子供から大人までみんなの人気者のフルーツといったら「いちご」。いちごを使った様々なスイーツがある中、小説家の千早 茜さんイとフリーアナウンサーの川田裕美さんに「いちご」を使ったイチ推しのスイーツ&ストーリーを聞きました。
“エッセイにも小説にも書いたほど。私を幸せにしてくれるいちごパフェ” 小説家 千早 茜さん
私はスイーツをはじめとする嗜好品への愛がすごく強い。人間が生きる上で不可欠ではないけれど、それでも絶対になくてはならないもの。どこか自分の仕事と重ねていて、でも小説はスイーツほど人を幸せにはできないから、一層敬意を払いたくなるのだ。
小説家になる前、パティシエとして洋菓子店やカフェでスイーツを作っていたことがあった。当時の私はパフェのことをズルいと思っていた。ケーキは長い時間くずれない構造が求められ、制約が非常に多い。でも、パフェはグラスという外郭があり、なんでも入れられる。素材同士が溶け合ってもいい。しかし、数年前からケーキと同じように建築物のような美しいパフェが増え、恋に落ちてしまった。展開が複雑で驚きが止まらないパフェがある一方で、「資生堂パーラー」のストロベリーパフェは、可愛さの象徴であり、パフェのイデア。くびれが美しい特注のグラスには、伝統のレシピに基づいたバニラといちごのアイスクリーム、果肉がごろごろ入ったレモン果汁入りのソース、ややかためのクリーム、赤く淑やかないちご……。上から横から斜めから、余すところなくその姿を写真に収めたくなる、昭和30年代から君臨する“淑女パフェ”。店内も素晴らしい。白いテーブルクロス、やわらかな絨毯、行き届いたサービス……慎ましくも品格があり、いつ訪れても安心感をくれる。特にコロナ禍で社会や経済がめまぐるしく変化するなか、時代とともに微調整を行いながら、長きにわたって同じ味が提供できるのは奇跡。ずっと大事にしていきたいと思う。
資生堂パーラー 銀座本店サロン・ド・カフェのストロベリー パフェ ¥1800
DATA
東京都中央区銀座8の8の3 東京銀座資生堂ビル3F
☎03(5537)6231(予約不可)
営 11時〜21時(日・祝日〜20時)
休 月曜(祝日は営業)
小説家
千早 茜さん
1979年生まれ。『ひきなみ』(KADOKAWA)、『透明な夜の香り』(集英社)など著書多数。『わるい食べもの』(ホーム社)など読めばお腹がすくような食にまつわる著書も人気。
撮影/山口真由子
“わざわざ取り寄せしたい、白あん入りのいちご大福です” フリーアナウンサー 川田裕美さん
スイーツ全般大好きですが、特にあんこが大好物。きっかけのひとつが、小学生の頃に祖母が買ってきてくれたいちご大福でした。あれこれ試すなかで特に感動したのが、大学生のときに出会った「一心堂」。今はコロナ禍でなかなか帰省できないので、お取り寄せして楽しんでいます。大粒かつ上等なものだけを厳選したいちごを、透けて見えるほど薄い羽二重餅のようなお餅と白あんで包んであるのが特徴。関西では“いちご大福には白あん”がポピュラーで、一般的なあんこに比べてまろやかで優しい口当たりゆえ、いちごにそっと寄り添うバイプレーヤー的な役割を果たしてくれる気がします。冷蔵便で届いたその日が賞味期限なので、当日は家事が一段落した際の自分へのご褒美に。いちご大福が似合う器にのせ、可愛らしい姿にときめき、五感をフルに使ってほかでは味わえないみずみずしい逸品を自宅でほおばる――これはもう、究極の自己満足であり、最高のゆるみ時間。
最近は子どもを寝かしつけたあと、結婚後に甘党に傾倒してきた夫とスイーツと飲み物をいただきながら、「今日はこんなことがあったよ」と、お互いの近況を報告し合う時間が増えたのも、スイーツの恩恵かもしれません。
一心堂のいちごの王様 1個¥486
DATA
(堺本店)大阪府堺市東区日置荘原寺町19の7
☎072(285)6798
営 9時〜18時
休 水曜
https://www.issindo-osaka.com
※オンラインショップあり
フリーアナウンサー
川田裕美さん
テレビ出演のほか、著書に『東京あんこ巡り』(KADOKAWA)、『ゆるめる準備 場にいい流れをつくる45のヒント』(朝日新聞出版)がある。
※果物の収穫時期・状況によって価格が変動する場合があります
撮影/嶌原佑矢、nae. (Parlor Vinefru 銀座分) スタイリスト/辻村真理 取材・原文/広沢幸乃 ※BAILA2022年4・5月合併号掲載