編集ぶん&ライターくぼやんがアートを紹介する連載【編集ぶん&ライターくぼやんのARTをもっと深く感じたい!】。第3回は、東京都写真美術館で開催の「W.ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」を訪問しました。
今月の展覧会は…「W.ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」@東京都写真美術館
“「偉大な報道写真家」の、芸術的な本質に惹かれる写真展”

1 ユージン・スミスは自分の住むNY6番街のロフトの窓際に、街を見下ろす約6台の定点カメラを設置。偶然の風景を撮影した。窓ガラスの割れ目をフレームに、通りすがりの女性を写した1枚は「報道写真の大家」と呼ばれてきた彼の固定イメージを裏切るような洗練された美的感覚が光る作品

W.ユージン・スミス 《セルフ・ポートレイト》 1957年頃
©1957, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith 画像提供: Center for Creative Photography, the University of Arizona: W. Eugene Smith Archive
2 破れた窓ガラスにレンズを向けたカメラと街を見下ろすユージン・スミス

3 1971年に彼自身が企画・構成した展覧会「Let Truth Be the Prejudice」を再現した第3章の展示
撮影/新井孝明

W.ユージン・スミス《無題(認定患者の遺影を持つ親族たち)》〈水俣〉より
1972年 東京都写真美術館蔵
©Aileen Mioko Smith
4 パートナーのアイリーン・美緒子・スミスと熊本県水俣市に住み、3年間水俣病を共同取材した〈水俣〉シリーズ

ライターくぼやん
彼の人生やキャラクターにも興味が湧いてきます
編集ぶん&ライターくぼやんが、学芸員 室井萌々さんに聞いた!

学芸員
室井萌々さん
写真・イメージ論を専攻し、学部時代からユージン・スミスを研究。’24年より現職。本展が、東京都写真美術館で初めて手がける展覧会。
©Yume Nakayama
ぶん メインビジュアルの、女性の後ろ姿を写したモノクロ写真(1)がとてもスタイリッシュ!
室井 ユージン・スミスって、今では「偉大な報道写真家」と捉えられがちなのですが、音楽好きで非常に芸術家らしい面を持っています。この1枚はそれを象徴するような作品。1950年代半ばに、彼がNYで住んでいたロフトと呼ばれるアパートで撮影されました。
くぼやん 〈私の窓から時々見ると…〉というタイトルとセルフポートレート(2)の撮影風景が示すとおり、部屋から見下ろす街角で撮られた偶然の一コマですね。
ぶん ロフトに集ったアーティストのジャズや映像が流れ、当時の空気が感じられます。メモだらけの壁や落書きのあるロッカーも再現されていて驚きました。
室井 写真だけでも魅力的なのですが、彼の内面を知るともっと面白い。アリゾナ大学にはネガやプリント以外にもノートや領収書など信じられない量の資料が保存されています。彼のパートナーだったアイリーン・美緒子・スミスさんと現地を訪れ、探し出してきました。
くぼやん メモの折り目や汚れに彼の性格がにじむようです。1971年の展覧会を再現した第3章は、密度の高い作品の展示方法(3)も臨場感たっぷりですね。
室井 当時の展示の雰囲気を、私自身も見てみたくて。生前の彼を知るアイリーンさんの証言が大きな助けになりました。今回の展示には、彼の生きた姿とともに、ユージン・スミスのパートナーであり〈水俣〉シリーズ(4)の共同制作者であった彼女の存在を埋もれさせてはならない、という思いもあります。
くぼやん アイリーンさんと室井さんの目を通すことで、彼の人間的な魅力も伝わってくる展覧会でした。
ぶん 報道に始まり、ロフト時代を経て、再び報道に戻っていく。生涯を通して見ると、彼のアーティスティックな感性と、被写体に対する真摯な姿勢はずっと変わらないのだな、と感じられますね。
訪れたのは…東京都写真美術館
第二次世界大戦や、晩年の〈水俣〉シリーズなどの報道写真が有名なアメリカの写真家W.ユージン・スミス(1918-1978年)。1950-1960年代のNYで撮影した作品を中心に、新たな人物像に迫る。
「W.ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」
〜6/7
東京都目黒区三田1の13の3 恵比寿ガーデンプレイス内
10時〜18時(木・金曜〜20時。入場は閉館の30分前まで)
休館日/月曜(5/4は開館)、5/7
入館料/一般¥700ほか
https://topmuseum.jp
他にも行きたい展覧会
「チュルリョーニス展 内なる星図」@国立西洋美術館

リトアニアを代表する画家で、音楽家でもあったチュルリョーニス(1875-1911年)の、日本で34年ぶりの大回顧展。絵画や版画など約80点の作品が織りなす、幻想的で音楽性を感じる世界に没入して。
【展覧会DATA】
〜6/14
東京都台東区上野公園7の71 企画展示室B2F
9時30分~17時30分(金・土曜〜20時。入館は閉館の30分前まで)
休館日/月曜(5/4は開館)、5/7
入館料/¥2200ほか
https://2026ciurlionis.nmwa.go.jp
東京都美術館開館100周年記念「アンドリュー・ワイエス展」@東京都美術館

アンドリュー・ワイエス(1917-2009年)の没後初となる大回顧展。アメリカの同時代の前衛絵画と距離を置き、身近な人々と風景を描き続けた画家。光と影のコントラスト、緻密で繊細な描写が、作家の精神世界を映し出す。
【展覧会DATA】
~7/5
東京都台東区上野公園8の36
9時30分~17時30分(金曜〜20時。入室は閉室の30分前まで)
休室日/月曜(5/4、6/29は開室)、5/7
観覧料/¥2300
https://wyeth2026.jp/
イラスト/佐伯ゆう子 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2026年6月号掲載

30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。














































編集ぶん
モノクロ写真の洗練された美しさに見惚れてしまう