BAILA編集部員のおすすめやお気に入りをリレー式で綴る「エディターズピック」
第24回は引退競走馬の支援について。
数年前から一方的に片想いしている、好きな人がいる。
彼はアスリートで豪快、豪傑。その上、やや気分屋なのだが、とにかくその走る姿が美しく一目で恋に落ちた。そして彼は競技人生も折り返しに入り、恐らくあと数年のうちに引退を迎える模様。だけど一体その後は、どこでどんな余生を過ごすのだろう…。好きの気持ちが高まると共に、同じぐらい、なんならそれ以上に大きな不安を抱き始めた。
紛らわしい書き方をしましたが、私の好きな人というのは、とあるサラブレッドのこと。ここ数年、一番夢中になっている競馬の世界で活躍している一頭です。
年間約7000頭程のサラブレッドが生を享け、数々の壁を乗り越え、競走馬としてデビューを果たす。そしてそこからも勝負の世界。圧倒的な成績を残せば、種馬や繁殖牝馬となり多くの子供を持つ父や母となり余生を過ごす。だけどこの人生を歩める馬というのはほんの一握り。そもそもデビューまで漕ぎ着けなかった馬、そしてデビューするも勝てずに引退となった馬、活躍したものの繁殖入りまでは出来なかった馬。そういった多くの馬たちのその後というものは非常に不透明で、多くが殺処分となっているのが現状です。
競馬が好きだからこそ、夢や素晴らしいドラマを見せてくれた競走馬たちに少しでも幸せな時間を過ごしてもらいたい、活躍の有無に関わらず生まれてきてくれた命を繋げたいという気持ちにかられ、私でも何か出来ることがないのかとネット検索をするとヒットしたのがTCCことサラブレッド・コミュニティー・クラブでした。
こちらのクラブは引退競走馬を「救う」「活かす」「支える」という3つのステージでの活動をされています。滋賀県栗東(りっとう)市にあるホースシェルター、TCCセラピーパークにて行き場の無い引退競走馬をまず「救う」。そしてセカンドキャリアのマッチングを行うことや会員がオーナーとなることで「活かし」、怪我などで人を乗せることが出来なくなった馬たちを提携先の乗馬クラブや牧場で「支える」。今年は「活かす」と「支える」活動を更に向上させるため、自社施設の拠点作りにも着手されるそう。
乗馬経験も無く、馬の扱い方や知識も皆無に等しい私ですが、会費での支援や寄付が出来るということを知り、即座に入会。(月額¥1100の会費からスタート可能。そこにプラスして複数の支援&寄付の方法があります)現在全国に30カ所以上の提携施設及びTCCホースが点在しており、TCC会員であれば誰でも事前のWEB予約で気軽に会いに行ったり乗りに行ったりすることが出来るというのも魅力的! 関東にも多く提携施設があるので機会をみて会いに行きたいとおもいます♡またコロナ禍のため、なかなか実施が難しい状況が続いていますが参加型のイベントや施設見学も行われており、私も実際にTCCの施設を訪れられる日を夢見て、ウェブサイトやインスタグラム等のSNSの更新を日々楽しく見させてもらっています。
そもそもTCCは「馬のまち」として知られる滋賀県栗東市出身の山本高之さんによって馬業界の社会的問題を解決するために立ち上げられました。(そして今回ご好意で取材にもご協力頂いたので是非、以下もご一読を!)
「馬と共に社会をゆたかに」を目標に掲げ、走れなくなったら廃用でなはく、人間社会との共生により馬の命に対する尊厳を守って行きたいという考えの元、立ち上げられた本クラブ。現在、約2000名の会員がいて女性がその過半数以上を占め、BAILA世代の30代の女性も多く在籍しているそう!
活動を通しどういった時に幸せを感じるかと山本さんに聞いたところ、大怪我などでホースシェルターがなければ間違いなく繋げなかった命を繋ぐことができ、また療養期間を経たことで馬が元気を取り戻した姿を見た時や、会員の方達が馬と触れ合うことで笑顔になっている瞬間といったように「馬を救い、人を癒す」、そのような状況を感じた時に喜びや達成感を感じるとご回答頂きました。
そして現状はやはり引退する競走馬の数に対して、その受け皿となる乗馬クラブや牧場の数など、産業自体の規模が圧倒的に小さく、規模の拡充、また乗馬以外での引退競走馬の利活用の場をいかに作り出すかというところが課題とのこと。一朝一夕にはいかない問題ではありますが、山本さんのように実際に課題に取り組んでくださっている方がいることで来月、来年、数年後の引退競走馬の未来が少しでも今より好転しているかなと思うと、頭が下がる思いでいっぱいです。
是非、興味が湧いたらTCCのウェブやインスタグラムをチェックしてみてください!活発に更新もされており、コロナ禍でなかなか会いに行けなくても普段の様子や可愛い姿を見ることができます。(本当に可愛くて癒されます♡)
最後に山本さんに馬の魅力を伺ったところ以下の言葉が返って来ました。
「相手の感情を読み取ることに長け、人を癒す能力が非常に高い動物です。
優しく接すれば優しく返してくれます。
心が弱ってる時、そっと寄り添ってくれる動物です。」
心優しい馬たちとの共生社会。その実現に向けて私も僅かですが、今後もサポートを続けていきたいと思います。(編集K)
編集K
競馬好きのファッション担当。他にも音楽、ラジオ、野球(特に中日と高校野球)、お花、料理など、好きなもの多め。夢は日本馬の出走する凱旋門賞を現地観戦すること。