今年の2月、@BAILAで大胆ヘアカットの様子を披露してくれた俳優・音月桂さんの近況をインタビュー。間もなく幕が上がる音楽劇への意気込みから、プライベートの様子まで、気になる近況を伺いました。この夏は音月さんにとってフレッシュなシーズンになる予感!
おとづき・けい 1980年6月19日生まれ、埼玉県出身。O型。宝塚歌劇団の雪組・男役トップスターとして活躍した後、俳優として話題作に続々と出演。
おしゃれのモチベーションと韓国への愛が止まりません!
−春のヘアチェンジ以降、音月さんの中で“チェンジ”したことはありますか?
音月 プライベートでおしゃれをするのがものすごく楽しくなりました。耳まわりがスッキリしたのでピアスとか大振りのアクセサリーに挑戦できるようになったのは大きいですね。
ちょっと前にマリア ブラックで大きなフープピアスを手に入れたところなんですよ。ゴールドとシルバーで迷ったんですけど、宝塚歌劇団の男役時代は、アクセサリーといえば絶対的にシルバー。それも、クロムハーツとかゴツめのものばかり。
だから、今はどうしてもフェミニンなムードが漂うゴールドに手が伸びてしまうんです。ショートヘアはガーリーなテイストのワードローブでも、甘さ控えめに着こなせるところもすごく魅力的。しばらく短めのレングスをキープしてしまいそうです。
−夏の足音が近づいてきました。今年の夏、してみたいことはありますか?
音月 たくさんあります! 最近、プライベートを充実させることに余念がないんです。ちょっと話が脱線しますが、この間通っている整体の先生と話していたら「世界で活躍しているスポーツ選手はもう最低限の練習しかしないらしい」って教えてくださって。
その先生曰く、練習よりも、試合当日にいかに良いパフォーマンスができるかに照準を合わせて、メンテナンスの時間を大切にするようになっているそうなんですね。同じ目線で語るのはおこがましいかもしれないんですけど、宝塚音楽学校時代からずっとがむしゃらに突っ走ってきたから、私にも経験値や技術の基礎体力はできているはず。そう思ったら、仕事以外の時間の使い方に目が向くようになったんです。
それで、先日、ずっと気になっていた個室サウナデビュー! すごく快適で心も体もスッキリ。定期的に通いたいなと思いました。それから、絶賛勉強中の韓国語をもっともっと上達させたい。BTSのファンクラブに入会してからというもの、韓国への愛が止まらないおかげで、勉強がはかどる、はかどる……(笑)。あっという間にハングルは一通り読めるようになりました。
それが嬉しくて、街を歩いていてハングルを見つけると「お手洗い!」「水!」とかすぐに読んでしまいます。言葉を覚えたての子どもみたいですよね(笑)。韓国は今、演劇やミュージカルの熱も文化も盛んじゃないですか。
次のオフは、たくさん観劇をしてお仕事に対する刺激を受けたいというのを大義名分にしながら、「テテに会えるかもしれない」ってドキドキしながらソウルの街を歩きに行けたらいいな。
次の作品で演じるのは牡馬と愛人。どちらも私にとって新たな挑戦です。
−まもなくご出演される音楽劇『ある馬の物語』の幕が上がりますね。原作はあのロシアの文豪トルストイということですが……
音月 1886年に刊行された『ホルストメール』という原題の作品で、一瞬「ちょっと難しそう」と身構えてしまうかもしれませんが、テーマはとても普遍的なもの。
今でも社会問題である、いじめや差別を扱いながら、そういった問題の大前提にある“人間のあくなき所有欲とは何なのか”について掘り下げているので、令和の今を生きている私たちにとっても胸に刺さる部分がたくさんあると思います。
セットや衣装もすごくクリエイティブで、視覚的にも楽しめる作品なんですよ。音楽劇なので、お芝居とお芝居の間に楽曲が入ってくる感覚がストレートプレイともミュージカルともまた違って、私にとっても新感覚。
実はこの作品、コロナ禍に一度公演が中止されているんです。満を持して幕が上がるので、カンパニー全体の熱意も高まっています。その熱気を皆さんにも会場で感じていただきたいです。
−音月さんはどんな役を演じられるんですか?
音月 私は、成河さんが演じられる主演の牡馬・ホルストメールの幼なじみの牝馬と、別所哲也さんが演じられる公爵の愛人・マチエなどを演じています。
マチエはこの舞台の中で若さや美を象徴する存在で、シンプルに表現すると鼻につく女。プライドが高くて、私利私欲のために平気で人を裏切ったりする。これまでは、どちらかというと正統派な役をいただくことが多かったので、このような悪女を演じることは、私にとって新たな挑戦。お稽古中の今は、役と向き合う毎日を過ごしています。
これまでの自分の殻を破ってみたい!そんな作品に出逢えて胸が震えています。
−牡馬の役作りはどのようにされているんですか?
