コロナ禍の影響により、注目されているのが“免疫力の向上”。この免疫力は、細菌やウイルスなどの病原体から体を守る防御能力のこと。この免疫力が低下してしまうと、風邪をひきやすくなってしまったり、アレルギーや様々な病気を引き起こしたりと、体に悪影響を及ぼします。では、どうすれば免疫力を高めることができるのか? 医師・石原新菜先生に伺ってみました。
教えてくれるのは…
イシハラクリニック副院長 石原新菜 先生
医師。漢方医学、自然療法、食事療法を活用しながらさまざまな病気の治療にあたっている。わかりやすい医学解説と親しみやすい人柄で人気があり、テレビや雑誌などのメディアでも幅広く活躍。『やせる、不調が消える 読む冷えとり』(主婦の友社)など、冷えやしょうがについての著書も多数。
体の不調は全て冷えが原因!? 温める習慣で免疫力UP!
「免疫力を高めたいと思っているなら、まず体が冷えてないかチェックしてみてください。古くから“冷えは万病のもと”と言われますが、実際に体温が1℃下がるだけで、代謝は12%、免疫力にいたっては30%も下がると言われています。体が冷えてしまうと、体温を維持しようと血管を収縮させるため、血液が行き渡りにくくなり、手足などの末端が冷えてしまいます。ただ体が冷えているだけ、と軽く見てはいけません。血液は酸素や栄養を全身に巡らせたり、老廃物の排出をサポートもしているので、体が冷えるだけで便秘や下痢、肥満やむくみ、頭痛や肩こり、肌や婦人科系のトラブル、生活習慣病、不眠やメンタル面の不調など、ありとあらゆる心身の不調をもたらします。疲れが取れない、何となく体調が優れない、痩せにくくなった……。それは全て、体の冷えが影響しているのかもしれません。そのまま放っておいたら、大きな病気に進行してしまう可能性も十分にあるのです」(石原先生)
日本人の平均体温は下がっている? それは毎日の生活習慣が原因かも
「まずは自分の体温が何度あるのか調べてみましょう。朝起きてすぐだと体温が低く、午後に向かって体温は上がり、また夜に向かって下がっていくため、平均値を出す場合は午前10時前後がおすすめ。ちなみに、「冷え」を判断するには「36.5℃未満」を基準にしてみてください。
【体の冷えチェックリスト】
⬜︎ お腹に触れると冷たい
⬜︎ 体温が36.5℃未満
⬜︎ 赤ら顔
⬜︎ クマができやすい
⬜︎ 頭痛が頻繁に起こる
⬜︎ 鼻の頭が赤い
⬜︎ 歯ぐきが黒ずんでいる
⬜︎ 手足がいつも冷たい
⬜︎ 逆に手足がいつもほてっている
⬜︎ 青あざができやすい
⬜︎ 汗をかきやすい
⬜︎ 痔になりやすい
チェックが4個以下の人は、たまに不調を感じるなら冷えが原因かも。有酸素や筋トレなどで体を動かして。チェック5〜7個の人は、このままでは病気にかかりやすい体に。運動に加え、腹巻きなど温めアイテムを日常に取り入れるのがおすすめ。チェックが8個以上の人は完全に冷え切った体なので要注意。生活習慣の見直しを。
60年前の日本人の平均体温は36.8℃とされていました。でも、現在の女性の約8割、男性の6割がその平均値に達しておらず、日本人の平熱は約1℃下がっているという研究結果も出ています。体を冷えさせてしまう原因は、主に5つ。
①筋肉不足
②食生活の変化
③シャワーだけの入浴
④水分の過剰摂取
⑤ストレスです。
冷えを取りたい、免疫力を高めたいならば、この生活習慣を見直す必要があります。
また女性の場合、生理が始まったときから排卵までが低温期。体が冷えていると生理痛もひどくなったり、子宮系の病気にもなりやすいため、予防のためにも温める習慣は必要です。
【Point1】筋肉を動かして“発熱ボディ”に
「体が冷えやすい主な原因が、筋肉不足。なぜなら、筋肉は体温の40%を作っているから。つまり、体を温める方法として一番効率が良いのが、筋肉量を増やすこと。筋肉を増やすことで、自家発電するように熱を生み出すことができ、代謝も高まりエネルギー消費をしてくれるため、結果的にダイエットにも繋がります。おすすめ筋トレが、スクワット。1日30回で良いので続けてみてください。体の筋肉の75%が下半身についているので、下半身を中心に鍛えるのがポイント。この時期だからこそ、お家のなかで続けられることを見つけていきましょう」
【Point2】 湯船にきちんと浸かる
「これからの時期は特にシャワーだけで済ます人も多いかもしれませんが、体の芯から温めるためにも湯船に浸かる習慣を身につけましょう。目安はフツフツと汗をかくまで。適正の温度や時間は人によって差があるため、心地よいと感じる温度で汗をかくまでを目安にするのがおすすめです。炭酸系の入浴剤は血行を促進するので、一緒に使うと効果的」
【Point3】 頭寒足熱コーデを心がける
「下半身の回りを良くするためにも、“頭寒足熱”を意識したコーディネートを。熱は上へ上へと流れるため、下半身を温めるファッションを心がけましょう。まずは腹巻きをするのを基本とし、下半身はレギンスやスパッツなどで1枚プラス。温度調整できるよう、着脱できるカーディガンやショールを夏でも持ち歩くのがおすすめ。また、家でも靴下は絶対。できれば5本指ソックスに厚手ソックスやレッグウォーマーを重ね履きすれば、足元からポカポカに」
【Point4】水分を摂りすぎない
「巡りを良くするために……と、水をたくさん飲む人がいますが、実はそれが冷えやむくみを引き起こしている場合も。余分な水は溜め込まないよう、「飲みたいときに飲む」といった適量を心がけるようにしましょう。さらに汗をかきやすい人も、実は隠れ冷え性の場合も。水分代謝が悪く、冷たいものを摂りすぎて内臓が冷えてしまっています。余分な水分を出そうと汗をかいてさらに体を冷やす悪循環を起こやすいので注意が必要です。なるべく水分を摂るときは、白湯に何かを足したり、しょうが紅茶やにんじんりんごジュースなどを選んで、体を温めることを意識していきましょう」
【Point5】寝るときは長袖&長ズボンのパジャマで
「エアコンを付けないと寝苦しい夏の夜。質の良い睡眠を得られないならば、我慢する意味はありません。だったら、エアコンは付けつつも温かい服装を心がけて、冷えない体づくりをしましょう。エアコンを付ける場合は、タイマー設定でも1日中つけてもどちらでもOK。ただし、短パン&半袖Tシャツで寝るのではなく、長袖&長ズボンのパジャマ、そして腹巻きも着用しましょう。掛け布団は春秋用のものを選ぶのもポイント。エアコンを付けたとしても、冷えない服装を心がければ、質の良い睡眠は得られます」
平熱が低いことを「体質」だと思い込んで諦めていませんか? 何歳になっても、体温を上げることは可能なんです。日常のちょっとした習慣を改めるだけでも、慢性的な不調が改善していくのを感じるはず。それは自然と体や心の免疫力の向上にも繋がります。こんな時代だからこそ、自分の生活を見直して「温活」始めてみませんか?
取材・文/谷口絵美