テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第11回目は、バイラ読者の関心度も高い「不妊治療」について、大江さんと一緒に考えます。
今月のKeyword【不妊治療】
ふにんちりょう▶不妊とは妊娠を望む健康な男女が一定期間子どもを授からないことを指し、治療法にはタイミング法、排卵誘発法、人工授精、体外受精などがある。政府は出産を希望する世帯を支援するために、不妊治療の経済的な負担を軽減すべく保険適用を検討中で、適用までの間は現行の助成制度を拡充している。
バイラ読者134人にアンケート
不妊治療に関連したニュースに、関心がありますか?
はい 84%
いいえ 16%
約8割が関心あり。約6割が政府の特定不妊治療費助成の拡充や不妊治療の保険適用検討を知っており、約7割が「保険適用に賛成」と回答。「想像以上にお金がかかるのでサポートがあるとトライしやすい」「周囲も高齢出産が多く身近なトピック」との声が
あなたの職場に、不妊治療を受けている人をサポートする制度はありますか?
はい 13%
いいえ 87%
職場にサポート制度がある人はわずか。「はい」と答えた人からは有給休暇制度や時短勤務が挙がったが「制度はあるけど理解が乏しく利用しにくい」との声も。「不妊治療を受ける場合、そのことを職場で話しづらいと感じる」という人は約8割にも上った
「政府の支援策は助成金以上のメッセージ性を持つことになる」
菅政権が掲げる不妊治療の支援策。2021年1月から助成制度が拡充され、来年4月から保険適用が開始する見通し。読者アンケートでは約6割が「不妊治療を考えたことがある」と回答し、多くの意見が寄せられた。
「皆さんの声を読んで大変勉強になりました。2020年は新型コロナウイルスの影響もあり妊娠届を出した人の数が減っていて、出生率もまた一段と下がりそうです。少子化に歯止めをかけることができなければ、社会保障制度をはじめ今の社会を維持していくのが難しくなってしまいます。『子どもをもつかもたないか』という個人の考え方が尊重された上で、社会が子どもを産み育てることを支援できるかどうか。それが少子化対策、さらに今の社会を維持できるかにつながってくるんだと思います。不妊治療にも光がようやく当たったのだなと感じます」
国が支援策を打ち出すことは、メッセージ性を持つと大江さん。
「まず不妊治療という選択肢を経済的な理由であきらめずにすむ社会に一歩近づくのは確かです。それだけでなく、国が応援する姿勢を示すことは、子どもをもちたいと考えている人や子どもがいる人を、社会のあらゆる場で支えていきましょうというメッセージになると思います」
「ただ、コロナは本当に罪が深いなと思うのが、そのような人を社会で支えていかなければならないのに、社会のつながりが持ちづらい点。今は距離を保たなければならないので、荷物がいっぱいで困っているお母さんを見かけても声をかけていいのかなと迷うことがあるんです。子どもを社会全体で育てていく上で大きな試練のときだと感じます。困っている人がいたらそばにいる誰かが手を差し伸べる。そういった支え合いが社会の重要なインフラなのではないでしょうか。社会全体で子どもを育てていくためにも、一刻も早くコロナが収束してほしいです」
「それぞれの希望を実現できる理解のある社会に向かって」
アンケートでは、約9割の読者が「不妊治療を受ける場合、心配なことがある」と回答。経済面だけでなく、身体面、精神面など範囲は多肢に。
「『不妊治療と仕事の両立が難しい』『孤独な思いを抱えながら不妊治療をしている』との声がありましたね。国の経済的な支援だけでなく、やはり周囲の理解が欠かせないと思います。今って、治療を受ける本人の背中にいろんなものがのしかかっているような感じがしますよね。周りに理解がある人がいるかどうかが不妊治療を始められるかの分水嶺になっているのは理不尽な状況です」
働きながら子どもをもつにあたり、キャリアの築き方に悩む読者も。
「『不妊治療のタイミングがキャリアを形成したい時期と重なって悩む』との声もありましたね。出産や子育てで仕事を休んだとしても、復帰後に再挑戦できる環境が会社に整っているかどうか。待機児童問題も解消がなかなか難しいなかで子どもを預けて働くことへの不安など、産むにあたってだけでなく産後の不安もあると思うんですね。だから出産や子育て全体へのサポートが重要だと思います。国や会社に支援制度が増えることによって本人の負担が減ると思いますし、『制度があるので利用しました』ともっと当たり前に言える社会になるといいですよね」
「また、特別養子縁組などの制度を充実させるなど、子どもをもつ上での選択肢を増やす取り組みが必要だと思います。選択肢を増やし、それぞれの人が希望することをいろんな方法で実現できる社会になるといいですね」
大江麻理子
おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。『WBS』は3月29日から放送時間を変更し22時スタートに(金曜日のみ23時から)。
撮影/中田陽子〈MAETTICO〉 取材・原文/佐久間知子 構成/松井友里〈BAILA〉 ※BAILA2021年4月号掲載
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