ペアローンなる住宅ローンの組み方がある。夫婦や親子、もしくは親族間で一つの物件をそれぞれで住宅ローンを契約することで、収入を合算し共同で借入ができるローンのことである。通常は夫婦のペアを指す。
ペアローンを組む際には、それぞれの住宅ローンを双方が連帯保証人になるので、妻にも持分に応じた支払い義務が生じるのが特徴である。
近年首都圏を中心によく聞かれるようになったが、その実態を見てみよう。
・なぜペアローン?シングルローンじゃだめなの?
ペアローンを組むのは2つのパターンが考えられる
①7000万の物件をシングルローンでも組めるが、ペアローンにすれば二人分住宅ローン控除を受けられる。もし1億3000万に値上がりしたら6000万円の譲渡所得が非課税になってたいへんお得。
②7000万では買いたい(住みたい)物件が買えない。1億4000万の物件を買いたい。一人では1億4000万借りれないが二人なら借りれる。
どちらのパターンが多いかというと、
たとえば、三井住友トラスト・資産のミライ研究所が発表した「令和の“住まい”と住宅ローン事情」によると、
・20歳代、30歳代では、約2割がペアローンを利用し、全年代の2倍以上の水準
・特に20歳代では差分が大きく、ペアローンでの借入額は、単独ローンと比較して約4割のアップ
20∼30代は適齢期にその上の代より不動産価格が上昇しており、買いたい物件が高額になっていることが推測される。そして、ペアローンでの借入額が明らかに高いことから②パターンが多いだろうか。
ただし①となんら矛盾せずメリットしかない。つまり②が動機だが①ももちろん理由だという複合型が多いのだろう。
・誰が使っているのか?使えるのか?
リクルートの「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」(2022年の1年間に首都圏で新築マンションの購入契約をした5,972件が対象)によると、住宅ローンを利用した世帯のうち29.4%が、世帯主と配偶者(パートナー)の「ペアローン」だった。
これを共働き世帯に限定してみると、ペアローンの比率は半数近い46.9%にまで達する。なかでも、「世帯総年収1000万円以上」では、ペアローンが73.5%と極めて高い比率になった。
これだけ見ると、ほう、ペアローンって増えてるけど首都圏でも3割と少数で、共働きでも半分弱なんだ、と見える。
しかしこれにそもそも住宅ローンを組める属性、という補助線を引きたい。
ペアローンかシングルローンかは固定金利と変動金利のようにお好きなほうをお選びください、というものではなく、住宅ローンを組めない人はペアローンを組めないのである。
住宅ローンが組める属性はもちろんその銀行の審査基準と希望借入額によるが、首都圏の借入額から考えるにざっくりいうと
30代くらいまでで、公務員や大企業、(銀行の考える)安定した勤め先等で年収400万は得ており、フリーランスや自営業はNGか基準が厳しいか条件のよいところは無理でベンチャー企業や外資は大企業と比べいくらか低い評価になるのでより高い収入が必要で、心身ともに既往歴がなく、クレヒスが綺麗でほかに(車やリボなどの)ローンがない。ことが条件になってくる。
これを夫婦ともに満たすには最低でも世帯収入1000万はないとペアローンは難しいわけである。
つまり「選択肢としてペアローンを選べる夫婦は、大多数がペアローンを組んでいる」のが最近のトレンドで、利用していない世帯は、単に利用できなかっただけという可能性が高い。
これから検討をはじめる人は、その意見が利用できた属性なのかどうか吟味したほうがいいであろう。
・向いてる人と向いてない人。迷うならやめたほうがいい
結論から言うと向いている人は、「迷いがない」人だと思う。
シングルローンでは住めないような物件に住めるし、毎年控除分でセリーヌ一個買えるし、売却益が出た時には最大1,200万もお得!団信もあるから生命保険いらないし!(FPは生保売りたいのでポジショントークに気をつけよう)
ぼくのかんがえたさいきょうのローンじゃない?と思う人は向いていると思う。
逆にこれだけわかりやすいメリットがあるのだから、迷う人はたぶんやめたほうがいい。
以下のような傾向があるように思う
▷向いてる
・インフレリスクを感じている
インフレになれば、借金はどんどん軽くなるし相場も上がる。
・借金を好ましく思っている
ペアローンにすればより多く借り入れできる。
・まとまった資産がなく、ペアローンしか r>g の手段がない
自分でビジネスやらないサラリーマンにとっては住宅ローンほどレバレッジかけれるものはない。サラリーマンで住宅ローン組まない人はなんなの?と思っている。
・住宅への要求水準が高い
東京でファミリー物件は家賃15万相当でもあるにはあるが30万のほうが好きで+15万の価値があると感じてる。
・株はできないし日本銀行券で持つのもいやだ
飽きる可能性の高いブランド品や消えものに使うより日々享受できる家に使うのはありだろう。
・妻がペアローンにポジティブ
大前提です。
▷向いてない
・デフレになると思っている
借金が重く感じるのでシングルローンも考え直したほうがいいかもしれない。
・借金が嫌い。忌避したい
できるだけ借り入れは少ないほうがよい。①の理由ならあり。
・節約や貯金が好き
住宅ローンは属性よければ年収1000万で1億借りれるので節約や貯金とは相性がわるい。
・住宅環境への要求が低い
家賃15万の物件に住んでても特に不満がない。一般的に高い家に住みたがるのは女性なので、満足できているならわざわざペアローンにして返済義務を負うことはない。
・他の金融商品でより高いリターンを上げる自信がある
住宅は管理費だの固定資産税だの出費もばかにならない。資産価値の高い都心マンションですら売却も面倒で換金性も金融商品に比べたら著しく劣るのでレバレッジをかけれる以外に良さがない。
それを良しとしないなら資金をローン返済に使うのはもったいないしあほらしい。ただしこれはシングルローンにも言える。
・妻がペアローンにネガティブ
同意がなければできません。
・ペアローンと予算の設定の問題をごっちゃにしない
ペアローンがこれほど普及したのは一部の若い男性が男女平等なら妻にも住居費を負担してほしいという価値観の変化もあるかもしれないが、やはり最低限満足できる物件の価格上昇が著しいのが主因だろう。収入が増えていない15年で都心マンション価格が倍というのは強烈だ。
予算をいくらにするのか、これはペアローン関係なくシングルローンでも設定に本質的な違いはないはずだ。
シングルローンで1億借りれても郊外でバス便3000万の物件を買うのか都内狭小物件6000万なのか、はたまた買わないのか、自分達で決めるべきイシューである。
もし仮に一人でもペアローンを組めていたら、組みたいか。を考えてみるといい。周りが組んでいるからといって不必要に組むのはいささか軽率だ。
借りれるから借りた、というのは軽率すぎると思う向きもあるかもしれないが、少なくともこの15年では住居費を安く抑えたいからと安い物件を購入した人は「安物買いの銭失い」になった。
日本の人口減は必須であり10年前より値下がりした住宅はいくらでもある。ただ同然でも誰にも見向きもされない物件はますます増えている。
しかしその情勢の中で2極化が進みより高い物件に住みたい人が増え、より高い物件がより上がるというのがトレンドである。
その目利きは容易ではないが、上る物件が(安めの)シングルローン物件でないのは既定路線になってきた。
そうなればペアローンは福音をもたらすだろう。
後編では
・なぜ否定的な声が多いのか?
・離婚のリスクはどう解釈すればいいのか。等について書いていきたい。