本が誘う、まだ知らない世界へ! 今月のオススメBOOK3選
『珠玉の短編』山田詠美 講談社 1500円
スプラッタ小説を書く夏耳漱子が「珠玉の短編」の意味にとりつかれる表題作や、男女の三角関係にハッとする「生鮮てるてる坊主」など、ナマな人間の感情と顰蹙の味わいが詰めこまれた一冊。
『このあたりの人たち』川上弘美 スイッチ・パブリッシング 1500円
「このあたり」というどこにもない町を舞台に、住人たちを26のスケッチで描く。ずっとあいてるスナック。ライバル関係の羊子と妖子。銅像になりたい道夫……。不思議な読み心地が夢のよう。
『美しい距離』山崎ナオコーラ 文藝春秋 1350円
若くして余命宣告を受けた妻。夫は義母たちに遠慮もしつつ、最期のときをどう過ごすか悩み続ける。〈妻はより神に近づいた〉。夫婦の絶え間なく変わる距離を繊細に描いた、心にくる中編作。
文/江南亜美子