いつ見てもやわらかい印象で、“怒り”とは無縁に見える壇蜜さん。どうしたら心穏やかにいられるの? 怒りへの対処法を聞いてみました。ポイントは、しなやかに怒りを“回避する”ことだとか。
壇蜜さん
だん みつ●1980年12月3日生まれ。TBS系「サンデー・ジャポン」レギュラー出演中。著書『結婚してみることにした。』(文藝春秋)発売中。
怒らないことはあきらめること。発散や共有より忘れるを選びたい
「怒りって“思ってたんとちゃう!”というものが多いように感じますが、それは期待があるから出る感情。期待を放棄すれば、怒らずにすみます。誰かにぶつけても、共有しても、期待は手放せません。忘れるのが得策だと思います」
ちょっといい石けんを買って丁寧に使う。ものも、時間も、自分も有限だと思うと怒りが消えていく
「石けんがすり減っていく様子を眺めてほしい。今って減っていくものを見る機会が少なくて、すべてが永遠にあると勘違いしてしまう。有限を意識すると、“大事にしよう”という気持ちが生まれて、正気を取り戻せますよ」
怒りの感じ方、表し方は性能の違うガスコンロみたいなもの
「とろ火の人、すぐ火が消える人、鍋からはみ出るほど強火の人。怒りの火がどんなものかはその人の性分次第。怒り方が自分と違う人を見たとき、“おたくのガスコンロはそんな感じなのね”くらいの感覚でいられると楽です」
怒りが消えない日は深夜の通販番組
「通販番組はいいことしか言わない。称賛ばかり聞いていると、何も考えずにすむんです。いつの間にか“へーお尻痛くならないんだ”“生卵が!?”って見入っちゃってます(笑)。これは壇ノーベル賞ものの大発見です」
怒るのって下手で当然。上手だったら芸人さんやキャバクラの方のようにそれだけでお金がもらえるんですから。
「キャバクラ嬢は、“来るのが遅いよ!”って上手に怒ってお客さんをいい気分にさせるんですよ。怒りをタイミングよく適切に出せる人は、プロとして技術を磨き、お金を稼いでいる。怒りを扱うのってそれくらい難しいんです」
なにかと怒られがちな人はせめて「人の目を見て挨拶する」と何かが変わるかもしれません
「見た目や言い方を強くして怒られにくくしようという風潮がありますが、なかなか難しい。でも、挨拶なら、誰にでもできると思います。目を見て挨拶してくる人に、なかなかいちゃもんはつけられないものです」
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“負けるが勝ち”の精神で怒りをやわらげる
“怒り”とは無縁のように見える壇蜜さん。その理由は……?
「通っていた中学と高校が、女子校ならではの厳しい校風で、感情を激しく出すのはよくないことだとしつけられていたんですね。早いうちから怒りの感情を抑える訓練ができていたんです。そのおかげで、無意識のうちに怒りを手放すことができているような気がします」
現在、怒りに直面する場面が増えているのは、「自分の考えとまったく同じであることを求めすぎているから」だと壇蜜さんは分析。
「たとえばコロナ予防にも、意識のグラデーションがあるじゃないですか。そのなかで自分とまったく同じ色の人を求めてしまうと、怒りを抱いてしまう。“なんでコーラルピンクじゃないの?”と差に敏感になりすぎるのではなく、“なんか紫っぽいけど、同じピンクだしいいかぁ”くらいの寛容さを持つことが大事なんじゃないでしょうか」
また、他人からの怒りは“譲る”ことで対処しているそう。
「私は、“負けるが勝ち”“譲るが得”という向き合い方で怒りを処理します。ぶつかるのではなく、回避ですね。相手の落としどころや逃げ道を探しながら、負けてるふりをして、自分や相手の怒りをやわらげる。これは、人によっては“そんなの弱い!”“だから相手がつけ上がるんだ”と感じてしまうようなやり方だと思います。対男性の場合は特に。でも、相手と強くぶつかったり、論破したりするやり方は私には向いていません。怒りも人それぞれなら、対策も人それぞれ。怒りのかわし方も多様であることを認めて、こちらの方法を否定しないでほしいなと思います。みんな“怒りは嫌だ”という気持ちは同じなんですから」
撮影/押尾健太郎 ヘア&メイク/妻鹿亜耶子 スタイリスト/奥田ひろ子 ※BAILA2020年10月号掲載
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