仕事もあるのに、30歳を超えて“好きなこと”にチャレンジすることなんてできるの!? いろいろな不安をはねのけ、本気で夢中になれることに挑戦した女性の天職ルポ。今回ご紹介するのは大学院でフランス語を学ぶ宮川 朋さんです。
私、30歳から好きなことに“飛び込み”ました!
宮川 朋さん 30歳
職業:大学院生
好きなこと:フランス語やフランスの文化
飛び込んだ時期:大学院を合格した30歳
【私が好きなことに“飛び込む”まで】
![フランス大好き。出版社を退社し、30歳で大学院に進学した女性の話【30歳からの挑戦②】_1](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/a4/a46d8b9a-8a0d-42a9-a194-422749b4b97f.jpg)
~小学生ごろ
読書が大好きな女の子
13歳
英会話を習い、外国語の楽しさを知る
15歳
高校の第二外国語でフランス語を選択
![フランス大好き。出版社を退社し、30歳で大学院に進学した女性の話【30歳からの挑戦②】_2](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/de/de22c3e0-abf4-4c24-b201-a682c5f9d4e1.jpg)
22歳
大学院に進学。在学中にパリに留学も
![フランス大好き。出版社を退社し、30歳で大学院に進学した女性の話【30歳からの挑戦②】_3](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/27/273a8fbe-abdb-412d-ae67-17c58f06219c.jpg)
25歳
就職活動を経て出版社に就職。入社して4カ月後「やはりフランス語に ふれていたい」とフランス語のスクールに通うことに
28歳
「フランス語をもっと生活のなかで使いたい」と感じ、勤務先でフランス語にかかわる業務や部署がないか調べまくる
![フランス大好き。出版社を退社し、30歳で大学院に進学した女性の話【30歳からの挑戦②】_4](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/d1/d1e105e9-215e-4f61-b216-3e619db8e652.jpg)
29歳
勤めていた出版社を退社
![フランス大好き。出版社を退社し、30歳で大学院に進学した女性の話【30歳からの挑戦②】_5](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/7f/7f83b083-d126-4b8a-819f-c5056967c052.jpg)
30歳春
大学院に進学。フランス文学を再び学び始める
フランス語がないと自分でいられない
大好きなフランス語を仕事にしたい。その思いがあきらめられず、新卒で入社した会社を辞めて大学院に再入学したという宮川さん。
「高校生から社会人になるまで学び続けたフランス語。仕事にしたいとぼんやり思っていたものの、就活の際にあきらめてしまったんです。私が就活したときはリーマン・ショックの影響もあり、とても厳しい時代だったし、先に就職した大学の友達を見て、フランス語を仕事にするのはとても難しいと感じていたから」
もうひとつの好きだったもの、“本”を選び、出版社を中心に就活。
「留学していたとき、向こうの出版社でインターンをしていたんです。フランスの本を日本で売る仕事で、とても楽しかった。こういう仕事ができたら……と思っていましたが、実際に就活を始めてみたら、フランス語を使う部署がある出版社は見つからなくて。でも、本とフランス語がつながらなくても、本が好きだからまぁいいかとも思っていました」
25歳で大手出版社に入社。ファッション誌の編集部に配属される。
「“もうフランス語はいいや!大好きな本を精いっぱい作るぞ!”と、ポジティブな気持ちでした。けれど、1年目の11月、突然“私、何かが欠けている”と感じたんですよ。それが一体何なのかわからず、リセットするためにとりあえず実家に帰ってみました。そして自分の部屋で、フランスで買った本や雑誌を読んでいたら、なんというか安らいで呼吸ができる感覚になれたんです。今の自分にはフランス語が足りていないんだと、そこでやっと気づけました」
その後は、フランス語を習いながら働き続けた。そして28歳。仕事にも慣れ、次のステップを考えたときに、フランス語を仕事で使いたいという思いが再燃。キャリアを積んだこともあり、転職は考えられず、当時の会社に勤めたまま、フランス語を使って働ける道を模索した。
自分の本音と向き合って自信に
「まず、会社のパリ支社のことが思い浮かび、人事部に、パリ支社はどういうところかを聞きに行きました。でも、そこに私のやりたいことはなかった。管理職として、40代くらいで行くものだったんです。それなら会社の制度を使って一度留学をしてみたら何か道が開けるかもしれない、と調べてみましたが、その制度で留学可能なのは2年間。深く勉強はできないと感じ、それも私の選びたい道ではなかった。そこから、しらみつぶしに1年間方法を探したけれど、見つからなかったんです。“フランス語を仕事にしたいなら会社を辞めるしかない”と消去法で思い知らされました。居心地のよかった職場を離れたのに夢がかなわず、不安定な生活を送ることになっても、自分は耐えられるのか。辞めたあと、やっぱり本を作るのが好きだったと後悔したらどうしよう。そもそもお給料がなくなって暮らしていけるのか。会社を辞めることへの不安は膨大でした」
そんななか決意させてくれたのは友達の言葉だった。
「“何のしがらみもない状態で好きなことをやれるなら、何をしたいの?”と聞かれたんです。すぐにフランス語の本を読んでいるところが思い浮かび、フランス語を学び直すしかないんだと確信しました」
また、現実的な問題としっかり向き合ったことも、決断できた理由のひとつだそう。
「貯金額を、仕事を辞めてから使う学費や生活費ときちんと照らし合わせた。そうしたら、辞めて5年はなんとかなるという計算になったんです“。辞めるしかない”とわかってから決断までに、半年かかりました」
出版社を退職し、受験勉強をスタート。この春から大学院に進学し、フランス文学を再び学び始めた。
「好きなことに飛び込めたら、悩みがなくなると思っていたけれど“、今後これを、どうやって仕事にしよう”というような悩みが尽きません。でもそれは、ポジティブで具体的な悩み。会社を辞めて好きなことを選べた自分なら、なんとかできるはずだという自信もある。これからどんなに悩んだとしても、自分の選択を後悔することはないと思います!」
【まとメモ】
Q 好きなこととの出会い方
A「小さなころから好きなことを振り返ってみる。趣味でやれればいいと思っていることが、実は一生やりたい好きなことかもしれません」
Q 飛び込むにあたっていちばん迷ったこと
A「会社を辞めること。それまで積んだキャリアを捨てるのも、一緒に仕事をしてきた仲間と離れるのも、不安でした」
Q 飛び込む決意のきっかけ
A「いちばん大きかったのはお金の計算をして大丈夫だと思えたこと。精神論ではなく、現実的に“大丈夫”が見えて、安心できた」
撮影/島袋智子 イラスト/とんぼせんせい 取材・文/東 美希