「ミラ オーウェン」でも活躍したデザイナー、坂上典子さんの新ブランド「ミースロエ」。坂上さんが新ブランド「ミースロエ」を立ち上げたのは、自身の心や生活スタイルの変化に直面したことがきっかけだった。「洋服で人を幸せにしたい」というピュアな想いを貫き通した、デザイナー坂上典子さんの推しアイテムとは?
服飾専門学校でデザインを学んだ後6年間他社で実績を積み、26歳でマッシュスタイルラボに入社。「ミラ オーウェン」のサブチーフデザイナーを経て、2021年に「ミースロエ」のチーフデザイナーに就任。現在34歳。Instagram:@s_nori1112/@miesrohe_
1.“自立した女性のため”のセットアップ
モードすぎず、だけど仕事でしか着られないスーツとも違う。ブランドのコンセプト「ジャストモード」のとおり、ジャストにモード感を感じられる、働く女性のこれからをよりおしゃれに、より快適にするセットアップ。(左)ジャケット¥31900・(右)パンツ¥20900/ミースロエ
“仕立て映え”する。つまり、絶対に着るだけでサマになる
「『ミースロエ』は可愛く見られたいというより、凜としていて尊敬される人になりたいと思う女性に向けて服作りをしています。だから、そんな自立した大人の女性のための、着るだけでサマになる“仕立て映え”するセットアップは絶対に作りたいと思っていました。たとえばジャケットは、プレゼンの日に着ればバシッと決まるし、日常では決まりすぎずおしゃれに着られるように、ワイド感や肩の落ち具合をミリ単位で計算したり。日本人はウエストが細い人が多いので、パンツはスタイルよく聡明に見えて、着たときに自信が持てるように思い切りハイウエストにしていたり。マニッシュだけどメンズ服のように平面的ではなく、女性の体の丸みに似合う立体的なフォルムを意識して、“シンプルをデザインした”セットアップを作りました。
もうひとつのこだわりが素材のリラクシーウール。私はずっと、大人の女性にこそウールを着てほしいと思っていて。しなやかで強くて、長く愛せる。そんな素材が着る人を守って、背中を押してくれるといいな、という願いも込めています」
2.“ちゃんとおしゃれ”なサステナブル
(左)今までのサステナブル服と一線を画す上品で心地いいアセテート素材。シャツ¥15400・(右)甘さではなく上半身をきれいに見せるためのパフ袖が素敵。ブラウス¥16500(ともに4月上旬発売)/ミースロエ
美シルエットとシワになりにくい機能性を両立。コート¥39600/ミースロエ
素材の気持ちよさを、なにより大切にして
「“サステナブルアイテムとは思えないくらいのモード感”を意識して作っています。サステナブルな素材を使って作っているというだけではなく、それをどう着てほしいのかというところまで考えながら。まだ流通している素材がすごく少なくて扱いづらいものもあるなかで、ほっこりしていなくて、かつシワになりにくい機能的な素材を探しに探しました。特にトレンチコートは、カッコいい女性になりたいと思っている人に着てほしいのにバサッと羽織ったコートの後ろ姿にシワが入っているのはイヤだなと思って(笑)、ずっと探してようやく出会えた生地です。
そして裏テーマとして決めていたのが“素材の官能性”。女性って五感が優れているから、服を選ぶときに肌に触れる感覚ってすごく大事ですよね。触ったときに気持ちいいと思えたり、いっそ素肌にまといたいと思える。そんな服を提供したいと思っているんです。だって、チクチクする服は絶対に着なくなってしまう。着なくなるってことがもう、サステナブルではないですから」
3.“賢く見える”リブニット
レープでデコルテも美しく。ニット¥13200/ミースロエ
異なるリブを胸下でV字に切り替え。ニット¥9900/ミースロエ
アンサンブルで着るのも素敵。カーディガン¥15950・ニット¥12100/ミースロエ
さりげなく太さの違うリブをミックスすることで、平坦に見えないおしゃれなシンプルに。ニット¥10450/ミースロエ
ほかと同じようでいて、「あ、なんかこっちが素敵」
「リブニットにはとても思い入れがありまして。というのも、いろんなお店で売っているけれど、いちばん“賢く見える”リブの幅ってなんだろうとずっと思っていたんです。
自宅で洗えるし日常使いに最適なんだけど、仕事のときにはパッと着るだけで自信が持てるリブニットを作りたくて、その幅を研究しつくした結果がこの4種類です。1ミリ単位で違うリブ幅のサンプルを何種類も試して『あ、これがいちばん賢く見えるかも』という地道な作業でしたね(笑)。そしてぺたんと単調に見えないように異なる幅のリブで切り替えを入れたり、やはりミリ単位で細い畝と太い畝をミックスしたり、一日中語れるくらいディテールにこだわり抜いて作りました。
だけどもちろん、そういう裏方のテクニックはお客さまには伝わらなくてもいいと思っていて。同じようなものをパッと見比べたときに、感覚的に『なんかこっちのほうがいいかも』と感じてもらえたらいいなと。そんなことの積み重ねで、深く信頼してもらえるブランドになっていけたら嬉しいですね」
4.“何も考えなくていい”ワンピース
(左)どんな場面にもなじむストライプ。ワンピース¥26950・(中)細かなギャザーで一枚で絵になる立体的シルエットを構築。ワンピース(5月上旬発売)¥23100・(右)端正なシャツワンピにも腕を細く見せる袖の形など心配りが満載。ワンピース(4月上旬発売)¥24750/ミースロエ
オンもオフも着られる“余白”をつくりたかった
「ワンピースって絶対的な女性の味方だと思っているんです。だから全型『何も考えたくないなってときに着てほしいワンピース』という裏テーマで作りました。このマインドは展示会でも『わかるわかる』って皆さんに共感していただけて(笑)、おかげでワンピース自体もとても好評でした。
すごくデザインされているわけではなく、でもシンプルすぎず、これ一枚着ればこなれて見えるし気分も上がる。そして服だけが独り歩きしてしまうのではなく、いろんな着方を想像できる“余白”がある。そんなワンピースになるようにこだわったのは立体感と分量感です。女性らしい体のフォルムをちゃんと出してくれるようなシルエットやギャザーやタックの入れ方を、実は綿密に計算しています。『次の休日にはこのワンピースにスニーカーを履いて買い物に行こう』なんて、着る人にワクワクするような想像をしながら楽しんでもらえたら、と思っています」
撮影/魚地武大〈TENT〉 ※BAILA2022年3月号掲載