最近、やたら目にする「自己肯定感を上げる」という言葉に疲れている女子が急増。それってそんなに必要なもの?絶対に上げなきゃいけないの? その真実を解き明かします。今回は、「自己肯定感」に対してみんながいだいているイメージを調査しました。
スマホで調べてみると…
BAILA読者の、私たち自己肯定感ブームに疲れました…
●自己肯定感を高めるという言葉自体、今の私を否定されているように感じる(31歳・アパレル)
●本やSNSでは自己肯定感が高い人がいい、低い人がダメという体で書かれているものが多く、自分はダメなのかとよけい落ち込んでしまう(34歳・営業)
●高いほうがいいのかもしれないが目に見えないものだしいまいちわからない。ましてや高める方法もわからないので、考えるほど余計に落ち込む(28歳・事務)
●自己肯定感が高くないと幸せになれない、それがまるで呪いの言葉のように私を苦しめています(30歳・事務)
●自分を好きになろう、という言葉に胸が苦しくなります。自分を褒めてあげてとか、自分を大切にしてとか言われるけど、自分にはできないから(28歳・不動産)
●自己肯定感という言葉が、まるで宗教のようになっている気がする。その言葉にとらわれている自分をたまに感じる(32歳・サービス業)
●自己肯定感が低くてただでさえつらいのに追い打ちをかけられる感じがする(29歳・事務)
●ネット記事で色々読むたびに、自分は幸せになれないと断言されている気がしてしまう。自己肯定感が低い人は絶対に幸せになれないの?(30歳・流通)
《BAILA読者423人にアンケート》自己肯定感って何? 低い私はダメですか?
Q.あなたの自己肯定感は、低いほうだと思いますか?
たとえばこんなとき…
●結婚したいけどできない。周りが手に入れているものを何ひとつ手にできていない自分が嫌になる(35歳・歯科助手)
●仕事ができない。職場で活躍できない自分に落ち込む(29歳・小売業)
●今まで失敗ばかりで、成功体験がないので、自分の選択に自信を持てない(31歳・広告)
●自信がないので人の話に合わせてしまう。周りの意見に流されてしまう(30歳・金融事務)
●他人と比べて自分が劣っていると感じるとき(36歳・医療事務)
●周りの目ばかり気にして小さくなってしまう自分を感じたとき(33歳・商社営業)
●ちょっとした相手の言動ですぐに落ち込む。気持ちの切り替えがうまくできない(28歳・メーカー経理)
●何かあるたびに“自分が悪いのでは”と思う。誰よりも自分自身のことを疑ってしまう(34歳・保険代理店)
Q.自己肯定感が 高い人って どんなイメージ?
●いつも楽しそう。いつも元気(31歳・看護師)
●生き生きとしている(34歳・栄養士)
●友達がたくさんいる(21歳・教師)
●人前に出ることが好き。自分の容姿が好き(33歳・システムエンジニア)
●自信がある(29歳・アパレル販売)
●とにかくキラキラしていて、欲しいものを手に入れて、人生が楽しそう(37歳・メーカー経理)
●運がいい(33歳・人材系)
●決断力がある。目上の人にも自分の意見を言える。口調の強い人にも勝てる(31歳・メーカーマーケティング)
●わがまま(32歳・受付)
●人の気持ちがわからない。ときに偉そうで上から目線。自信過剰な人が多い気がする(37歳・旅行会社営業)
●ナルシスト(33歳・マスコミ関係)
●空気が読めない(30歳・会社員)
●自己評価が高すぎる(28歳・IT関係)
●自己中心(35歳・事務)
●一歩間違えれば迷惑で勘違いな人(33歳・営業)
●うらやましい反面、なぜその程度で自信満々なのだろうと思う側面もある(33歳・金融事務)
自己肯定感の高い人に憧れる一方で「そんなにいいことなの?」と反発したくなる気持ちも…
(2021年1月18日〜25日、27〜39歳のBAILAメルマガ会員にアンケート)
“自己肯定感”の本当の意味は 優れていない自分も肯定すること
精神科医
水島広子先生
対人関係療法専門クリニック院長。「対人関係療法」の日本における第一人者。『「対人関係療法」の精神科医が教える「怒り」がスーッと消える本』『自己肯定感、持っていますか?』(ともに大和出版)など著書多数。
まず、読者の皆さんの意見を見ると“自己肯定感”という言葉が間違ったかたちで独り歩きしているのを感じます。そもそも、自己肯定感とは ありのままの自分を受け入れること。自己肯定感が低い人は自分を否定しダメ出しばかりしてしまう。それは自分を傷つけネガティブな思考をふくらませるばかり。そうではなく、ダメな部分にも目を向け、そんな自分も認めて受け入れる。すると、他人と自分を比べなくなったり、ささいなことで落ち込まなくなったり、それまで感じていた生きづらさを手放すことができるようになるんです。
自己肯定感は“幸せになるため”のものではなく“生きやすくなるため”のものです。なのに今、ちまたにあふれている自己肯定感は逆に「こうでなければいけない、幸せになれない」と皆さんを苦しめてしまっている。そもそも、自己肯定感は空気のようなものです。当たり前に存在しているからこそ、その恩恵に普段は気づけないけれど、空気が足りなくなると様々な問題が起きてくる。たくさんあれば深呼吸もできるけど、なければどんどん息苦しくなっていく、それが自己肯定感なんです。
ありのままの自分を受け入れるとは、優れていない自分も受け入れること。決して、優れた自分に誇りを持つことではありません。なのに、皆さんの意見を見ていると、他人と比べて優れていると感じることのできる何かを欲しているように感じます。まるで、すべてを改善して完璧になった全身整形状態こそが素晴らしいと信じているかのように。自分 にないものをかき集めて満足したところで、それは条件つきの自己評価にすぎません。しかも、その軸が他人からの評価になっているのも問題。自己肯定感は内側から出てくるものなのに、外側からの評価で判断している。本当に自己肯定感の高い人は他人の評価は気にしません。SNSのいいねを欲しがったりしないし、SNSすらやっていないかもしれない。キラキラしている、すべてを手に入れている、自己肯定感が高い人へのイメージも間違いが多い。どんなボロを着ていても、成功していなくても、心地よい気持ちでいられるのが本物。自己中心的、ナルシスト、そのイメージはただの自己愛が高い人。自分も他人も大切にできるのが自己肯定感の高い人ですから。
では、どうしたら自己肯定感を高めることできるのか。今日からできる訓練のひとつが他人をリスペクトすること。これは相手の優れている部分を探すという意味ではありません。たとえ相手に欠点があってもこの「この人には何か事情があるのかもしれない。この人なりに試行錯誤をしながら頑張って生きているんだろうな」と考え受け入れ尊敬する。それができるようになると、自分に対してもそう考えることができるようになっていくんです。大事なのは、素晴らしい何かを手に入れることでも、自分を好きになることでもなく、今の自分を受け入れること。それだけで、気持ちよく深呼吸できる世界が少しずつ広がっていくはずですよ。
イラスト/雨月 衣 取材・原文/石井美輪 構成/田畑紫陽子〈BAILA〉 ※BAILA2021年4月号掲載
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