予期せぬ戦乱など思いがけないことも多かった2022年上半期。その振り返りをしつつ、下半期~2023年をよりしなやかに過ごすコツを、鏡リュウジ先生と水晶玉子先生が徹底対談! 変化の多い不安定な今をどう生きるか、ヒントを得られるはず。
混沌・混乱が可視化された2022年上半期は、心も揺れ動いた時期
水晶 鏡さん、昨年末にお会いしたとき、2022年の上半期は、混沌とした状態になりやすいと言っていましたが、ここまでとは思いませんでしたね。
鏡 本当にそうですね。特に2月に発生したウクライナ問題には、誰もが驚きと不安を覚えたと思います。
水晶 今年起きた世界情勢の変化には胸が苦しくなりましたし、メディアも何を信じたらいいのか、なんて……。まだ自分自身もカオスに巻き込まれている気がします。
鏡 ええ。まさに同じ思いです。
水晶 東洋の占いだと今年の六十干支は「壬寅(みずのえとら)」。そして2月は寅の月だったんです。そこに寅の日も重なるトリプル寅の日もある、勢いある時期でした。
鏡 タイガー・タイガー・タイガー!
水晶 そう。「何か極まる部分があるのかな」とは思っていたんですけれども。
鏡 東洋の占いでは、戦乱をイメージされていた方も多かったですよね。西洋占星術では幸運・拡大の星、木星がよくも悪くも強い年。この木星は上半期は魚座にいました。さらに魚座の支配性の海王星も利く年で、イメージでいえば海。包容力、優しさ、思いやりがキーワードのはずではあったのですが……。
水晶 「壬寅」の「壬」も陽の水の気で、「海」を表すんです。私も「今年は混沌の海から虎がガッと飛び出してくるイメージ」と、あちこちでお話ししてましたが、まさかこんなものが飛び出してくるとは……。
鏡 象徴解釈にはなりますが、木星が持つ「拡大」の部分。そして海王星の持つ曖昧さ。これが裏目に出て、国境があやふやになり、領土侵攻や新たな移民をつくり出してしまったとも言えますね。さらに海王星は理想を表すのですが、様々な人に「失われた夢をもう一度」と思わせる部分もあって。昔の栄華を復活させたい、じゃないですけれども……。
水晶 プーチンさんの胸の中にはそれもあるんでしょうね。さらに冥王星が権威・権力を重んじる山羊座にまだいますから、前時代の価値観にしがみつき、実現させたい感情も、可視化されたかもしれませんね。今年の「壬」は、水=液体は形がないし、現実離れした混乱という気もします。
鏡 西洋占星術でも、魚座と海王星は、ヒロイズムや自己犠牲願望を表面化させます。己を捨てて始原と接し、そこからまた新たなものが生まれるというか。
水晶 それで私たちは「何かいい始まりがある?」と見てたんですよね(笑)。
鏡 ええ(笑)。それが予想以上に感情的な部分が強く出た上半期でした。僕の中では、ネット上で過剰なポリコレ棒を振りまわす現象も気になっていたんです。これ、風っぽいクールさ・客観的な判断を装いつつも、感情で人をたたくという。実はすごくエモいのではないかと。
水晶 確かに! その意味でも感情的な魚座・木星が大暴れなんですね。西洋の占いでは2020年末から合理性・客観性に価値をおく「風の時代」が始まっていますが、今はまだほんのスタート段階ですからね。
鏡 そうなんです。平等・多様性といいながら、まだ個々の違いを認め合うほど全員が成熟しているわけではないから、コンプライアンスで裁いてしまう。特に今年は水の要素が強く、その中で合理的な風のふりをしちゃうと、苦しくなります。今必要なのは、SNSで画一的に人をたたくのではなく、個人の事情に合わせて対応する「大人の大岡裁き」でしょうか。
水晶 それは素敵な言葉です(笑)。
鏡 僕の故郷・京都で言い伝えられる「京の門(かど)掃き」の精神もいいかもしれません。京都では昔から、家の前を掃除する際に、お隣さんの家の門もちょこっと掃いておく。このちょこっと、は人間関係のコツとしてもけっこう大事なんです。全部を掃くのは過干渉になりますし、まったくやらないと無視・無関心。その塩梅をうまくつける力が必要なのが今かなと。
水晶 人との距離の持ち方も、考え直す時代なんです。
鏡 はい。ただ海王星は希望の星ですし、未来はイメージから始まります。そういう意味では、バイラ世代の皆さんが、新しい価値観や夢を描ける時期でもあって。感情を大切に、でも流されすぎずに希望を持ってほしいんですよね。
