「おしゃれに悩んだことは一度もない」と断言するスタイリスト百々千晴さん。あれこれ考えず、とにかく服を着ることを楽しんでほしい。そんな、クリアで明快な考え方にたどり着いた理由とは。今回はおしゃれのバランスについて。サラッと着こなす夏のシャツコーデを紹介。
【バランスについて】
スタイリング=アイテムの足し算、ではなく
むしろ、どこをあきらめるかが大事。
好きなものを着て、自分が心地よくて、
おしゃれが楽しいのがいちばん
「ファッションって結婚相手と同じ(笑)。あきらめることのほうが多いんです。でも、好きかどうか。それが重要。全部は得られないし、全部欲しがるから幸せになれない。自分で判断して、ちょうどいい落とし所を見つけるだけ。どこをあきらめるか、ってこともセンスだと思う」(百々さん、以下同)
「いかに“決めている感”を出さずにシャツを着こなすか、がこのスタイルのテーマ。裾アウトでウエストにポイントを置かず袖もまくらず、サラッとストンと着る感じ。あれこれ足して、着こなしのテクニックが満載みたいなのは好きじゃない。コーディネートはいつも引き算で考えています」。シャツ¥33000/ウィム ガゼット ルミネ 新宿店(ウィム ガゼット) スカート¥80300/コロネット(ヴィンス) ピアス¥15400/ジュエッテ 靴¥185900/ピエール アルディ 東京(ピエール アルディ)
スタイリスト
百々千晴
どど ちはる●シンプルでありながら、配色とバランスの妙で圧倒的な洒落感を表現するスタイリングが大人気。自身のブランド「THE SHISHIKUI」や、キュートな人柄がのぞくYouTubeチャンネル「DODO TUBE」のファンも多い。
「何が流行っているんですか? 何を着ればいいですか? これ、本当によく聞かれます。でもね、答えなんてない(笑)。それに対しての答えだけを教えてしまうと、問題が変わったらまた同じ迷路に入っちゃう。知ってほしいのはアイテムの組み合わせ方ではなくて、おしゃれに対する考え方。ファッションに正解なんてないんです。」
「たとえば私の場合、料理が苦手だし好きじゃないし、どうやっても美味しくつくれないから、もうつくらずに食べに行くって決めてる。いくら楽しめって言われても、苦手なものは苦手なんです。これは服に置き換えても同じ。本当に苦手なら無理して新しいおしゃれにトライしなくていい。ずっと同じ服でいいんです。無駄なことを頑張るより、効率のいい考え方で自分なりの着地点を見つけてほしい。もちろん服を楽しんでもらいたいけれど、それで苦しくなっちゃうくらいなら、服はほどほどにして違う楽しみを見つければいい。たまたま、私はファッションが好きで、新しい服を着れば気分が上がって、おしゃれなものを見つけるのが好き。でも料理は苦手だった、それだけ。何が自分にとって心地いいか、何が好きか、という視点で自分のおしゃれを見つけてもらえればいいんです。だって自分の正解は自分の中にしかないんだから。」
撮影/酒井貴生〈aosora〉 ヘア&メイク/河嶋 希〈io〉 スタイリスト/百々千晴 モデル/佐藤晴美 取材・原文/発田美穂 ※BAILA2024年8・9月合併号掲載