音月 やっぱり、そう思われますよね(笑)。このインタビューを受けている段階ではまだ“スケッチ”という大まかな枠組みを作っているところなんですけど、お稽古の初日から演出の白井晃さんを筆頭にカンパニーのみんながすでに馬になっていて驚きました。
成河くんなんて、身体能力が素晴らしすぎて、あの躍動感は馬そのもの! あの姿を目にするだけでも、この舞台をご覧いただく価値があると思います。それから、とにかく白井さんの熱意がすさまじくて、細かなところまで私たち役者に寄り添って演出をつけてくださるんですよ。
この間、白井さんが手に持っていらした台本をチラッと覗き見したら、ものすごい量の書き込みがあって。音楽劇なので、譜割まで事細かに書いてあるんです。それにすごく感銘を受けて、あのパワーに負けないくらい全力以上で挑みたいと決意を新たにしました。役作りという点では、自分の心や表現に鍵をかけずにさらけ出す気持ちで取り組みたいと思っています。
昔、『東京ラブストーリー』っていうテレビドラマがあったじゃないですか。あの作品を観ていて、まだ小学生だった私は幼心に劇中の“さとみ”という女性のことが本当に許せないって思ったんです。あんなにあざとい恋敵、いないじゃないですか。
大人になって、その役を演じられていた有森也実さんのインタビュー記事を読んでいたら、私みたいな気持ちを抱いた視聴者から脅迫状が届くくらい恨まれたりしていたそうなんです。
そんなふうに激しく感情移入されるくらいの演技をしているって、役者としては本当に素晴らしいことですよね。でも、これまでは「自分はそんなふうに役と向き合えるのかな?」と心に問いかけたときに、どうしても“音月桂”を守りたいという気持ちを捨てきれずにいました。
その点、今回の役は馬。動物ですから、思い切り振り切って、本能の赴くままに動けるじゃないですか。だから、もしかしたらこの作品に出演させていただくことは“自分の殻を破るチャンス”になるかもしれないと、捉えています。
お墓に持っていけるのは思い出だけ。本当に大切なものを抱きしめられる今が幸せ。
−最後に、音月さんご自身、この作品のテーマになってる“所有欲”とどんなふうに向き合われたのか、教えてください。
音月 真っ先に頭に浮かんだのは、かつてスティーブ・ジョブズ氏がスピーチで発していた「結局、あの世に持っていけるのは思い出だけ」という言葉。彼氏も土地もお金も“自分の”ってつくものって、つい執着してしまいがちですけど、この世に生を受けている期間限定のものでしかない。
コロナ禍に、世界中の多くの人たちが本当に大切なものについて深く考えたと思うんです。私もその一人で、断捨離をたくさんして、本当に必要なものだけに囲まれて生きていくのが幸せなんじゃないかと考えるように。最近は、欲しいと思うものを見つけても衝動的に買うことがなくなりましたね。
私はエンターテイメントという“無形”の世界を生きているじゃないですか。世の中が大混乱になったとき「私の仕事は生き死にに関わることじゃないのに、やる意味があるんだろうか」と思い悩んだこともあったんです。演劇に使う電力を無駄遣いかもしれないと感じてしまう瞬間もありました。
でも、やっぱりエンターテイメントの力って誰かに感銘を与えたり、議題を投げかけたり、計り知れない力があると思い直すようになって。今では、誰かの思い出にしかなりえないけれどだからこそ尊いことなんだって胸を張って言えるようになりました。
ちょっと大袈裟な表現かもしれませんが、一生の“思い出”を作りに、ぜひ、劇場に足を運んでください。お待ちしています!
Information 音楽劇『ある馬の物語』
客席に“生きることとは何か?”という普遍的なテーマを問いかけるロシアの文豪トルストイ原作の名作を、生き様が愚かな人間と聡明な馬を対比させながら詩情豊かに綴る音楽劇。
出演は成河、別所哲也、小西遼生、音月桂ほか。
6/21(水)〜7/9(日)、世田谷パブリックシアターにて公演中。
7月22(土)、23(日)には、兵庫県芸術文化センター 阪急 中ホールでも公演予定。
詳細は、特設サイト(https://setagaya-pt.jp/stage/1829/)をチェック!
ジャケット¥27940・パンツ¥17930/アンクレイヴ(アンクレイヴ ホワイト) タンクトップ¥9900/ラグ & ボーン 表参道店(ラグ & ボーン) イヤカフ¥22000/エストネーション 六本木ヒルズ(ブランイリス) 右手リング¥15400・左手リング¥24200/アルティーダ ウード
【問い合わせ先】
アルティーダ ウード☎︎03-6804-8090
アングレイヴ☎︎03-5476-5811
エストネーション 六本木ヒルズ☎︎0120-503-971
ラグ & ボーン 表参道店☎︎03-6805-1630
撮影/nae.JAY スタイリスト/小林実可 モデル/音月 桂 取材・文/石橋里奈