テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第9回目は拡大版として「withコロナ時代の働き方」をフィーチャー。今回は、女性の働き方の変化について大江さんが解説します。
【大江さんが選ぶ】振り返るべき働き方のニュース
2015年6月
政府が、2020年に男性の育児休業取得率を13%にするという目標を掲げる
「日本再興戦略2015」にて閣議決定されたが、2020年7月に発表された2019年度の男性育児休業取得率は7.48%。過去最高とはいえ目標達成は厳しい結果に
2016年4月
安倍政権のもとで、女性活躍推進法が施行
「女性が輝く社会」を目指した安倍政権。国や地方公共団体、民間企業に、女性が働きやすい環境づくりを求める法律が10年間の時限立法として施行された
2019年4月
働き方改革関連法が施行
働く人が多様な働き方を自分で選択できる社会の実現のために働き方改革が始まり、長時間労働の是正などの制度が大企業で導入。中小企業は’20年4月~
2020年4月
「同一労働同一賃金」本格スタート
正社員や非正規などの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて賃金を決めることで不合理な待遇差を解消する制度が大企業で導入。中小企業は’21年4月~
コロナ拡大で緊急事態宣言発令。テレワークが一気に普及
「コロナ禍で、結果的に働き方の選択肢は増えています」
働き方改革が進むなかで起こった新型コロナウイルスの感染拡大。今、女性の働き方にはどんな変化が?
「まず、働き方改革の一環として同一労働同一賃金制度が導入されたことが大きな変化ですね。正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇差をなくす制度です。人手不足の深刻化から、優秀な非正規の人材を正規雇用に切り替える企業が増えています。その対象に女性がなっていることも多いですね。ただ、雇用環境が上向くいい変化のなかでコロナ禍となってしまったため、業種によっては雇用が大幅に減少しています。需要が減った業種で働いていた人が、ニーズのあるほかの業種に移動できるかが、今後の雇用の課題と言えます」
アンケートでは、テレワークを働き方の変化に挙げた読者が多数。
「コロナ禍でのテレワークの拡大は、まさに大きな変化です。家事と仕事のバランスがとりやすくなった読者の声が多くありましたね。場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の選択肢が、仕事や生活の質を上げる一助になっている人もいるでしょう。また副業が増えている傾向もあります。もともとの職業での収入減を補填するためや在宅勤務によって生まれた時間を有効活用したいためなど、さまざまな理由があるようです」
コロナをきっかけに、働き方の多様化が加速したのでしょうか?
「『感染を防ぎながら持続可能な働き方をするには、事業を継続していくには、どうすれば』と世の中が必要に迫られて働き方を多様化していった部分はあると思います。それによりいろいろな事情を抱えている人が労働市場に参加しやすくなったという意味では、結果的にコロナは労働市場の間口を広げることになったと言えます。働き方改革の流れとともに、働き手にとっては働き方の選択肢が増えて、仕事がしやすい社会になりつつあるのではないでしょうか。大きな変革を受けて、より自分らしい働き方を追求できる環境になっていくといいなと思っています」
「変化の激しい時代でも自分次第で心地よく働ける」
激動の時代において、変化に柔軟に対応するため大江さんが心がけていることとは?
「『無理かもしれない』『怖い』といったネガティブな感情から入らないようにしています。『どうすればできるか』とポジティブな言葉に置き換えて想像すると、そのイメージに近づいていく気がするんです。先の見えない時代ですので自分が思ってもみなかった境遇に身を置かれることもあるかもしれませんが、そんななかで環境を自分にとって心地のよいものに近づけられるかは、自分の考え方や行動で変わってくると思います。私の場合、脳内のポジティブなイメージが自分を支えてくれていますね」
多くの読者から先の見えない社会で働き続けることに不安を感じるという声が。
「この状況ですから誰でも不安をお持ちだと思います。ただ感情に揺さぶられているだけでは事態が打開できないので、冷静に情報を収集することを心がけてみるとよいと思うんですね。自分の収入や会社への不安を埋めるために副業という選択をしたり、転職を真剣に考える人も増えています。コロナによって業績が落ち込む業種や企業がある一方で伸びているところもあるので、時流をきちんと把握することがまず重要です」
世の中を知ることに加えて、自分を知ることも必要と語る大江さん。
「目の前のことに丁寧に取り組む。それを積み重ねていくことを私は大切にしています。目標が遠すぎたり大きすぎたりすると、たどり着くのが大変。でも近くの小さい目標なら一つひとつクリアしていくことができます。それは自信につながり、経験を通して自分との対話を繰り返すことで、『自分に向いていること』や『自分はこういうものが好き』といった自己分析ができていくと思うんですね。働き方の選択肢が増えた今、自分がどういう生き方をしたいのかを見つめて選択するために『自分をよく知る』ことがこの激動の時代には必要だと思います」
大江さんにとっての「小さな目標」は毎日の『WBS』のオンエア。
「その日のオンエアに全力で集中して、みんなで作り上げる喜びを共有し、前向きに次につなげていく。そういったところが楽しくてここまで続けてこられた気がします。働くことをお金を得るための手段としてだけ考えたら苦痛かもしれませんが、自己実現の手段、大切な人間関係、知的好奇心、誰かの役に立つ喜びなど、仕事を通じて得られることがきっといろんなシーンであると思うんですね。そういう楽しみを見つけながら私は日々を積み重ねています」
大江さんの働き方は変わりましたか?
Ⓒテレビ東京
テレワークを始めて取材の幅も広がりました!
コロナ前は対面で行っていた会議や打ち合わせが、コロナ後はほぼリモートに。自宅や出先からも多くの会議に参加できるようになりました。また、インタビューをリモートで行う選択肢が増えたことで海外在住の方にも話を聞けるようになり、取材先がよりワールドワイドになったのも大きな変化です。
大江麻理子(おおえ まりこ)
テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。
撮影/中田陽子〈MAETTICO〉 イラスト/小迎裕美子 取材・原文/佐久間知子 構成/松井友里〈BAILA〉 ※BAILA2021年2月号掲載
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