あらゆる役柄を多彩に演じ分ける俳優、鈴木亮平。今回彼が演じたのは、’80年代の大ヒットコミック『シティーハンター』の冴羽獠。子どもの頃から憧れていたキャラクターを演じた彼の、新たな魅力に迫る。
シティーハンターの世界に主人公として没入する高揚感
’80年代の新宿を舞台にした大人気コミック『シティーハンター』。子どもの頃から原作の大ファンで、当時から主人公である冴羽獠の立ちポーズや腕を枕にした独特の寝方などを真似していたという鈴木亮平さん。憧れの世界に役として入り込むというのは、どんな感覚なのだろう。
「不思議でしたよ。自分が上京して初めて新宿の街に行ったときに感じたドキドキがよみがえってきて、タイムスリップしたようでした。冴羽獠が乗っているミニクーパーも、自分で運転したくてマニュアル免許を取り直したんですよ。それでセットの中を運転したときには、めちゃくちゃテンション上がりました。でも一方で、僕がどれくらい原作ファンであるかとかって、視聴者の皆さんには関係のないことじゃないですか。なので、ファンとしての感覚はどこかで大事にしつつも、ものまねになってはいけないなと。これは『シティーハンター』に限らずどの実写版作品でもそうなんですが、この役はこの人をモデルにつくられた漫画なんだ!って思ってもらえたら理想だなと。そこを核にして、演じるようにしています」
新宿の裏社会に生きる超一流のスイーパー(始末屋)であると同時に、美女に目がなくお調子者である冴羽獠。劇中でも、そんな獠の振り幅に思わず声を出して笑ってしまう。コミカルとシリアスが同居するキャラクターを違和感なく演じるのは、簡単なことではないはずだ。
「冴羽獠は、ギャグ漫画の文化がある日本ならではのキャラクターだなと思います。ただコミックの場合はコマとコマの間は読んでいる側の想像になりますが、実写では演者側に委ねられるので、そこを作品の中で一人のキャラクターとしてどうつなげていくかは、慎重に探りました。僕自身は、コミカルな演技のほうが気持ち的に楽でしたね。自分の中にずっといた獠ちゃん解放!って感じで。特に冴羽獠のお馬鹿な振る舞いって、理由があるんですよ。人とコミュニケーションをとるためだったり、照れ隠しだったり。そこさえつかめば、演じるのはシリアスな場面よりむしろスムーズでした」
「明るさの影に抱えた葛藤。それがこの人の色気なんだなと」
自身が演じることで新たに発見した冴羽獠の魅力もあるのだろうか?
「実は結構揺れている人なんですよ。冷静沈着に見えて、ヒロインである槇村香への想いも含めて、様々な葛藤を抱えている。だから近くにいても、案外何を考えているかわからない。そこが冴羽獠の最大の色気なんですよね」
遊び人だけど、仕事はパーフェクト。オープンなようで、実は陰がある。様々なギャップを持つ男、冴羽獠は時代を超えて、どこまでも色っぽい。
「ギャップ萌えですよね。僕もクールな人が自分にだけちょっと優しかったり、普段カジュアルな人のすごく上品な一面を見たり、その人の意外な顔を発見するとドキッとします。ギャップって本来は狙って出せるもんじゃないけど、仮に多少狙ってたとしても僕の場合大体は気づかないんで(笑)。そういう二面性をちょっと見せるのはいいと思います」
最後に冴羽獠の女性好きくらい、鈴木さんにとって好きなものはと尋ねると、「う〜ん……お餅ですかね。つきたてのお餅はやっぱり美味しいですよね。僕は砂糖じょうゆで食べるのがいちばん好きです」
誰よりも意外なギャップを教えてくれた鈴木さん。豊富な引き出しで演じる令和を生きる冴羽獠に誰もが魅了され、私たちは再び恋に落ちるに違いない。
シャツ¥22000/トゥモローランド(トゥモローランド)
すずき りょうへい●1983年3月29日生まれ、兵庫県出身。2006年俳優デビュー。2014年にNHK連続テレビ小説「花子とアン」、2018年にNHK大河ドラマ「西郷どん」に出演。映画『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』『エゴイスト』、ドラマ「下剋上球児」など主演作多数。期間限定で公式インスタグラム(@ryoheisuzuki_cityhunter)を開設中。
Netflix映画『シティーハンター』
出演:鈴木亮平、森田望智、安藤政信、木村文乃ほか
4/25(木)Netflixにて世界独占配信
新宿を拠点に裏社会のトラブル処理を請け負うスイーパー(始末屋)、冴羽獠。ある日突然相棒である槇村秀幸が何者かによって殺され、その場に居合わせた槇村の妹、香と出会う。彼女の懇願により、秀幸の死の真相を追い始めることに。
撮影/北岡稔章〈えるマネージメント〉 ヘア&メイク/Kaco〈ADDICT_CASE〉 スタイリスト/臼井 崇〈THYMON Inc.〉 取材・原文/前野さちこ ※BAILA2024年6月号掲載