意味のリラックスではなく、仕事モードから離れて“オフの自分が好きな格好でいられる”ことができるようになりたいと思います。
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撮影/大塚三鈴 ヘア&メイク/AYA スタイリスト/青木千加子 取材・文/前田美保