水晶 本当にそう。あとはネガティブな現象や迷いも恐れすぎないで。確かに私たちは、時代や価値観の転換期にいます。でも大きな変化ほどゆっくり進みます。だからすぐに白・黒をはっきりつけてわかった気になるのは危険な気がします。
鏡 現実世界はもっと複雑ですからね。
水晶 そう。急いで理解しようとしすぎると、特定の意見を妄信したり、浮世離れした陰謀論にハマる怖れも。迷いを感じるからこそ、幅もできるし、深まるし。そう思って過ごしてほしいですね。
鏡 迷いは余白や自由でもありますね。
話題になった風の時代は始まったばかり。今は無理に冷静にならず、適度に情を使う「大人の大岡裁き」の態度が必要です
上半期に迷いやモヤりを感じた人は多いはず。でもそれは人の心の動きでは自然なこと。次の動きへの原動力になります
下半期~2023年は趣味・学びに取り組むチャンス!損得抜きで楽しんで
鏡 西洋占星術では5月11日から、木星が牡羊座に入りました。牡羊座は12星座の最初の星座です。
水晶 ただし10月28日〜12月20日には一度、魚座に木星が戻るでしょう? 東洋の占いでは、10月が寅と相性のいい戌の月になるので、また何かガツンと勢いがある動きが起こる気もしていますが。
鏡 そうですね。年末の魚座の木星逆行は、取りこぼしに気づくかもしれません。次に進もうと思ったけれども、「あの人、どうしているかな?」とか。世間の流れとしても見落としかけていたことへの気づきや回収などでしょうか。
水晶 それは嬉しい。親切な星の動きですね。そうそう、最近、芸能人も休養を取る人が増えたでしょう? それって休息の星座の魚座的な優しい流れだと感じていて。社会全体が、思いつめずに柔軟な生き方へと変わればいいですよね。
鏡 確かに。それとね、玉子さん。僕、最近「趣味には勝てない」と思うんです。
水晶 気になる。どういうことですか?
鏡 趣味って、損得勘定抜きで、強いエネルギーを注ぎ込むでしょう?
水晶 確かに私も鏡さんも、頼まれて占いを学んだわけじゃないですもんね(笑)。最初は、ただ好きだっただけ。
鏡 そのとおり(笑)。そして牡羊座は見返りを考えずに進む星座。2022年の下半期からはこの感覚も大事に。ただし感情過多には引き続き、注意が必要です。
水晶 牡羊座には来年の5月まで木星がいるし、その少し前の3月に、冥王星が水瓶座に入るでしょう? 失敗を恐れずトライしよう!という流れは生まれそうですよね。東洋の「水」の運気は今年から2023年まで続くのですが、どこでもしみ込む水は学びの気なんです。「壬」の中でも陽の水の気にあたる2022年は体験系、陰の水の気の来年はコツコツとした小さな積み重ねが大事で、座学向き。楽しみながら種まきをしてほしいです。
鏡 結果ありきではなく、ですよね。
水晶 牡羊座だと本能も大事でしょう?
鏡 そう。それに短期集中も得意な星座だから、一気に学ぶのもいいですよ。「英単語を〇日でこれだけ覚えた!」というような、スポーツ感覚。意外な分野ではお金の勉強もいいと思っています。
水晶 確かに好きなことなら無理せずに続けられますしね。
鏡 好きなこと、やりたいことがわからない人は、見てまわるのが大事になりますから、コロナの状況を考慮しつつ、外の空気に触れて。あとは基本ですが、小さい頃に好きだったことを思い出しても。
水晶 確かに子どもの頃、すごく褒められたこと、時間を忘れるほど夢中になったことって、好きの源かも。こればかりは本能に素直になってほしいですよね。
鏡 そうですね。周りに「そんなことして何になるの?」と言われ、少し寂しい……でも好きだし! ぐらいが、いいのかな。
水晶 私はプライベートでうさぎをたくさん飼っていて、自分でも「なぜこんなに?」と思いつつ(笑)、楽しいからいいんです。難しく考えず、人生の豊かな時間が増える、ぐらいの気持ちで。趣味や学びに向き合う時期を持つときっと新しい世界が拓けますね。
趣味に勝る情熱はない! 自分が純粋に楽しめる何かを、見つけていく下半期にするといいですね
東洋の占いでも趣味&学びにはいい時期。そこで目標を作ったり、思いつめなくてOK。本能重視で挑戦するのがハッピーの源に!
取材・原文/石井絵里 ※BAILA2022年7月号掲載