美容エッセイが話題の小説家・爪切男さん。保湿と向き合うなかで、世界がドドーンっと広がったという彼の言葉に隠れる美容の本質とは？ 今回は、保湿ステップの最後にたどりついた、「潤いにフタをする」アイテムについて語っていただきます。

化粧水にシートマスク、丁寧な洗顔……とだんだん美容を知ってきたなかで、次に進むべきは“フタをする”ってやつだと周囲から言われます。まだまだ美容は奥が深い。越えるべき壁はいっぱいあるなと痛感するのですが、私のようなおじさんはあきらめることも大事だなと思います。壁って自分一人で乗り越えるのが美徳とされているけれど、一回あきらめて周りの人の意見を聞いてみるのも、新たな道が拓ける一歩なんじゃないかなと。美容を長く続けている皆さんは、経験豊富ゆえ正解がわからなくなってくることもあると思うんです。美容初心者の私は、できないことは無理をせず、続けられることだけやっています。そうしたらまったく想像してなかったほど世界が広がったんですよ。だからあきらめってある意味チャンスで、大人の余裕とも言い換えられる。30、40代はあきらめから人生が大きく変わる世代なのかも。

撮影／藤澤由加　イラスト／moeko　取材・原文／前野さちこ　構成／渡辺敦子　※BAILA2025年12月号掲載