確固たる個性と審美眼を持つ、大人のおしゃれプロが手に入れた“真の一生もの”とは? 出合ったストーリーやお気に入りのポイント、今も愛用している理由とともに、“マイ・一生名品”を紹介。スタイリスト福田亜矢子さんの一生名品は?
ふくだあやこ 大人の審美眼で選んだベーシックアイテムを軸にした、洗練された女性らしさを感じさせるスタイルが人気。「NAVE」のディレクターとしても活躍。
1 ジルサンダーのロングブーツ、手に入れたのはいつ?
―いつ手に入れましたか?
「ずっと気になっていた、ジルサンダーのエッセンシャルアイテムともいえる定番ブーツ。2023年の夏に満を持して(笑)、表参道のジルサンダーのショップで手に入れました」
正面からもサイドからも、フォルムの圧倒的な美しさが際立つ。ブーツ/ジルサンダー
―なぜ手に入れようと思ったのですか?
「実はロングブーツを買ったのは10年ぶり! このところ冬はずっと厚底でボリューム感のあるショートブーツばかり履いていたのですが、どんなに新しい服を着ても全身のシルエットや印象が変わらないな、と気になっていたのです。自分でもなんとなくそのバランスに飽きてきていたんですよね。
そんな中、このところの短丈トレンドがやってきて、シャツやニット、アウターでコンパクトな丈感のものを合わせたときに、ロングブーツを合わせたら一気に全身のバランスが変わって新鮮かも!と思い立ったんです。
でも私は自分のお買い物は慎重派なので(笑)、私が履いたら古い感じになっちゃうかな、という心配もあり……。何しろケイト・モスが大好きな世代なので(笑)、彼女がよくしていたスキニーデニムをインしてロングブーツに合わせるあの感じがどうしても強く印象に残っていて、なかなかトライできなかったのです。ということで思い立ってから3年くらいあれこれ見て考えて、ようやく昨年このブーツを購入しました!」
この冬は、こんな風にロングスカートの中に仕込むロングブーツが気分。トレンドの“足もと重ためバランス”が完成します。ブーツ/ジルサンダー ニット/メゾン・マルジェラ スカート/ハイク
透け感のあるチュールスカートにレギンスとこのブーツを合わせ、ほんのりモード仕上げに。ブーツ/ジルサンダー ジャケット・スカート/NAVE
2 このロングブーツが、“マイ・一生名品”になった理由とは?
「ボレロ風のひとクセシャツがオーバーシルエットなので、スキニーパンツをロングブーツにインしてバランスを取りました。このブーツが脚をすっきり見せてくれるので、こんな着こなしも可能に!」ブーツ/ジルサンダー シャツ・パンツ/NAVE バッグ/J&M デヴィッドソン
「長く愛用できるロングブーツが欲しかったので、乗馬ブーツ的なデザインでヒールがないものというのが絶対条件。足首がシェイプされていると途端に老け見えするので、すとんとしたストレートシルエットのものを探していました。
あとはこのブーツ、端正な定番デザインに見えて、実が外側はひざ上までくるニーブーツなのです。でもひざの内側はぐっと低くてひざ下まで。このカーブのおかげで窮屈さはゼロなのに、ものすごく脚長見え効果があるのです!
トレンドを超えて愛用できるというのは一生名品の条件として必要不可欠ですが、あまりにも正統派すぎるとそれはそれで履きにくかったり、使いにくかったりすることも。その点これは、デザインに“ひとエッジ”効いているのでコーデが退屈にならず、しかも全身のバランスも良く見せてくれるので自信を持って履きこなせます。このちょっとしたさじ加減が、私にとっての“実用的な一生名品”になった理由だと思います」
取材・文/発田美穂