始めたばかりのころは悩み迷ってばかりいた女優の仕事。でも今は「芝居の現場に立つのがとても楽しい」と笑う。輝きを増しながら軽やかに飛躍し続ける中村アンさんの秘密を探る。
「続編ドラマは初めての経験。出演者の方たちは“はじめまして”の関係ではないので、ナチュラルな空気感のなかで楽しみながらお芝居することができています」
取材時は、ドラマ「SUITS/スーツ2」の撮影真っ最中。開口一番そう語り、共演者や現場のエピソードを笑顔で話してくれたアンさん。「それぞれの楽屋ではなく、みんなそろって控え室で昼食を食べるのも今作ならではの光景。やさしくフランクな主演の織田裕二さんを筆頭に共演者は仲がよく現場はとても楽しくて。でも、お芝居が始まると気持ちのいい緊張感が漂う。特に、今作から参加されている吉田鋼太郎さん、織田裕二さん、鈴木保奈美さん、3人のかけ合いはまさにお芝居対決。迫力満点で見ているだけでも勉強になることだらけなんです」
思いどおりにならないから仕事には“忍耐力”が必要
今でこそ女優の仕事現場を心から楽しんでいるアンさんだが、過去には楽しめない時期も。
「最初はとにかく自信が持てませんでした。特に私はカメラの前に“自分”として立つタレント活動からスタートしているので、お芝居のこともわからなければ、演じることもどこか恥ずかしくて。そんな自分に引け目を感じ、よそ者がお邪魔しているような感覚に勝手になってしまう、以前はそういう瞬間が多々あったんです」
どんなに作品を重ねてもなかなか消えなかったネガティブな思い。それを払拭できるようになったのは実は最近。「ずいぶん時間がかかりました」と笑う。
「どのお仕事も同じだと思いますが、最初は知らないからこそガムシャラに頑張れるし、未熟だから周りも褒めてくれる。でも、積み重ねた経験に比例して成果が求められるように。ハードルが上がるたび“うまくいかない”と思う瞬間が増えていくと思うんです。また、やればやるだけ成果を感じるトレーニングとは違い、自分の思いどおりにならないのが仕事。努力が評価につながらないことも、自分の能力を認めてもらうまでに時間がかかることだってある。でも、そこであきらめたら終わり。その時間をどう乗り越えるかが実はすごく大事なんですよね」
咲かない花に根気よく水を与え続ける、そんな時間こそ大事!
彼女自身“頑張ってもうまくいかない時期”を経験した一人。必死に努力を重ねても女優としてなかなか世間に認めてもらえず「成果が出ない、うまくいかない、同じことの繰り返し」と気持ちが前を向かない時期もあったそう。
「これ以上、何をしたらいいんだ。そんな気持ちになってしまったときもあったけれど、“同じことの繰り返し”は自分で決めつけていることがほとんど。探そうと思えば、自分を成長させてくれる種はいくらでも転がっているんですよね。そこに目を向けるだけで、目の前の景色がガラリと変わったりして」
また「うまくいかない」と感じているときも「自分に原因があることがほとんど」と言葉を続ける。
「今までの私自身、自分よりキャリアを積んでいる人たちのなかで気持ちが負けていたと思うんです。でも、そんな状態では真正面からぶつかれない、いいお芝居だってできるわけがないですよね」
そこに気づいてからは「私も負けてない!」と自分に言い聞かせながら挑む日々。今では役に入り込む楽しさも覚え、チームの中の一員であることを実感しながら現場に立てるようになった。
悩みや迷いに終わりナシ仕事も人生も課題だらけ
「そう言いつつ、女優としてはまだまだ未熟。日々、落ち込むことばかりで、気持ちは常に上がったり下がったり。気持ちが下がったときは家に帰って一人晩酌。お酒を飲みながら一人反省会。私の“ひとり上手”は加速中(笑)。さらに、最近は女優の仕事が楽しくなってしまったから。仕事に気持ちが向いているぶん“セリフ合わせにつきあってくれたり、役に立つのならば一緒にいてもいいけどそうじゃないのならば、家に誰かがいるのは疲れそう”と思ってしまう自分がいたりして(笑)」
婚期はさらに遠のいてしまいそうな予感、と笑う。
「こないだ、大学の後輩から言われたんです。“既婚者の身からすると独身の先輩の可能性は無限大ですよ。いろんな人と出会って視野を広く持つべきだ”って。今は一人が楽しいけど、それを満喫したら寂しいと感じる日が訪れるかもしれない。結婚を考えるのはそのときでもいいのかな。まあ、そう思っているときに限って母親から“結婚は早いほうがいいですよ”と親心が綴られたメールが届いたりして。仕事も人生も上がったり下がったり。まだまだ課題だらけです(笑)」
ドレス¥68000/ボウルズ(ハイク) ピアス¥25000/ジャーナル スタンダード レサージュ 青山店(ホリー ライアン)
『SUITS/スーツ2』 4月13日(月)フジテレビ系にて夜9時スタート
敏腕弁護士・甲斐正午(織田裕二)と頭脳明晰で記憶力抜群のアソシエイト・鈴木大輔(中島裕翔)。シーズン1でも鮮やかな手腕で法廷バトルを勝ち抜き視聴者を虜にした名コンビが復活‼今作では新たなメンバーも加わり勢いが加速。アンさん演じる秘書の玉井伽耶子にも注目。
撮影/伊藤彰紀〈aosora〉 ヘア&メイク/笹本恭平〈ilumini.〉 スタイリスト/加藤かすみ 取材・原文/石井美輪 構成/中川友紀〈BAILA〉 ※BAILA2020年5月号掲載
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