辻さんが「20代のころから変わらず好き」という、カチッとしたフォルムのバッグ。言われてみれば確かに、スタイリングの中にはいつもクラシックなハンドバッグだったり、バニティだったり、エレガトなたたずまいのバッグがしっかりと存在。トレンドやブランドの価値にとらわれずにコーディネートの作用で選んだ、バッグの形。またひとつ、彼女が素敵な理由を学びました。
「“カチッ”としたバッグ」
つや感のある、スパゲティストラップのワンピースに、クラッチではなくカチッとしたハンドバッグを合わせる。「ワンピースのイメージに引っぱられずに、ほんのり意外性を演出して。あえて違和感を楽しむことで、スタイルが途端に新しく見えたりするんです」。ブラックやブラウンなどのベーシックカラーを選びがちなバッグも「スタイリングの遊びや、自分の個性となるような思い切った色を選んでほしい」と辻さん。
バッグ(14.5×19.5×8)¥274000/エイチ アイ ティー(ロウナー ロンドン) ワンピース¥20000 /エディション 表参道ヒルズ店(エディション) ストール¥36000/ジャーナル スタンダード レサージュ青山店(アソース メレ) 頭に巻いたスカーフ¥22685/スマイソン
男性にとっての腕時計のように、どんなバッグを持つかでパーソナルが見えるんです
久しぶりにデニムのスカートをはきたくなって今シーズン購入したのですが、スタイリングを考えたときに“持ちたい”と思ったのが、このバッグ。ちょっとレトロで、かしこまっていて、華やかさもあって。もっと使い勝手のいい便利なバッグはあるけれど、バッグはパーソナルな一面を語るものでもあると思います。男性がどんな腕時計をしているかで、なんとなく人柄がのぞけたりしませんか?女性にとってのバッグも同じで、自分をどう見せたくて、こんな思いがあるからこのバッグを持っている……そんなこだわりが、スタイルを素敵に見せてくれるんです。
「デニムのリメイクスカートってすごく懐かしいアイテム!昔よくこんな格好をしていたのですが、今シーズンまたはきたくて。やっぱり自分の中での流行が一周した感じがあるのかも」。そのスタイルによそゆきな表情のバニティバッグを合わせるのが、大人で小粋で今っぽい選択。「展示会でひと目ぼれして、悩んだ結果に同じデザインのシューズを購入したロジェ ヴィヴィエ。でも、やっぱりバッグも欲しくなっちゃいますね」。
バッグ(17×19×10)¥233000/ロジェ・ヴィヴィエ・ジャパン(ロジェ ヴィヴィエ)ニット¥15000/ユナイテッドアローズ有楽町店(ユナイテッドアローズ)スカート¥36000/アストラット新宿店(アストラット)
楽しみたいスタイルは日々変化。でも、バッグの魅力は変わらずどんな装いにも味方してくれる
今、欲しいバッグのひとつ「ガーランド ドゥ カルティエ」。新しいのに、ずっと昔からあるみたいたたずまいと絶妙な色合いが好みです。グリーンのほかにレッドもあるのですが、どちらも初めて見たときに“絶対に持ちたい”と思いました。私がいちばん大好きな、’70年代のコンサバっぽいスタイルに合わせたら、すごく面白いスタイルができ上がりそうな気がして。フレアシルエットのパンツに、シルクっぽいシャツを合わせて、仕上げにこのバッグ。挑戦したいスタイルは日々変化するけれど、カチッとしたフォルムはいつもユニークな役目を果たしてくれます。
カルティエを象徴するジュエリーボックスを、新たなバッグのデザインとして落とし込んだ「ガーランド ドゥ カルティエ」。八角形のクラシックなフォルムに、ゴールドの花飾りが施されたバッグは、上品で落ち着いた女性に似合いそうな印象。でも、辻さんのスタイリングに合わせると、バッグは"彼女らしさ"として映るから不思議。「バッグは、選ぶ人のマインドこそが大切なんです」。
バッグ(24×30×9)¥302500/カルティエ カスタマー サービスセンター(カルティエ)シャツ¥165000・パンツ¥87000/マディソンブルー 靴¥103000/ロジェ・ヴィヴィエ・ジャパン(ロジェ ヴィヴィエ)
辻さんセレクトの【“カチッ”としたバッグ】をチェック!
「カチッとしたバッグのなかでも、チェーンを長くも短くも持てたり、ラフで遊びっぽく使える存在」。アレキサンダー マックイーンのもの。辻さん私物
「古着屋さんで見かけそうなレオパードのバッグ。縦長のフォルムや、アクリルのパーツを使用したりと仕上がりは、きちんと“今”」。(20×21×7)¥20000/ノーブル コレド日本橋店(ヘイ ミセス ローズ)
「このグリーンが珍しくてひと目ぼれ。どんなスタイルに合わせても“変わらないよさ”を表現してくれる、普遍的な魅力に惹かれます」。辻さん私物
「保守的に選ぶよりも、自分らしい“とっておきの色”を選んで」。(20×23.5×10)¥354000/エイチ アイ ティー(ロウナー ロンドン)
「スマイソンのバッグ。クラシックな形でも、ハンドルの作りがユニーク」。辻さん私物
「オールアクリルのバッグを探していて出会ったもの」。(13.5×17.5×5)¥36000/ジャーナル スタンダード レサージュ 青山店(レスピロ)
「丁寧に、気持ちを入れて使いたくなる白いバッグが大好き」。(14×11×10)¥336000/ブルーベル・ジャパン(マーク クロス)
私のスタイルをユニークにする。バッグは「面白さ」で選びたい
カチッとしたバッグは、私のスタイルにとってユニークな存在。20代のころ「あの人って、いつもこんな格好しているよね」って、そう言われることに憧れていたことがありました。今ここにその人がいなくても、みんながイメージできて話題にしてもらえる個性があるのは、とてもいいことだなって。
そのころからルールというか、自分のユニフォームみたいなものを選んでいくようになったんです。
スカートはミニ丈でジャストかハイウエスト、スニーカーは履かずにヒールで、メイクはしてないみたいに薄く、髪はウェーブのロングヘア。
そうやって少しずつつくっていった自分らしいスタイルにカチッとしたフォルムのバッグは、ぴったりだって思いました。たとえば、ロゴTシャツ+黒スキニーのときにもこのバッグ。かしこまった印象のあるバッグと、そのスタイルはちょっと方向性が違うように思えるかもしれません。
でも、それでいいんです。イメージどおりのものは退屈。素敵な人がどうしてそう映るのかを考えたときそれってスタイルの中に意外性があるからだと思うんです。カチッとしたフォルムのバッグは、私のスタイルの意外性で一辺倒にならないユニークさを表現してくれるもの。
お行儀のいいきちんとしたバッグが、合わせる服や持つ人によって違った印象に映る。だから、おしゃれは楽しい。
バッグを選ぶときは、単体の価値や魅力、トレンドではなく「私が持ったら面白くなる」ことが重要。
ずっと愛用しているフェンディのピーカブーに出会ったときもそんなひらめきを覚えてうれしくなったことを覚えています。
撮影/永瀬沙世 ヘア/Dai Michishita メイク/鷲津裕香〈Beauty Direction〉 スタイリスト/辻 直子 モデル/エミ レナータ 取材・文/櫻井裕美 ※( )内の数字は(高さ×幅×マチ)で単位は㎝です