『私をくいとめて』 綿矢りさ 朝日新聞出版 1400円
食玩作り、ひとり焼き肉と、孤独も慣れっこのもうすぐ33歳の私。想像上の友人〈A〉と脳内対話をする毎日だから寂しくない! 変化を恐れるあまり臆病になる女性の姿を描く長編。共感必至。
『そういう生き物』 春見朔子 集英社 1300円
10年ぶりの再会から、同居が始まる。顕微鏡をのぞくのが趣味の理系の千景と、スナック勤めのまゆ子。やがて意外な過去が明らかに。セクシャリティの問題を軽やかにすくい取る、新人のデビュー作。
『野良猫を尊敬した日』 穂村弘 講談社 1400円
登山した日の帰り道の平坦さ。本当に追い詰められたときにわく自分の意外な感情……。普段見過ごしがちな小さな違和感を、ユーモラスにとらえる62編のエッセイ。〈私はというと、曖昧だ〉
文/江南亜美子