佐藤佳菜子さん&東原妙子さんの「おしゃれ人生相談室」〈まとめ〉【30代おしゃれ迷子になったら】

「私たち、おしゃれ迷走期がなかったかも？」というスタイリスト佐藤佳菜子さん&エディター東原妙子さん。おなじみ親友コンビの軽妙なトークとファッション理論で、おしゃれ迷子たちのお悩みをサクッと解決！

若かりし頃からファッションとともに歩んできた二人。20代後半～現在までのMYスタイルの歴史をひもとく。

妙子　この頃、毎日ヒール履いてたな～（遠い目）。今なら秒で足首折る自信あるが（笑）。トレンドだったというのもあるけど、相当なお金と労力をファッションに費やして頑張ってた。

佳菜子　20代ってたいていのコミュニティでいちばん下っ端で、小可愛く見られたいって願望もあったし頑張ってたよね。あと、自分に課してるルールが今より厳しかった。アクセとバッグの金具は色をそろえるとか、パンツは細身しかはかないとか。

佳菜子　厳格な自分ルールが緩んできた時代。ヒールだけじゃなくスニーカーを履いてみようとか、太いパンツもいけるかもとか、今までなかった新しいものを取り入れ始めてた。

妙子　“シンプルでコンサバ”というベースは大きく変わらないけど、その中で可動域が広がったんだよね。自分で正しいものを選べる自信がついたから、決まった成功事例だけでなく、その枠を超えたものも余裕をもって楽しめるようになったのかも。

妙子　仕事もファッションもベテランになってきて、誰に何を言われる年でもないし、どんどん自由になってきちゃってる。

佳菜子　妙ちゃんはそれまでも充分自由なマインドで暮らしてたよね？（笑）　ここまで100本ノックみたいに散々ファッションと向き合ってきたことで、体が覚えているというか、自分らしさの正解をすっと導き出せるようになってきてた。

妙子　この頃には、「着るか？」「似合うか？」のジャッジなんて、それはもう息を吸うように無意識にしていたわ。

佳菜子　40歳を超えた今、おしゃれに我慢がきかなくなってきた。服を着ることにも選ぶことにも一切のストレスを感じたくない。

妙子　私なんてもう老後の健康まで視野に入れ始めちゃってるからね？　ストレスは万病のもとだからガサガサする服は無理とか、血流を止めちゃいけないからウエストゴムとか、腰が痛いからアイロンいらずな服がいいとかさ。

佳菜子　アンクレイヴ ホワイトもそういう視点でつくってるもんね（笑）。

佳菜子　えーっと、私、過去を振り返ってみても迷走期がないのよ。

妙子　私は’90年代コギャル世代なもんで高校時代は結構お恥ずかしいけど（笑）、迷走ってそういうことじゃないよね？

佳菜子　眉毛ほっそい時代ね（笑）。そうなると今回、私たちが皆さんにお伝えできることないんじゃない？　もしかして。

妙子　企画終わっちゃう（笑）。じゃあ逆に迷走しなかった理由を考えてみよ！

佳菜子　昔から自分に似合うもの、好きなものがはっきりしていて、迷いようがなかったよ。自分のことって誰よりも自分がわかっているじゃない？

妙子　あ、普通はそれができないから迷走するのでは？　若い頃は、世のトレンドとか、誰々が着ていて可愛いとかで服を選んでいて、自分に似合うかなんて深く考えなくてもフレッシュの塊だったからどうにかなってた。でも30歳を迎え、後輩もできて社会的に一人前と見なされる立場になってふと我に返ったとき「あれ、私この服似合ってる？」と迷走を始める人、多そう。

佳菜子　ネットで買い物して一人で試着して、画面の中の人の服装を真似して、自撮り写真を加工して……ってそれが主流だと、現実の自分に何が本当に似合うのか見失うだろうね。まず必要なのは、自分自身と向き合うことでは？

妙子　つまり今回のテーマは、「自分探しの旅に出ましょう」ってことでOK？

佳菜子　旅企画？（笑）　でも本当、ブルベだ骨格何だとか参考にするのはいいけど、自分で考えるのを放棄して他人が決めた基準がすべてになってはダメ。服が似合わない、何か違うって思うなら、お店に行って10着試着してみる、髪型やメイクを変えてみる、靴を変えてみる、何でもいいけど、自分を引きで見て違和感の理由を考えてみて。私たちも莫大な労力とお金を費やしてトライ＆エラーを繰り返してきたからこそ今があるんだから。

妙子　そう。“他人軸”ではなく“自分軸”で考えられるよう、ファッション脳を活性化させるには何をしたらいいか。今回はそういうテーマでお送りします！　ふう～、うっかり旅企画になるところだったわ、危ない危ない（笑）。

