映画『名も無き世界のエンドロール』で、女優として経験した新たな挑戦。そこで学んだ“心を動かすこと”の大切さ。あらためて自分の感情と向き合い始めた中村アンが語る“喜怒哀楽”とは?
「つらいことも、楽しいことも、すべての経験を大切にちゃんとココロを動かしながら歩いていきたい」
ドレス¥140000/ブラミンク ピアス¥35000/エディット フォー ルル(アサミ フジカワ)
【喜】舞い上がらず、浮き足立たず喜びは静かにかみしめたい
基本、喜びは静かにかみしめるタイプ。だからこそ、実はサプライズはちょっと苦手。驚き、戸惑い、感謝……いろんな感情が入り交じり「お祝いしてくれた人たちに失礼がないようにしなければ」と逆に緊張してしまうんですよ(笑)。ウワッと舞い上がると大事なものを見落としてしまいがち。ときに喜びはフワフワと視界を狭くしてしまう。だからこそ、ちゃんと地に足を着けていたいと思う。たとえば、雑誌の撮影現場ではたくさんの楽しみと喜びに出会うけど、そこにだけ目を向けて突っ走ってしまうと自己満足で終わってしまう。本当の喜びは雑誌が完成したとき。「よかったよ」の感想が届いたときに心からの喜びを感じることができるんです。それは女優のお仕事も同じです。ちなみに、私は褒め言葉もうのみにはしないタイプ。うれしいし、ありがたいことだけど、その言葉に満足してしまうと成長できないから。欲しいのはやさしい言葉より厳しい言葉。一度は落ち込むかもしれないけど、負けず嫌いの“なにくそ根性”で復活(笑)。結果、それが私をいつも成長させてくれるんです。
【怒】起こるのってすごく疲れる。でも、心を動かすのは大切なこと
心がグツグツと煮えたぎり、相手を許せず責め立てたり、そんな自分が嫌になり自己嫌悪に陥ったり……心があっちに動いたり、こっちに動いたり、怒るのってすごく疲れますよね(笑)。だからこそ、ネガティブな出来事は怒りに変わる前に解決、思ったことは小出しに伝える。私、普段はめったに怒ることはないんです。そんな私が怒りの感情を爆発させたのが映画『名も無き世界のエンドロール』。私が演じたリサは高飛車な政治家令嬢で“イヤな女”。それまで演じたことのない役だったし、台本には演じたことのない振り切った感情の動きが綴られていて。「私にできるのかな」と「今までのイメージを変えることができるかもしれない」が入り交じる不安と期待が半々のスタートだったのですが、結果、「挑戦してよかった」と思える作品になりました。女優のお仕事を心から「楽しい」と思えるようになったのも、いろんな感情を経験して自分の引き出しの中に入れたいと思うようになったのも、この作品がきっかけ。めったに怒らない私ですが、人生で2〜3回、感情を爆発させたことがあって。それは嫌な思い出だけどリサの演技のいい参考資料になったんです(笑)。そんなお芝居の現場で生まれた「楽しいことも悲しいことも経験して心を動かしながら生きていきたい」という思い、それは私の人生もまたより豊かに彩ってくれそうな予感がしています。
【哀】悲しみにとらわれてしまう前に自ら気持ちを切り替える
悲しいことがあったときは、気がすむまで落ちたら「一回忘れる」。この気持ちの切り替え方法は10代のころにチアリーディングで学んだもの。たとえば、最初のワザを失敗してしまう。その気持ちを引きずったまま次のワザに挑むと必ずといっていいほどそれも失敗してしまうんですよね。だからこそ、気持ちをすぐに立て直す、そのトレーニングを積み重ねてきたので。ネガティブな気持ちに引っぱられ、それを引きずり続けると、ケガをしてしまうことだってある。それはきっと人生も同じ。よりよい明日のためには気持ちを切り替え次を頑張る!どうにもできない悲しみや現実もあるけど「仕方がない」というあきらめもときには大事!
【楽】カメラの前に立つ時間が好き。今、女優のお仕事がすごく楽しい
今の私が楽しんでいるのはやっぱり女優のお仕事なのかな。まだまだ未熟だからこそ現場に向かう車の中では常に緊張。でも、カメラの前に立ちカチンコが鳴るとすべてが吹き飛びます。お芝居は、共演者に連れていってもらう部分も大きい。『名も無き世界のエンドロール』でも新田真剣佑君の演技が素晴らしくて。それに引っぱられるようにグンと入り込むことができた。不安だった長ゼリフもスラスラと自分の中から出てきたりして。完成した作品を観るとよく思うんです。「なんでできたんだろう」「あの演技をもう一度やれといわれてもきっとできない」って。やってみないとわからない、その瞬間にしかできないものがあるからこそ、お芝居は楽しい。カメラの前に立つ前は悩み考え不安になるけど、その時間も私にとっては大切で。それはスポーツでいうなら練習期間のようなもの。何度も練習して「逆上がりができた!」みたいな(笑)。できなかったことができるようになっていく、その実感と達成感は練習期間があるからこそ味わえるもの。それは私に小さな自信を届けてくれるんです。
©行成薫/集英社 ©映画 「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
『名も無き世界のエンドロール』
強い絆で結ばれたキダ(岩田剛典)とマコト(新田真剣佑)。10年の歳月をかけ、それぞれが表と裏の社会でのし上がり、マコトは住む世界の違う女性にプロポーズをしようとしていた。だがそれは日本中を巻き込む“ある壮大な計画”だった。カギを握るヒロインを山田杏奈、中村アンが演じる。
原作/行成薫 監督/佐藤祐市
配給/エイベックス・ピクチャーズ
2021年1月29日(金)全国ロードショー
撮影/長山一樹〈S-14〉 ヘア&メイク/笹本恭平〈ilumini.〉 スタイリスト/加藤かすみ 取材・原文/石井美輪 構成/岩鼻早苗〈BAILA〉※BAILA2021年1月号掲載
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