テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第12回目は、いま、注目のテーマ「脱炭素」について、大江さんと一緒に考えます。
今月のKeyword【脱炭素】
だつたんそ▶CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を抑制するだけでなく、吸収や除去をして差し引いてゼロにすること。菅首相は、2020年10月の所信表明演説にて「わが国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した
バイラ読者156人にアンケート
あなたは「脱炭素」の意味を理解していると思いますか?
充分理解している 5%
なんとなくは理解している 37%
あまり理解していない 37%
全く理解していない 21%
「充分理解している」と回答した人は5%。ワードを聞いたことがあってもしっかり意味を答えられる人は少ないよう。「気候変動に関係している程度の知識しかない」「カーボンニュートラルと脱炭素が同じ意味なのかわからない」「きちんと知りたい」との声も
マイバッグ・マイボトルを持つように心がけていますか?
はい 89%
いいえ 11%
約9割が「はい」と回答。ほかにも約半数が「節電」や「多少高くても環境に配慮した商品を購入したい」と地球に優しい生活を心がけている人が多い結果に。一方で、「勤め先の企業が脱炭素に向けた取り組みをしている」と回答した人は約3割にとどまった
「日本も乗り遅れてはいけない2050年カーボンニュートラル」
菅首相の宣言で注目される脱炭素の取り組み。読者からは言葉の意味をよく理解していないという声も。
「脱炭素って、パッと聞くと『炭素を抜く?』と少しわかりにくい言葉であることは確かです。脱炭素とはカーボンニュートラルを日本語に言い換えた言葉で、温室効果ガスの排出量をプラスマイナスゼロにするという意味なんですね。温室効果ガスの排出をなるべく減らし、人間が生きていくにあたってどうしても出さざるを得ない部分は、ほかで吸収したり取り除いたりすることで結果的にゼロになるようにする考え方です」
菅首相の宣言にはどんな意義が?
「2050年と具体的に明示した点が大きいです。パリ協定で『今世紀後半にカーボンニュートラルを実現する』という世界共通の長期目標が立てられ、各国が具体的な期限を考えました。資源エネルギー庁資料『エネルギー政策の現状について』(令和2年11月)によると、欧州と英国が2050年、米国もバイデン氏が大統領選中に公約として2050年を掲げ、中国は2060年と表明。脱炭素社会の実現を2050年頃に目指す動きが世界の潮流となっています」
今、政府も企業も脱炭素への大きな変革が求められていると大江さん。
「これから企業がどのように発電された電気を使って製品を作るかが問われてくると思います。そこできちんと明示できないと、取引してもらえず、日本の企業が世界から取り残されてしまいます。前述の資料によると、2018年度の日本の電源構成は火力全体(液化天然ガス、石油、石炭)が77%、原子力6%。再生可能エネルギー17%という割合で、この状況をどう脱炭素の電源構成にしていくかが課題です。期待される再生可能エネルギーの導入には地理環境やコスト面を考えなくてはいけません。どのエネルギーにも光と影の面があるなか、どう組み合わせるのが最適かが議論されています」
「一人ひとりがより地球のことを考えた消費を目指す生活に」
アンケートでは約8割が「一人ひとりが今の生活を変えなければ脱炭素社会は実現できないと思う」と回答。
「バイラ読者の皆さんは意識が高いですね。国や企業だけでなく、地球上のより多くの人がより地球のことを考えた消費を目指す生活を心がけることが重要だと思います。地球環境に優しいかを考えながらモノを買う、自分が出すごみの量を減らす、自分の使う電気を自宅で発電する考えの人もいるでしょう。できることがたくさんあるという感覚を一人ひとりが持つことが大切だと思います」
「私は以前ごみ処理場を取材した際に、プラスチックごみを燃やして出た水素とCO2を回収し、水素を発電に、CO2をドライアイスなどに再利用する取り組みを知って、ごみの分別をより一層しっかりするようになりました」
前向きな心がけの一方「脱炭素が2050年に実現すると思うか」には読者の約7割が「いいえ」と回答。
「これからの技術の進歩にかかっているところもあるので不安という方が多いのかもしれませんね。ただ2050年まであと30年弱あります。私が社会人になった20年前と今とで生活を比べても携帯電話がスマートフォンに変わって、今や手もとだけで仕事ができるようになっています。今の段階で不安になるよりも、実現のために何が必要なのかを傍観者ではなく当事者の一人として考えることが大事だと思います。次世代、その先の世代も地球に安心して住めるよう私たちができることはたくさんあります。今こそ責任を果たすときなのかもしれませんね」
大江麻理子
おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。
撮影/中田陽子〈MAETTICO〉 取材・原文/佐久間知子 構成/松井友里〈BAILA〉 ※BAILA2021年5月号掲載
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