【韓国ドラマを見るときの韓国ごはん〈まとめ〉】 韓ドラに頻出の名物メニュー9レシピ

見ているだけでお腹がすいてくる、韓国ドラマに登場する料理たち。韓ドララバーズの二人、料理家ワタナベマキさんと美容ライター山崎敦子さんのアツアツ対談からドラマや映画の頻出料理をひもとき、あの作品の名物メニューをレクチャー☆

マキ　山崎さんの韓国ドラマや映画のコラムのファンだったので、感激です！

山崎　嬉しい！ 私もレシピを拝見していました。マキさん、韓国ドラマお好きなんですよね!? 何かきっかけが？

マキ　コロナ禍中、仕事仲間にすすめられ、「梨泰院クラス」を見たんです。学園モノかと思っていたほど何の知識もなく見たのに、面白さにズブズブズブ……。特に主人公を演じるパク・ソジュンに魅了され、彼が出演する「キルミーヒールミー」「魔女の恋愛」など全作品チェックしたあとは、あらゆる作品に手を出し……。

山崎　わかります〜。私、昔からドラマ好きでしたが、近年は歌舞伎やサッカーにハマっていたからノーマークで。7年前、ラブコメの金字塔「最高の愛〜恋はドゥグンドゥグン〜」を見た瞬間、なんて面白いの!?と。当時の私、体からピンクのほわほわが出ちゃってたみたい（笑）。そこからはもう、韓流の沼にどっぷりです。

マキ　これまでの人生で何かにハマるタイプではなかったのに、今ではドラマ観賞が寝る前の楽しみに。

山崎　韓国ドラマは長尺だし、話数が多いけれど、脚本も演技も演出もよく練られているので、それすらも気にならない。小説を読むように、映画館で映画を観るように、その世界に没入できますよね。

マキ　飽きさせない何かがありますね。

山崎　これは私見ですが、日本も韓国も儒教がベース。家族団らんを大切にするとか、目上の方を敬うなど根底の部分は同じ。共通点はありつつも、違いがあるから、興味をそそられるんですよね。

マキ　個人的には作品の中で食事シーンが多いのも惹かれる理由のひとつ。

山崎　確かに。仕事が多忙でも、失恋しても、逃亡していても食欲旺盛ですね。

マキ　仲間や知り合いのかけ合いに、「パンモゴッソ？」が飛び交う。これは直訳の「ごはん食べた？」というよりも「元気にしてる？」的なニュアンスですよね。

山崎　うんうん。“食べることは生きること”なんですよね。そのせいか魅力的な食事のシーンも多くて、バイラ読者におすすめなのは、「酒飲みな都会の女たち」（1）。

マキ　居酒屋のハマグリ料理や玉子焼きとともに、韓国焼酎のソジュやそれをビールで割ったものを浴びるほど飲む！

山崎　女性たちが豪快な食べっぷり飲みっぷりゆえに私まで気分爽快に！ あとは駆け出しの脚本家の主人公に、3人の女性の共同生活をコミカルに描く「恋愛体質〜30歳になれば大丈夫」（2）も最高。

マキ　ミナリ（セリ）焼き肉や牛スユク鍋など、そそられる料理がたくさん。観賞しながら気になる料理をメモすると、かなりの量になっていることも多いです。

山崎　韓国ドラマって、料理を含めて古くから伝わるしきたりや文化を大切にしていて。それが決して古くさく描かれていないし、むしろリスペクトを感じるんですよね。だから私たちも歴史や文化についてさかのぼって知りたくなってしまう。

マキ　ジョンは家族行事の恒例メニューで、嫁いだ奥さんが作るもの、と映画『82年生まれ、キム・ジヨン』で学びました。山崎個人的には「愛だと言って」（3）にもシビれました。父を奪った、実は復讐したい愛人の息子を、自分でも知らないうちに好きになっていくヒロインの心の動きがきめ細かに描かれ、その心情がククスの優しさと絶妙にリンクする。

マキ　揺れ動く感情を料理に託すのが本当に上手。「酒飲みな都会の女たち」や「ボーイフレンド」でも、グチを言い合いながらタッパルを豪快にほおばったり、「ユミの細胞たち」では彼氏のためにオモニ（母）の味である「わかめスープ」を作ったり。

山崎　食卓に並んでいる料理がリアルな上に俳優たちの食べ方が本当に魅力的。夜中だろうがなんだろうが食べたくなっちゃう。日本のドラマだと、ここまでの衝動はないのに。

マキ　ですよね。私も妄想がふくらんで、「作りたい！」という欲望が抑えきれなくなり、映像を何度も行ったり来たりしながら再現してしまうという……。

山崎　私もです（笑）。マキさんの推しであるパク・ソジュンが出演する料理バラエティ「ソジンの家」（4）で作ったチキンをアレンジしたチバプ。作りましたよ。

マキ　嬉しいです。チキンは韓国人のソウルフードだから、色々な作品に登場しますよね。ちなみに私は、砂糖がまぶされたポテトのハットクも作りました（笑）。あとは共演者のチェ・ウシクや、BTSのテテたちが本当におちゃめで自然体。そしてみんなのオッパ（お兄さん）として慌てず、ゆらがず、淡々と……でもちょっぴり人見知りな（素顔が垣間見える）ソジュンの素敵さといったら♡

