今年4月、宝塚歌劇団雪組をトップスターとして率いてきた望海風斗さんが退団した。卓越した歌唱力、繊細な表現で観る者を魅了し、唯一無二の存在として宝塚を牽引してきた彼女。インタビュー2回目は宝塚最後の日と『エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャル・ガラ・コンサート』のことを聞いた。
OGたちと過ごした宝塚最後のとき
退団日は「1週間を一気に経験したような、凝縮された時間。本当にすごい一日だったんです!」と力を込める。
「すべてが終わって自分の部屋に戻ったとき、人生でいちばん干からびていたんじゃないかな(笑)。本当に出し尽くした感覚でした。タカラジェンヌではなくなる“夜0時になる瞬間”は、先に退団した同期や親しい方たちと“ジャンプ”をしました。もう私の名前がないんだ……と思って劇団のサイトを見たら、まだ残ってましたが(笑)。次の日はすごく天気がよくて目覚めもよく、解放的な気持ちでした。退団の寂しさより、何よりまず千秋楽を無事終えられた達成感でいっぱいだった。11日後に『エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャル・ガラ・コンサート』への出演が控えていましたが、切り替えがすぐにできなくて。もともと決めていたとおり、まる1日は休みました。お休み2日目は急いで台本を覚えて。3日目に『エリザベートガラ・コンサート』のルキーニ役の稽古へ」
再びのヒゲのルキーニ、初のトート閣下に挑戦
退団後の初仕事となった『エリザベート』のガラコンサート。挑んだのは、花組時代にも演じた狂気の暗殺者ルキーニと、主演の“黄泉の帝王”、トートの二役!
「二役を演じて大変だったのは、出番が多いルキーニ。出ずっぱりで歌もセリフも多いので気を抜けなかったのですが、宝塚時代より冷静にできたかな。初挑戦のトートは、ヘア&メイクをしていただいた瞬間、『これもありなんだ』と新鮮な気持ちに。今までのトート像をなぞるのではなく、この姿で自然に生まれた感情を、歌でお届けしてみよう!と演じました」
エリザベートを演じる明日海りおさんら宝塚同期との共演も大きな話題に。
「明日海のすごくきれいな頭声(女性の高い歌声)に、宝塚音楽学校時代を思い出して懐かしかった。当時私は低い声よりも高い声が得意で。男役の声の練習に変わった瞬間に歌の成績が下がったんです。明日海は私と逆で、高い声よりも男役の声のほうが得意だったと思います。私は男役の声を作るのにかなりの年数がかかったんです。今は女性の声に戻している時期ですが、難しくて時間がかかりそう。でも慣れてラクな男役の声には戻さずに、女性の声で音域を広げていきたいです」
ジャケット¥71390・パンツ¥47190/エム(ウジョー) シューズ¥97900/セルジオ ロッシ カスタマーサービス(セルジオ ロッシ) イヤカフ¥30000・ネックレス¥33000・バングル¥77000・リング¥18000・オープンリング¥30000/フォーヴィレイム カットソー/スタイリスト私物
望海風斗
のぞみ ふうと●10月19日生まれ、神奈川県出身。2003年、宝塚歌劇団に入団。花組に配属され経験を積んだ後、2014年、雪組に組替え。2017年、雪組のトップスターに就任。2021年4月11日、『「fff-フォルティッシッシモ-」~歓喜に歌え!~』『シルクロード~盗賊と宝石~』の東京千秋楽でトップ娘役・真彩希帆さんとともに退団。
望海風斗コンサート『SPERO』
構成・演出・振付/川崎悦子 企画・制作/梅田芸術劇場
日程/2021年8月2日~10月5日
チケット一般発売日/7月17日(大阪・福岡)、9月4日(愛知・神奈川)
宝塚退団後初となるコンサートを大阪・福岡・愛知・神奈川の4都市で開催。宝塚の楽曲のほか、ジャズやポップス、海外ミュージカルなどの名曲を歌い上げる。ラミン・カリムルー、井上芳雄、海宝直人と豪華ゲストとの競演も注目!
撮影/土山大輔〈TRON〉 ヘア&メイク/国府田圭 スタイリスト/菊池志真 取材・原文/櫻木えみ 構成/斉藤壮一郎〈BAILA〉※BAILA2021年8月号掲載