「私たち、迷走期がなかったかも?」というスタイリスト佐藤佳菜子さん&エディター東原妙子さん。おなじみ親友コンビの軽妙なトークとファッション理論で、おしゃれ迷子たちのお悩みをサクッと解決! 今回は二人のファッション変遷をチェック!
二人のファッションはaround 33からどう変わった?佳菜子&妙子のファッション変遷
若かりし頃からファッションとともに歩んできた二人。20代後半~現在までのMYスタイルの歴史をひもとく。
《20代後半》 おしゃれは我慢。自分ルールに厳しい時代
佐藤佳菜子さん:スタイリストになりたての頃。20代だけど、すでに今に通じるコンサバな服装してた
東原妙子さん:ボーダーは当時も今も大好き! シルエットや小物合わせでアップデートされてる
2011年6月号 撮影/西出健太郎
妙子 この頃、毎日ヒール履いてたな~(遠い目)。今なら秒で足首折る自信あるが(笑)。トレンドだったというのもあるけど、相当なお金と労力をファッションに費やして頑張ってた。
佳菜子 20代ってたいていのコミュニティでいちばん下っ端で、小可愛く見られたいって願望もあったし頑張ってたよね。あと、自分に課してるルールが今より厳しかった。アクセとバッグの金具は色をそろえるとか、パンツは細身しかはかないとか。
《30代前半》 ルールが緩和され、新たなチャレンジも
佐藤佳菜子さん
2016年8月号 撮影/福本和洋
東原妙子さん
2015年5月号 撮影/遠藤優貴
佳菜子 厳格な自分ルールが緩んできた時代。ヒールだけじゃなくスニーカーを履いてみようとか、太いパンツもいけるかもとか、今までなかった新しいものを取り入れ始めてた。
妙子 “シンプルでコンサバ”というベースは大きく変わらないけど、その中で可動域が広がったんだよね。自分で正しいものを選べる自信がついたから、決まった成功事例だけでなく、その枠を超えたものも余裕をもって楽しめるようになったのかも。
《30代後半》 ますます自由に。自分らしさを楽しむフェーズ
佐藤佳菜子さん
2021年8月号 撮影/金谷章平
東原妙子さん:この服とバッグ、年末大掃除で佳菜ちゃんに捨てられずいまだに使ってる!(笑)
2016年8月号 撮影/竹内裕二
妙子 仕事もファッションもベテランになってきて、誰に何を言われる年でもないし、どんどん自由になってきちゃってる。
佳菜子 妙ちゃんはそれまでも充分自由なマインドで暮らしてたよね?(笑) ここまで100本ノックみたいに散々ファッションと向き合ってきたことで、体が覚えているというか、自分らしさの正解をすっと導き出せるようになってきてた。
妙子 この頃には、「着るか?」「似合うか?」のジャッジなんて、それはもう息を吸うように無意識にしていたわ。
《現在》 もはや健康優先!? 迷いもストレスもフリー
佳菜子 40歳を超えた今、おしゃれに我慢がきかなくなってきた。服を着ることにも選ぶことにも一切のストレスを感じたくない。
妙子 私なんてもう老後の健康まで視野に入れ始めちゃってるからね? ストレスは万病のもとだからガサガサする服は無理とか、血流を止めちゃいけないからウエストゴムとか、腰が痛いからアイロンいらずな服がいいとかさ。
佳菜子 アンクレイヴ ホワイトもそういう視点でつくってるもんね(笑)。
シルエット、質感、着心地…着ていて自分を上げてくれて気分がいい服しか選ばない!
2023年12月号 撮影/長谷川怜実
2022年10月号 撮影/木村 敦
二人にとって“おしゃれ迷走期”とは?
(佐藤さん)すべて本人私物 (東原さん)ワンピース¥26950・手に持ったブラウス¥17930/アンクレイヴ(アンクレイヴ ホワイト) その他/本人私物
佳菜子 えーっと、私、過去を振り返ってみても迷走期がないのよ。
妙子 私は’90年代コギャル世代なもんで高校時代は結構お恥ずかしいけど(笑)、迷走ってそういうことじゃないよね?
佳菜子 眉毛ほっそい時代ね(笑)。そうなると今回、私たちが皆さんにお伝えできることないんじゃない? もしかして。
妙子 企画終わっちゃう(笑)。じゃあ逆に迷走しなかった理由を考えてみよ!
佳菜子 昔から自分に似合うもの、好きなものがはっきりしていて、迷いようがなかったよ。自分のことって誰よりも自分がわかっているじゃない?
妙子 あ、普通はそれができないから迷走するのでは? 若い頃は、世のトレンドとか、誰々が着ていて可愛いとかで服を選んでいて、自分に似合うかなんて深く考えなくてもフレッシュの塊だったからどうにかなってた。でも30歳を迎え、後輩もできて社会的に一人前と見なされる立場になってふと我に返ったとき「あれ、私この服似合ってる?」と迷走を始める人、多そう。
佳菜子 ネットで買い物して一人で試着して、画面の中の人の服装を真似して、自撮り写真を加工して……ってそれが主流だと、現実の自分に何が本当に似合うのか見失うだろうね。まず必要なのは、自分自身と向き合うことでは?
妙子 つまり今回のテーマは、「自分探しの旅に出ましょう」ってことでOK?
佳菜子 旅企画?(笑) でも本当、ブルベだ骨格何だとか参考にするのはいいけど、自分で考えるのを放棄して他人が決めた基準がすべてになってはダメ。服が似合わない、何か違うって思うなら、お店に行って10着試着してみる、髪型やメイクを変えてみる、靴を変えてみる、何でもいいけど、自分を引きで見て違和感の理由を考えてみて。私たちも莫大な労力とお金を費やしてトライ&エラーを繰り返してきたからこそ今があるんだから。
妙子 そう。“他人軸”ではなく“自分軸”で考えられるよう、ファッション脳を活性化させるには何をしたらいいか。今回はそういうテーマでお送りします! ふう~、うっかり旅企画になるところだったわ、危ない危ない(笑)。
スタイリスト
佐藤佳菜子
さとう かなこ●独特のサトカナ節で、思わずひざを打つ誰もが取り入れやすいファッション理論を提案する人気スタイリスト。ベーシックを基調としたモダンできれいめなスタイリングを得意とする。
エディター
東原妙子
ひがしはら たえこ●エディターとしてBAILAなどの雑誌を中心に、広告やブランドのカタログなどで幅広く活躍。2021年秋から人気ブランド「アンクレイヴ ホワイト」のディレクターを務めている。
撮影/長谷川怜実〈S-14〉 ヘア&メイク/沼田真実〈ilumini.〉 スタイリスト/佐藤佳菜子 取材・原文/東原妙子 ※BAILA2024年8・9月合併号掲載