山崎・マキ　紅一点として出演するチョン・ユミさんになりたいですよね（笑）。

山崎　合宿所での共同生活経験がある人が多いからか、アイドルも俳優も料理上手が多いことにも感心します。

マキ　番組内で作った料理のレシピも紹介するから、視聴者が再現しやすいですし。

山崎　今回は作品に登場する料理をマキさんが独自に解釈し、作ってくれるなんて。ワクワクが止まりません！

マキ　皆さんもぜひ、韓国ドラマを見て、作って、食べてみてください。

ソウルフードはあんなドラマやこんな映画にも

山崎　伝統料理であり、テレビや映画の食事シーンでよく登場するのがジョンですね。

マキ　「恋愛体質〜30歳になれば大丈夫」「賢い医師生活」「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」などでも、ジョンを囲むシーンが。

山崎　確かにありました！「雨の日はジョンを食べに行こう」が合言葉らしいですしね。

マキ　諸説あるそうですが、ひとつは“雨音とジョンをちびちび焼く音が似ているから”だそう。比較的作りやすいし、具材を変えてアレンジもしやすいので、韓国料理ビギナーの方にもぜひ。

山崎　食卓を囲む料理といえば、タッパルも！

マキ　居酒屋さんには必ずあるメニューで、ビニール手袋をはめ、手で豪快に食べます。本式は鶏の足ですが、今回は手羽中で。下ゆですると、味がしみやすくなるし、やわらかくなります。

山崎　ソジュ（韓国焼酎）との相性もぴったり。居酒屋といえば、そこが舞台の中心になる「梨泰院クラス」は外せませんね。

マキ　もう何度見たことか……♡ 13話で、CEOに昇格し、サングラスをかけてベンツを運転するパク・セロイと同じくらい、登場する料理も魅力的。復讐相手に出す渾身の豚もやし炒め、そしてスンドゥブチゲ！ おぼろ豆腐を使うのがポピュラーですが、絹ごし豆腐でも代用可ですよ。

美しすぎる体軀のベースは良質なタンパク質!?

山崎　作品に出てくる韓国の俳優は、体つきもいいし、とにかく肌が美しい人が多い。

マキ　発酵食品やお肉をたっぷりとっているからでしょうか。私、海外に行くと代謝が滞ることが多いけれど、韓国だとアップしますから。

山崎　わかります〜。最もポピュラーなお肉といえばチキン。映画『エクストリーム・ジョブ』では、麻薬捜査班が密輸の実体を操作すべく、アジトの目の前にあるあるチキン屋で監視していたのに、店主の都合で閉店を余儀なくされ……。

マキ　なぜか絶対味覚を持つ刑事が店を引き継ぐことになり、新メニューが大当たり!!（笑）

山崎　マキさんが愛するパク・ソジュンなど、有名俳優が食堂を切り盛りするバラエティ番組「ソジンの家」にもチキン料理は出てきますね。

マキ　はい♡　中でも、余ったチキンを刻んで具材とともにご飯に混ぜる“チバプ”というアレンジ料理が本当に美味しそうで。

山崎　私、再現しました♪　あと、「恋愛体質〜30歳になれば大丈夫」のミナリ焼き肉も。スーパーでせりを見つけたときは飛びつきましたよ！

マキ　私もです（笑）。ドラマの中のセリフ「焼き肉はミナリじゃなきゃ」に大いに影響を受け、焼き肉の新しい食べ方と美味しさを知りました。

素朴系からジャンクまで、味の振り幅にキュン♡

マキ　韓国料理には滋味豊かな料理も多いですね。平壌冷麺やククスと呼ばれる麺料理がそう。

山崎　「愛だと言って」では、ヒロインと主人公の男性がククス屋で食す場面があるのだけど、互いに相手を思いやるやわらかな空気感が、ククスの温かさと重なってひしひし届く。思わずジーン。

マキ　切なくて優しくて……静かな料理と心奥に秘めた感情がリンクして、胸に迫ります。

山崎　邦題だと愛にしがみつく印象を受けますが、原題は“（それを）愛と言います”。ヒロインは、ただ守ってあげたいと思っていただけで……。

マキ　それがもはや“愛”なんですよね（涙）。

山崎　一方で、ジャンクなファストフードが多いのも、韓国フードの魅力のひとつ。

マキ　出前を頼むシーンでよく出てくるのがハットク。ポテトの角切りをまぶしたり、砂糖やケチャップをつけるのが韓国式。今回はホットケーキミックスで作れるようアレンジしました。

山崎　あと、トッポギも屋台や粉食屋の定番。

マキ　「ユミの細胞たち」「二十五、二十一」に出てきましたね。「ラケット少年団」に登場したのは生クリーム入りのまろやかな“ロゼ”。

山崎　辛さが苦手な若者が増えていることから生まれたそう。伝統も進化しているんですね。

撮影／峠 雄三　スタイリスト／伊東朋恵　調理／ワタナベマキ　取材・原文／広沢幸乃　構成／渡辺敦子　※BAILA2023年10月号掲載