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【働く女性のヒット商品ストーリー⑤】育児経験が商品開発のヒントに!ザ・ノース・フェイスのユニセックスなマタニティウェアが生まれるまで

「こんなものが欲しかった」。思わずそう声を上げたくなるヒット商品の数々は、実は、バイラ世代の女性たちが多くの壁や苦悩を乗り越えた末に生み出したものでした。「ザ・ノース・フェイス」のマタニティ部門を立ち上げた矢野真知子さんは、自身の双子育児がコンセプト考案の大きなヒントになったそう。

株式会社ゴールドウイン 矢野真知子さん(ザ・ノース・フェイス事業一部 キッズグループMD 30歳)

入社後3年は営業で経験を積み、その後産休へ。復帰後に社内公募の試験に合格し、キッズウェアの企画部署に異動。半年後の2018年1月に、新しいマタニティ部門の立ち上げを命じられる。

株式会社ゴールドウイン 矢野真知子さん(ザ・ノース・フェイス事業一部  キッズグループMD 30歳)

THE NORTH FACEマタニティダウンコート
妊娠中も産後も着用できる画期的なデザイン。防風性・撥水性を備えたGORE-TEX INFINIUM™を表地に使用するなど、アウトドアアイテム開発で培ったザ・ノース・フェイスならではの機能性と、ママである矢野さんの細やかなアイディアを取り入れた

妊娠・出産・育児に奮闘する女性たちを応援したかった

妊娠出産、子育ては想像以上に大変だった

アウトドアブランドならではの機能性はもちろん、産後も子どもと一緒に着用できる設計が大きな反響を呼んでいる「ザ・ノース・フェイス」のマタニティライン。2019年秋冬に第1弾がデビューすると、2020年秋冬には前年の販売金額の約300%という結果をたたき出した。コンセプトワークを一手に担っているのは、双子のママである矢野さん。企画の部署に異動してからわずか半年後、当時「唯一の妊娠出産経験者」ということで立ち上げを命じられた。

実際に自分が妊娠してみると、マタニティウェアにはリボンがついているものが多かったりして、着たいと思えるデザインのものがないと気づいたんです。さらに私自身、子どもが双子だったこともあり、想像以上に妊娠や出産後の子育ては大変でした。『ザ・ノース・フェイス』は8‌000m級の登山に対応するギアやウェアを作っているので、機能性で女性たちの負担を軽減し、挑戦する女性を応援できるのではないかと考えたんです。妊娠中の限られた期間だけでなく、産後に使えることも大事なコンセプトでした。当初は自分にできるか精神的な不安もありましたが、提案したコンセプトを『素晴らしい』と上司が認めてくれたことが、大きな自信になりましたね」  

とはいえ、デザイナーもパタンナーもマタニティウェアを手がけるのは初めて。サイズの設定基準を決めるために妊婦のお腹の出方を研究した論文を読み込んだりと、すべて一から手探りで進めていったという。「マタニティウェアの顔となるダウンコートは、ベビーキャリアカバーをコートのフロントに連結して子どもを抱っこしたまま着られるようになっています。富山に自社のラボがあるのですが、気温や風の強さを変えて実験をし、衣服内の暖かさが保たれるか実証しました。カバーは取り外してベビーカーに装着することもできるのですが、座高の低いベビーカーでも引きずらないよう丈を調節できるようにしています。仕様設計が本当に細かいので、パタンナーたちと一日がかりでサンプルを床に広げ頭を悩ませたこともありました」  

2021年の春夏には、マタニティライン初となる男女兼用で使えるユニセックスのレインコートを発表。「妊娠出産は女性特有のものですが、子育ては女性だけのものではないですからね。立ち上げ当初から、世の中に女性のアイテムばかりなことが気になっていたんです。そういったメッセージは、これからも商品を通して社会に訴えていきたいです」

マタニティラインから初めてリリースしたユニセックスのレインコート

マタニティラインから初めてリリースしたユニセックスのレインコート。抱っこにもおんぶにも対応している

THE NORTH FACEマタニティダウンコート

シリーズの顔となるダウンコートは2021秋冬にアップデート。ママの首もとを保温できるような仕様に

Nagi  吸水ショーツ

ベビーキャリアカバーを取り外せば産後も使える。カバーは単体で抱っこひもやベビーカーにつけることも可能

Q.仕事で大切にしていることは?

1.“Never Stop Exploring”の精神 2.周囲の人への敬意 3.家族との時間を大切に
“Never Stop Exploring(飽くなき探求)”というブランドのタグラインが好きなんです。今後もよりよい企画を目指し、常に挑戦をしていきたいです。会議では意見が対立することもありますが、どんな意見も敬意を持って聞くことで、自分にはない発想をもらえることも。また、どんなに仕事が楽しくても誰かの犠牲の上では長続きしません。子どもや家族との時間を大切にすることは自分に言い聞かせているルールです

撮影/目黒智子 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2021年12月号掲載

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