A.真反対のボーイッシュなアイテムと合わせて

佳菜子　大人が甘い服を着ちゃいけないってことはないの。ただ基本的なルールとして「甘い服は一点にしぼること」！

妙子　でも難しいのはさ、迷走中の人って、甘い服にさらに甘いものを合わせているのに、自分ではそれがシンプルだと思っていたりするケースがあるのよ。無地＝シンプルとか、柄でも形が普通とか、シンプルの定義って曖昧だから、そこも迷うポイントな気がして。だから、一点投入の甘い服には何を合わせるべきか、明確な基準があるといいのかも。

佳菜子　よし、じゃ今ここで決めよう！（笑）　それなら、甘い服には真逆のテイストをぶつけるのがいいと思う。ほら、人間って意外性があったほうが魅力的じゃない？　ボーイッシュとかマニッシュとかを甘い服とミックスすることで、大人らしいこなれた感じが出る。

妙子　あとは、松田聖子ちゃんみたいに、個性として“大人になっても甘々の服が似合う自分”に仕上げるか、どっちか！

A.普段、日常空間で着た感じを客観的にイメージすること

A.鏡と店員さんはうのみにしないで！

A.《1》面積が小さいアイテム　《2》シルエットが構築的でないもの　《3》間違いないのは黒か白

佳菜子　私、プチプラアイテムって一切買わないの。ワンシーズン終わる頃には着なくなるのが逆にもったいないから。

妙子　私はたまに買うけど、結構選ぶ目が試される気がする。

佳菜子　安くてもデザインが気に入ったものや、確実に着るものならいいけど「大人なのに着ていいのかな？」って迷うものはまず買わんでいい。その分貯金して本当に欲しいものを買お！

妙子　私、服を買うにせよつくるにせよ“高見え”は常に意識していて、そういう観点で言うと、基本的にプチプラでは選ばないと決めているものがあって。まず、素材感勝負みたいな面積が大きいもの＝アウターはプチプラで買わない。あと、パンツでもワンピースでも、ドレープ感があるものはいいけど、構築的なシルエットを求めるデザインは選ばない。

佳菜子　わかる。ボディラインを立体的に見せたり隠したりするのは難しいから、若くてピチピチの体ならいいんだけど、大人の体型悩みを上手にカバーしてもらえないんだよね。

妙子　そうなの。あと、色選びも要注意！　プチプラのニュアンスカラーって、たまに若者向けというか、大人の顔色を上げてくれないときがあるよね。

佳菜子　微妙なニュアンスカラーってもっさりしておしゃれに見えない。確実なのは、色がはっきりしている白か黒！

A.普通の下着でOKの範囲を一カ所だけ出す！

佳菜子　全身ピチピチのプリンプリンならいいんだけど、とはいえ大人の肌見せは“品のよさ”が絶対条件。出すならデコルテ、肩、背中、脚のどこか一カ所にとどめるべし。

妙子　そうね。私は露出好きだから（笑）、アンクレイヴ ホワイトでも毎シーズン肌見せ服をつくっているけれど、デザインするときのひとつの指標にしているのは、“特殊な下着を用意しなくても着られる”ってこと。たとえば、背中開きの服だとしても、普通のブラジャーが見えてしまうほど大きく肌が露出しないよう調整してる。

佳菜子　確かに、そこさえ守っていれば、大人としての社会性をキープできる気がする！

A1. uncrave WHITE

A2. THIRD MAGAZINE

A3. Chaos

A4. 1er Arrondissement

妙子　この度は、アンクレイヴ ホワイトを選んでいただきありがとうございます！（笑）

佳菜子　うむ、そこはもうズブズブだから（笑）。でも本当の話、今回厳選した4つのブランドの共通点は、どこもコンサバをベースにしてるってこと。つまり、生地や仕立てがしっかりしていて、細部まで大人への気づかいやサポートがあって、きちんとした社会性を備えた服づくりをしてる。

妙子　確かに、若者向けのカジュアルブランドって、体型カバーや着心地のよさをあまり考慮してくれてないことが多くて、大人が着るには心許ないときがあるよね。

佳菜子　そうなの、そうなると服に頼れないのよ。この4つの中なら、どこでどんな服を選んでも絶対におかしなことにならないっていう信頼感がある。その上で、テイストの微差はお好みで選べばいい。ほら、これなら迷走しようがないでしょ？

A.3コーデ思い浮かべば買ってよし！

佳菜子　単品で見て可愛い！ってやみくもに飛びついてはダメ。バイラでも人気の「一カ月着回し」企画ってあるでしょ？　あれで基本ワードローブを選ぶとき、私は1枚の服で3つコーディネートが思い浮かばない服は使えないから入れないの。だから、買うか迷ったらいったん落ち着いて、自分の頭の中で3つコーディネートを考えてみるといいのかも。

妙子　確かにそれを目安にしたら、とんでもなく奇抜で使えない服を買うこともないだろうし、逆にデザインが効いてる服でも3コーデ思いつくなら汎用性があるってことだから買ってよし。

