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親に祖母の介護を任せられ将来が見えない...どうするべき?【読者のお悩みに姜尚中さんが回答! 】

バイラ読者から届いた声に、政治学者の姜尚中さんがアドバイス。今回は、29歳・家事手伝い・親に祖母の介護をさせられているという女性のお悩み。最近問題となっている「ヤングケアラー」や「毒親」と、どう向き合うべきかを回答。

〈お悩み〉親に祖母の介護をさせられています。仕事にも行けず、つらい毎日を送っています(T・29歳・家事手伝い)

高校卒業後、畑仕事や家事するかたわら、祖母の介護をしてきました。おむつ交換やお風呂など、とても大変ですが、家族はほとんど手伝ってくれません。それどころか親は、「あんたは、そのくらいの仕事しかできないから」と介護を押しつけた上にバカにします。祖母のことは好きですが、外に働きに行くこともできず、正直つらいです。

親の意見は気にせず自分を第一に考えてすぐ家を出たほうがい──姜

親の意見は気にせず自分を第一に考えてすぐ家を出たほうがい──姜

アンケートからは、Tさんの悲痛な思いが伝わってきます。両親からは介護要員として見なされ、家族の中で、自分だけが就職もせず、祖母の面倒を任されて、自身の可能性を奪われた状態です。

最近は、若くして家族の介護を担う「ヤングケアラー」が問題となっていますが、Tさんはまさにヤングケアラーだと思いますし、また支配的な両親から精神的に虐待も受けているようです。流行りの言葉で言えば、「毒親」ということになるのでしょう。このまま何も行動を起こさなければ、10年20年と同じ状態が続き、Tさんの人生は完全にスポイルされてしまうことになると思います。

これは僕のアドバイスは、はっきりしています。Tさんは早く家を出なさい、ということです。「いや、そんなことをしたら、祖母の面倒を見る人がいなくなる」と責任感の強いTさんは思うかもしれません。両親からも「ひどい娘だ」とののしられるかもしれません。しかしそのように罪悪感を感じさせるところに家族としての病があります。

本来、子どもが幸せであることが、親にとっての幸せであり、祖父母にとっての幸せでもあるはずです。しかしそうなっていないところに問題があるわけです。だから親がどう思うかということは考えなくていいので、まずは自分がどうしたら幸せになるかを第一に考えてほしい。それが親にとっての幸せになるはずだと信じて、自分の道を歩んでほしいのです。

ただ、親からの支配に慣れてしまったTさんが、自立するのは簡単ではないと思います。支配されることに慣れてしまった、Tさんと両親は、ある意味、共依存関係にあったと思いますから。しかしいつか両親は亡くなり、Tさんは一人になります。そのときに後悔することのないように、一刻も早く、自立の道を探ってください。

『それでも生きていく 不安社会を読み解く知のことば』  姜尚中著  集英社 1650円 1月26日(水)発売

1月26日(水)発売!『それでも生きていく 不安社会を読み解く知のことば』 
1月下旬に上梓される本書は、2010年から2021年まで、女性誌で連載されていた姜さんの人気連載をまとめたもの。この間、東日本大震災、中国の台頭、トランプ大統領の誕生、新型コロナウイルスのパンデミック……と、世界も日本も揺れに揺れた。そんな不安社会の構造を姜さんが読み解き、苦しみや悲しみを乗り越えて生きていく術を示してくれる、現代の救済の書。劣化する日本の政治、変わりゆく知のカタチ、ジェンダーをめぐる攻防、問われる人間の価値、不透明な時代の幸福論とテーマも刺激的で、知的好奇心が満たされること間違いなし!!

『それでも生きていく 不安社会を読み解く知のことば』 
姜尚中著  
集英社 1650円

姜尚中(かんさんじゅん)

姜尚中(かんさんじゅん)


1950年、熊本県生まれ。東京大学名誉教授。長崎県鎮西学院学院長。熊本県立劇場館長。専門は政治学・政治思想史。著書に『悩む力』『漱石のことば』『母―オモニ―』『トーキョー・ストレンジャー』など多数。

撮影/渡部 伸 イラスト/塩川いづみ 取材・原文/佐藤裕美 ※BAILA2022年2月号掲載

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