漫画を愛するライター・中川 薫がバイラ女子におすすめの漫画をピックアップ! 今回は、「少年ジャンプ+」サイトで、公開2日目で400万閲覧数を記録した話題作『ルックバック』をご紹介します。
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中川 薫
漫画、酒、旅、K-POPを愛する。最近ポン酢に夢中。ポン酢しょうゆに比べ種類が少なすぎる。悩ましい。
©藤本タツキ/集英社
藤野と京本は、漫画を描くことが好きな田舎の小学生。不登校の京本は、藤野が打ちのめされるほどに高い画力を持っているが、藤野の漫画を尊敬していた。共同で漫画を描き始めた二人は“藤野キョウ”としてデビュー。やがて京本は美大進学を目指す。別々の道を歩み始めた二人に、ある“事件”が襲いかかる。
読み進めるうちに、多くの人が実在の事件を思い起こすだろう。その瞬間、物語の中にあった世界が、読み手の世界=現実につながり、彼女たちの感情が一気に流れ込んでくる。戸惑い、悲しみ、そして“描くこと”でつながっていた二人の心情までも。藤野と京本は互いの“背中を見て”高め合ってきた。嫉妬と憧れ、努力する楽しさと達成感。すべてが圧倒的な画で語りかけてくる。すごい。
誰もが理不尽な現実から逃れることはできない。だが、起こってしまったことへの怒りや憎しみに振り回され続けるのは、あまりに不毛だ。“ルックバック”。過去にとらわれず、「(あの日の)背中を見て」という著者の祈りのような願いに胸が震えた。
『ルックバック』
藤本タツキ著
集英社 全1巻 484円
小学生の藤野と不登校の京本。彼女たちの描いた4コマ漫画が学年新聞に掲載され、交流が始まる。「少年ジャンプ+」サイトで、公開2日目で400万閲覧数を記録した話題作。
漫画好きならこれも必読!
『ひらやすみ』
真造圭伍著
小学館 1巻~ 650円
殺伐とした世の中にだって“安全地帯”はある
メシ友だったおばあさんから譲り受けた平屋で暮らす、青年ヒロトといとこ・なつみの優しくて、温かい日々を描く。
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2021年10月号掲載