佳菜子　そう。あわよくば、通勤、休日、おでかけ、とか3つ違ったシーンで着回せたら完璧！

これを着回し！

A.シンプルこそ計算が必要

佳菜子　シンプル=簡単っていう考えを今すぐ捨てたほうがいい！　シンプルになればなるほど本人のセンスと素材が問われるよ。たとえば、本当にシンプルでカジュアルなTシャツ&デニムを、普通の大人が何も考えずに着てごらん？　ただただ楽してる地味な人だよ。

妙子　それをおしゃれに着こなすとしたら、ボディもヘアメイクも相当に磨き上げないと。我ら、桐谷美玲でも佐藤晴美でもないからね？（笑）

佳菜子　そう、だからシンプルなのにおしゃれな人って、簡単そうに見えて実はちゃんと計算してるもの。シルエットのバランスとか、素材や色のメリハリとか、小物の合わせ方とか。地味にならずどこか新鮮に見せるテクニックが、さりげなくあちこちにちりばめられてる。

佳菜子　ズバリ、ない！（笑）　そういう他力本願な考え方をまずやめてみよ。

妙子　似合うか似合わないかは人それぞれなんだから、誰にとっても万能な服なんてこの世に存在しないからね？

佳菜子　たとえば、白Ｔシャツとか？　確かに万能かもしれないけど、その答えを聞いただけじゃ何にもならなくて、それをどう着こなすかが問題！

佳菜子　似合っていない服を着ているとき！　サイズ感だとか、顔や体型に合っていないとか、思考停止で服を選んでるんだろうなって人が残念。

妙子　逆に、自分をよく理解した上で似合う服を着ていれば、どんなテイストかは問題じゃないよね。だってデーモン閣下が普通のサラリーマンみたいな服着てたら何か違くない？

佳菜子　阿佐ヶ谷姉妹が叶姉妹みたいな格好とか？（笑）　ロックンローラーだろうとゴスロリだろうと地味だろうと、ヘアメイクや体型含めてその人に似合ってればいいってことだね。

佳菜子　私の人生、衝動買いしかないよ？　自分の衝動に自信を持てるくらい、自分と向き合ってきてるからね。

妙子　佳菜ちゃん何事も白黒ハッキリしてるもんね（笑）。でも確かに、衝動もなく、買うか迷ってるくらいならいらない。迷うときって「セールで安いし」とか「いつか着るかも」とか、欲しい理由が消極的な場合が多い気がする。たとえば、パートナーと別れるか迷ってるときって、実際は別れたくないんだと思うの。本当に別れたかったら有無を言わさず迷わず別れない？

佳菜子　恋愛と一緒だよね。ピンときたら迷わず選ぶ！　好きで買ったなら、色々な着方を考えたり、似合う自分になろうとダイエットしたり、自分と向き合って試行錯誤する。そうやって自分の衝動を正解にすればいいの。

佳菜子　フロ、スシ、ネル。以上！（笑）

妙子　我らの合言葉だよね。大抵この3つで機嫌は直る。

佳菜子　まぁでも、機嫌を取るも何も、気に入らないことがあったとしても、それを決めてるのは全部自分だからね？　会社がつらいだとか、彼がムカつくとか、嫌ならそこから去ればいいのに、それをしないのも自分。他人のせいにするから腹が立つの。これまでのファッションの話とも通じるんだけど、まずは自分と向き合って、自分の人生に責任を持つこと！

妙子　そう。もちろん、うまくいかなくて落ち込む日もあるけど、フロ、スシ、ネルで気分転換したら、あとは心地よく過ごすためにどうしたらいいか、解決する方法を考えて実行あるのみ。もしくは、そこにいると決めたなら、それは自分の選択として受け入れるべし。

妙子　はい、順調です!!（笑）

佳菜子　この前、東原家に行ったときも玄関にデニムが落ちてたしね。コツコツと着実に散らかしてる様子。

妙子　受け入れようが受け入れまいが、年って勝手にとってくよ（笑）？　「私、25歳です」とか言い張ってても、社会的には47歳として粛々と処理されてく。

佳菜子　戸籍のない国に行くしかないよ。年齢が受け入れられない人って、過去の栄光に執着しすぎてるのでは？　今の時代、見た目に関しては美容医療とか運動するとか解決策は色々あるから、大事なのは中身！

妙子　うんうん。失敗も成功もとにかくあらゆるジャンルの経験値を積むことで、今の年齢の自分に自信を持てるようになるんだと思うな。

〔プロフィール写真〕（佐藤さん）すべて本人私物　（東原さん）カットソー￥13970／アンクレイヴ（アンクレイヴ ホワイト）　 撮影／長谷川怜実〈S-14〉　ヘア＆メイク／沼田真実〈ilumini.〉　スタイリスト／佐藤佳菜子　取材・原文／東原妙子　※BAILA2024年8・9月合併号掲載